日本の大学在籍中に海外へ!「交換留学制度」のメリット・デメリットは?
「海外の大学で学びたい」という場合、高校卒業後に直接、海外大学への進学を目指す方も多いでしょう。しかしながら、夢を叶える方法は1つではありません。日本国内の大学に入学しても、海外留学が必修とされている大学・学部であれば、必ず海外大学で学ぶ経験ができます。グローバル時代を迎え、留学へのハードルも費用も抑えられている「交換留学」という制度が改めて注目されており、採用する大学も増えてきています。大学入学後に海外留学を考えているなら、交換留学制度のしくみやメリット・デメリットを把握しておきましょう。
「交換留学」とはどんな制度?
「交換留学」とは、在学中の大学が他の海外大学との間に締結した交流協定に基づいて、海外の大学(協定校)に一定の期間、留学を行う制度のことをいいます。一般的に、“交換”留学という語感から、自分の学校と協定校が毎年、同人数の留学生を交換で派遣しあうという意味合いでとらえられがちですが、必ずしもそういうわけではなく、双方の国の文化などを理解するための国際交流が主な目的であることが多いようです。
海外の大学に正規のルートで入学したうえで、4年間(もしくは定められた課程を修了するまでの期間)所属して学生生活を送り、現地の学生と同じようにその大学を卒業することを目的とする「正規留学」とは異なり、「交換留学」は日本の大学に所属して籍を置いたまま、協定先の海外大学に定められた期間通うことになります。期間は半年間~1年間のことが多いですが、プログラムによってはさらに短期間(1学期間のみなど)のものもあります。
交換留学を可能にする協定には、大学同士で協定を結ぶ「大学間協定」と、一部の学部・学科単位で協定を結ぶ「部局間協定」の2種類があります。大学間協定の場合はその大学に在籍しているすべての正規学生が対象となりますが、部局間協定に基づく交換留学は協定を締結している学部・学科に所属している学生のみが対象となります。大学・学部等によって、協定校の所在地域や参加条件、派遣人数、などは大きく異なります。
交換留学のスタート時期は、協定先の大学の学期始まりに合わせて、春や夏となることが多いようです。制度によって、ある程度自分で選べる場合と、あらかじめ決まっている場合があるので、注意が必要です。
交換留学制度のメリット・デメリット
交換留学と正規留学には様々な違いがあります。主なメリット・デメリットをまとめると、以下のようになります。
交換留学のメリット
■正規留学より費用が抑えられる
国内大学に在籍したまま協定大学に派遣してもらえる制度であるため、在籍大学等への学費を通常通り払い続けるだけで、留学先の海外大学への追加の学費の負担がないケースが一般的です。海外大の授業料が免除されている点は、とくに留学先が私立大学だった場合などに、費用面で正規留学とはかなりの差がつくポイントとなることがあります。大学独自の奨学金制度が用意されていたり、日本学生支援機構(JASSO)などの奨学金を利用できることもあるので、費用を抑えて留学する方法としては魅力的と言えるでしょう。
■留学先で取得した単位が、在籍大学の単位になることがある
交換留学では、留学先の大学で取得した単位を、所属している国内大学の単位に置き換えることができることがあります。留学中も自分が在籍している大学は休学にならないため、所属学部等の所定の手続きにより留学先大学での取得単位が卒業要件の単位として認定される単位互換制度がある場合は、交換留学をしても4年間で大学を卒業することが可能となります(大学・学部によって制度の詳細は異なります)。
■手続きが比較的容易である
海外大学に正規留学する場合は、通常、自らすべての手続きをすることになります。日本とは異なる教育制度の国も多く、多くの書類が必要となる大学への煩雑な出願や渡航手続きをいきなり自分だけで行うのは、かなりハードルが高いと感じる方もいるでしょう。交換留学の場合は、手続きの多くを大学側が行ってくれるケースもあり、比較的、負担が少ないと感じることも多いようです。また、協定により大学同士の連携がとれているため、様々なサポートが充実していたり、留学前にあらかじめ必要な情報を収集したりすることが可能であるなど、安心できる要素が多いこともあります。
■語学や海外ならではの分野の学習ができる
交換留学は半年~1年間、海外で暮らし、現地の大学に通って学ぶことになります。語学の上達はもちろん、選択科目などで海外ならではの学問に触れて、幅広い視野を得ることも期待できます。1年間を長いと感じるか、短いと感じるかは人それぞれですが、1年生活すればその土地の暮らしにはかなり慣れるはずです。現地の文化や季節の移り変わり、大学の行事なども一通り経験することができます。
交換留学のデメリット
■留学期間や専攻が決められていることが多い
自分で大学や学部を選んで留学するパターンと違い、交換留学は留学プランがある程度決まっていることがほとんどです。大学・学部等が協定を結んでいる海外大だけが留学先となるため、自分が行きたい国や大学に自由に留学できるわけではありません。学部や学ぶ内容があらかじめ指定されていたり、留学時期が「●年生の●学期のみ」など細かく設定されていたりする場合もあります。基本的にはあまり融通が利かないプログラムが多いので、自分の希望に沿った留学ができるかどうかはあらかじめしっかり確認しておく必要があります。
■交換留学生の派遣人数には制限があり、語学力などの応募条件が厳しいことがある
大学・学部等の交流規定により、交換留学に派遣される年度あたりの学生の数はあらかじめ決められていることがほとんどで、応募枠がそれほど多くない場合も多々あります。また、国際交流を目的とし、学校の代表として派遣される制度であるため、応募の時点である程度の語学力があることが募集の条件に含まれているのが一般的です。在籍大学の成績が条件に含まれていることもあります。派遣できる人数が限られているため、交換留学に応募した学生の中で学内選考を行って合格者を派遣する制度をとっている学校も多く、誰でも留学できるわけではないというのが現状です。
■留学期間が正規よりは短く、海外大学の学位が取得できないことがほとんど
交換留学の期間は半年~1年間が一般的で、入学から卒業まで4年間(国によって期間は異なる)在学できる正規留学よりはかなり短くなります。海外大学での生活を体験するためには十分な時間ですが、それなりに自分の留学目的をきちんと意識して、限られた時間を有効に過ごさないと、学習面では達成感をあまり得られないという結果になる恐れもあります。また、1年間程度の留学では、海外大学の学位は取得できないことがほとんどなので、大学卒業時の学位は在籍している国内大学の学位のみになります。
交換留学制度を活用する際の注意点
すべてを私費で行う正規留学と比べて、メリットも多い交換留学。では、制度を利用して海外留学を検討する際に、注意しておきたいことはどんなことでしょうか?主なポイントをまとめてみました。
●情報収集の必要性
交換留学制度がある大学・学部等は増えてきてはいますが、内容は各大学で違いが大きいのが現状です。在籍大学等によっては、自分の希望に合った協定校やプログラムが用意されていないこともあります。大学入学後に海外留学を考えている場合は、進学希望の大学に留学・国際交流に関してどんな制度が整備されているのか、応募条件も含めて、あらかじめよく調べておきましょう。
●海外で学ぶための語学力・成績
交換留学制度の利用者に上限が設けられている場合、学内選考は留学開始の1年ほど前から行われることがあります。学校の代表として現地での文化交流などに参加するという目的もあるため、書類選考や面接などがしっかりと行われることが多いようです。また、現在の英語力を示すIELTSやTOEFLなどの民間の英語テストのスコアの提出を求められることがほとんどで、一定の基準をクリアしなければ応募すらできない場合も。交換留学に応募したい、と思ってから英語の勉強を始めたのでは、応募に間に合わない可能性があるため、計画的に準備していくことが必要です。
応募条件には、大学の成績の平均値が含まれているケースも多くあります。この場合、初年度から一定の成績を修め続けていることが必要になります。こちらも、気づいた時には手遅れにならないよう、早いうちから留学を意識して学習を積み重ねていくことが大切です。
●ある程度の金銭的な用意を
交換留学では留学先の授業料が免除されることが多いですが、そのほかの費用負担に関しては大学・学部の協定や制度の内容によって詳細が異なります。正規留学より安価で留学できるとはいえ、授業料以外の留学に関する費用は、自費で必要となることが一般的ですので、あらかじめ必要となる費用を確認し、金額を予測して、どのように賄うかを決めておく必要があります。
<必要となる可能性がある費用負担>
・渡航費(留学先までの航空券など)
・留学中のビザ代金(学生ビザの申請料)
・留学先での住居費(寮やアパートなど住居の種類によっても異なる)
・現地での生活費
なお、現在は世界的に新型コロナウイルス感染症が拡大しており、国によっては渡航制限や大学の休学等が継続しています(2020年4月20日現在)。国内大学でも交換留学に関するプログラムが通常とは変更、またはキャンセルされていることがあります。在籍している大学の発信を注視し、都度、最新の情報をキャッチしていきましょう。
※この記事でご紹介している内容は2020年4月24日現在の情報に基づいています。