海外大学進学情報

こんなに違う! オーストラリアとカナダの大学教育制度を徹底比較

アメリカ・イギリスと並び、多くの日本人学生が検討する留学先・オーストラリアとカナダ。イギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education(THE:タイムズ・ハイヤー・エデュケーション)」が発表している「THE世界ランキング」上位の大学数でみると、2国とも、東京大学と同レベルに複数の大学がランクインしており、教育水準は世界でもトップレベルと言われています。今回は、オーストラリアとカナダの大学教育制度について取り上げてみます。教育に関する考え方や制度など、ポイントとなる部分をしっかりチェックして、自分の未来の選択肢を広げる参考にしてください。

オーストラリアとカナダの大学教育制度

学位取得までの時間

前回、アメリカとイギリスの教育制度を取り上げた記事では、制度上、最も大きく異なる点としてピックアップした「学位取得」までにかかる期間。オーストラリアとカナダも同様で、それぞれイギリスとアメリカに似た制度となっています。大学・学部によって違う場合もありますが、一般的に学位取得までに必要とされている時間は以下の通りです。

■オーストラリアの大学・学部課程(Bachelors Degrees)  :イギリスに似ている

オーストラリアの学校教育(小・中・高)は、6歳から16歳までが義務教育となっています(1年生〈grades1〉から10年生〈grades10〉)。Primary School(6歳から12歳・履修科目はオーストラリア共通)でgrades1~6まで学んだ後、Secondary School(12歳から16歳・grades7~10は義務教育)を経て、大学進学を希望する学生は、Senior Secondary(16歳から18歳):Year 12 Certificateで2年間、大学に備えた科目を履修します。Year 12 修了証を取得すると、オーストラリアの大学へ出願が可能となります。大学では、専攻によっては4~5年かかることもありますが(*)、通常3年間で文学士号(Bachelor of Arts)または理学士号 (Bachelor of Science)を取得できます。
また、Honours Degree(優等学位)というBachelorで優秀な成績を修めた学生だけが進むことのできる1年間の専門研究コース(リサーチ課程)もあります。この課程を修了すると直接Master(修士課程)に進むことができます。
*医学、建築学、工学、教育学などのコースは4~6年在籍することが必要となります。

・3年生大学
国内には43の大学があり、そのうち39校が国公立大学です。(ほかに海外大学の分校2校、私立の専門大学1校)

・キャリアカレッジ(TAFE)…Technical and Further Education。公立(国立・州立)の職業訓練専門学校であり、オーストラリア国内に100校以上あり、3年制大学の編入できる制度があります。
※私立の専門学校もあり

海外の学生が大学に入学するには、十分な英語力と母国での12年間の教育修了証が求められます。日本は教育制度が違うため、一部の例外を除き、日本の高校を卒業して直接オーストラリアの大学に入学することはできません。日本の高校の卒業生は、一般的に以下のルートを経由することが必要となります。

(1) 大学付属カレッジのファウンデーションコース(Foundation Course)⇒およそ1年間学び、専門課程の基礎を身につけた後、希望の学部の1年生に入学(大学卒業まで合計4年間)

(2) TAFEのディプロマ(Diploma)コース⇒TAFEで2年間程度学び、修了証書(ディプロマ:Diploma)を取得した後に、希望学部の大学2年生に編入(大学卒業まで合計4年間・最短で3年間程度のことも)

※(1)(2)のいずれも、英語力が不足している場合はまず大学付属などの語学学校で一定期間、英語コースを受講する必要があります。一般英語コースで中上級レベルまで上がることができるとEAP(English for Academic Purposes)コースという「進学準備英語コース」に進学することができ、EAPを所定の成績で卒業するとIELTSなどの英語テスト免除で大学等の入学許可がおりる場合があります。
※IBなどのプログラム修了者や一部学部では直接、大学への入学が可能となる場合もあります。

■カナダの大学・学部課程(Bachelors degrees at universities)  :アメリカに似ている

英語とフランス語という2か国語を公用語とするカナダは連邦制をとっており、教育も各州・準州による管轄となっています。およそ100ある大学のほとんどが州立で、大学間のレベル差はあまりないものの、入学資格や卒業に必要な単位数、卒業によって得られる資格などは、州・大学・学部ごとにかなり異なります。
基本的に、12年間の初等、中等教育(中学・ 高等学校)を修了(*)した後に、大学・学部課程があります。学位を取得できるのは総合大学と学位授与権のあるカレッジだけとなっており、カナダ国内に約90校あります。高校の卒業証書を得ることが大学入学への前提条件で、学士号を取得するには一般的に4年間の課程を修了することが必要です。4年制大学への直接入学のほかに、州立のコミュニティ・カレッジ(入学基準は4年制大学より低め)で大学編入プログラムを履修した後、4年制大学の2年または3年次に編入することも可能(州によっては認められていない場合あり)です。また、多くの大学で学位(学士号)取得課程のほかに、Diploma (ディプロマ)、Certificate (サティフィケート) の 2 種類の修了資格を与える 1~3 年のコースも用意されています。

*ケベック州は、初等・中等教育が計11年のため、大学入学資格を得るためにはCEGEPという短大で2年間学ぶ必要があります。

・大学(4年制/University・まれにCollegeもあり)〈Bachelor’s Degree〉
18 歳以上。学士課程は、Bachelor of Science (BS)または Bachelor of Art (BA)を取得する3~4年間のプログラムとなります。州や学科によって制度が異なり、3 年課程の単位取得で一般学士(General Pass Degree)、さらに 4 年課程の単位を取得すると優等学士(Honour’s Degree)が授与されるなど様々なパターンがあります。

・コミュニティカレッジ(2年制)
18歳以上。大学編入プログラムは、修了時に準学士号取得+ほぼ全ての単位を大学に移行でき、大学編入後は2~3年で学士号取得が可能となります。(学位取得まで合計4~5年)

・専門学校
特定の専門分野に力を入れた学校。職業訓練カレッジなどもあります。

・ユニバーシティーカレッジ(4年制)
近年増加している、総合大学とコミュニティカレッジの教育の長所を合わせた学部プログラムや実践面を重視したプログラムを提供する学校。取得した学位は総合大学の学位と同等の学位として認められるだけでなく、1~2年生の間に取得した単位をもって総合大学へ編入することも可能です。

カリキュラム

■オーストラリア

大学(3年制)には一般教養課程のような授業がなく、1年目から専門課程に入ることが多いのが大きな特徴。社会に出た際に即戦力となる人材の育成が重視されているので、入学後すぐに専攻に分かれ、3年間ずっと専門分野の知識や実践的なスキルの習得を中心に高度な課程で学びます。さらに即戦力重視のため、実務訓練の一貫として地元企業での研修や実習が盛んに行われており、自分が学ぶ分野でのインターンシッププログラムを提供している学校も多くあります。
また、人文、商業、法学、科学分野を中心に、学生が二重学位(double degree)または混合学位(combined degree)の学士号課程を履修することも非常に一般的となっています。

■カナダ

大学のミッションを”次世代リーダーを育てる”と明確に打ち出しているカナダでは、4年制の大学(ユニバーシティ、ほとんどが州立)、カレッジ(専門大学)はいずれも、プログラムの選択肢が幅広く柔軟なのが特徴です。一般教養と専攻科目を履修しますが、どちらもカリキュラムは柔軟に組み替えが可能です。途中で、他の学部や他の大学に転科、転校が比較的容易にできることも特筆すべき点と言えます。
4年制大学は、大学やコースによって 1 クラス 200~300 名のコースから、30~50名程度の中規模クラス、5~20 名程度のセミナー形式の少人数制のクラスまで様々な授業パターンがあります。また、多くの大学でe-learningの学習プラットフォームが積極的に活用されています。実践的な学びが重視されているのも大きな特徴の1つ。将来の就職に向け必要な技能を身に着ける事を大きな目的にしているため、授業の課題は非常に多いと言われています。在学中に仕事の経験ができるCO-OP(コープ)プログラムも人気があります。

入試制度

入学資格 

■オーストラリア

大学の学部課程への入学には、12年間の教育修了証が必要となります。日本の高校を卒業しただけだと基本的には入学資格がないため、ほとんどの高等教育機関が提供している約1年間の大学進学準備コース(ファウンデーションコース)を履修するのが一般的で、同コースでの成績が重視されます。さらに海外からの学生の場合は、基準以上の十分な英語力が必須です。

■カナダ

基本的に12年間の初等・中等教育を修了(日本でいえば高校卒業)していれば、入学が可能です。入学時に試験はなく、書類審査で合否が決定します。入学資格は学校やコースによって異なりますが、一般的に高校での成績が重視されます。また、海外からの学生の場合は入学基準の英語力が必要となります。

出願プロセス

■オーストラリア

大学への正規入学の場合、入学時期は2月と7月が一般的です。出願は個人で、各大学のアドミッションオフィスを通じて行います。出願手続きはオンラインでできることがほとんどで、大学ごとに指定された書類を直接提出します。出願時期は学校によって異なります。提出期限がとくに設定されておらず、入学枠が埋まり次第そのコースの受け入れは締め切りとなる場合もあるので、注意が必要です。

≪提出書類の例≫
願書、成績証明書、卒業証明書、英語能力テスト結果(TOEFL®テスト、IELTSなど)
※大学・コースにより、まれに推薦状・エッセイ(自己PR、志望動機など)・ポートフォリオなどが求められる場合もあります。

■カナダ

基本的に、入学(admission)は学期ごとに可能であり、出願は個人で希望する大学に行います。出願書(application)はオンラインで提出するのが一般的になってきており、あわせて大学によって指定された必要書類を揃えて出願します。出願書類の提出期限は州や学校、また各学期によっても異なるので、志望大学の提出方法・期限を確認しておく事が大切です。秋スタートの学期に入学を希望する場合、少なくとも就学希望開始前年の冬頃までには出願書類を提出しておくのがよいとされています。

≪提出書類の例≫
入学願書、高校成績証明書、卒業証明書、財政能力証明書、英語能力テスト結果(TOEFL®テストもしくはIELTSスコア等)

選考基準

■オーストラリア

入学審査では、高校の学業成績と英語力が重視されます。入学するコースによって、求められる基準は異なりますが、目安としては以下の通りです。

・ファウンデーションコース
高校の学業成績(通常評定平均3.0以上)と英語力(IELTS 5.5以上もしくはTOEFL iBT®テスト 60-70以上)

・Diplomaコース
高校の学業成績(通常評定平均3.0~3.5以上)と英語力(IELTS 5.5-6.0以上もしくはTOEFL iBT®テスト 60-70以上)

※日本の大学に1年以上在籍したなど、大学に直接出願の場合はIELTS 6.0~6.5以上、TOEFL iBT®テスト70~96以上(大学によって異なる/大学付属または提携英語学校[ELICOS]上級レベル修了証でも可)

■カナダ

入学審査の基準が高いため、直接入学はかなり難しいとされています。4年制大学の学部課程に海外からの学生が入学する場合、英語力はTOEFL iBT®テスト 88~100またはIELTS 6.5~7.0程度が必要と言われています(州立のコミュニティカレッジはTOEFL iBT®テスト 71~80、IELTS 6.0~6.5程度)。また、高校の成績が重要とされ、日本の5段階評価でいえば高校3年間の全科目の成績の平均が3.3以上、名門とされる大学では4以上が直接入学の条件と言われています。

※英語力が足りない場合、条件付き入学(Conditional Acceptance)という制度を設けている学校もあります。仮入学許可をもらい、入学前に集中的に英語研修を受講して規定レベルまでスコアを上げれば入学が認められるパターンや、最初の 1 年を語学学習主体の授業を受け、並行して基礎教養の単位を一部取得して2 年次から大学の本科の受講を開始するパターンなどがあります。

年間の開始時期と長期休暇

■オーストラリア

大学の新年度は2月スタートで、2学期(Semester)制を採用している場合がほとんどです(一部の大学では3学期制をとっていることもあります)。Semester 1(前期)は2月下旬~6月下旬、 Semester 2(後期)は7月下旬~11月下旬となるのが一般的です。12月から1月は長期の休暇となります。入学時期は、各セメスターの開始時期となるため、主に2月下旬と7月下旬です。ただし、7月下旬は新入生を受け入れないコースもあるので注意が必要です。

■カナダ

大学の新年度は9月に始まります。多くが2学期(Semester)制ですが、なかには3学期制をとる学校もあります。2学期制だと秋(9月-12月半ば)と春(1月から4月半ば)に分けた2つのセメスターとなります。夏休み中の 5~8 月に受講できるプログラム(夏学期)が用意されている大学も多くあります。3学期制だと1学期:9月~12月(クリスマス前まで)、2学期:1月~3月末、3学期:4月~6月で、7月~8月は長い夏休みとなるのが一般的です。また、通常はクリスマスから新年にかけて短期の休みがあります。入学時期は、2期制の場合9月または1月、3学期制の場合は9月、1月、5月となります。

大学院

■オーストラリア:Postgraduate Degrees (21歳以上)

修士号(MA, MSc, MBA) を取得する課程と博士号(PhD)を取得する課程があります。修士課程はレクチャー(講義)とチュートリアル(少人数のクラス)を通して学習する「コースワーク(Course Work)」と主体的に研究を行っていく「リサーチ(Research)」のコースに大きく分かれており、後者のコースはHonours学位を取得していることが必要です。修士号取得には、学士号(Bachelor)取得者は約2年間、学士号(Honours)取得者は1年間かかります。修士課程への入学資格(成績、学歴等)を直接満たせない場合に、実践的な専門知識を養うためのPostgraduate Certificate(6カ月)やPostgraduate Diploma(1年)という学位もあります。
博士課程は高度な専門研究に基づき学術論文を仕上げるプログラムで、博士号取得には修士修了後さらに4~5年の期間が必要です。MBA は1~2年間ですが、大学卒業資格の他に、少なくとも2年程度の実務経験が必要となります。

■カナダ:Graduate degrees

修士号(MA、MSc または MBA)を取得する課程と、博士号(PhD)を取得する課程があります。修士課程は主に演習を中心とした1年間のプログラムと、リサーチを加えた2年間のプログラムが一般的です。優等学士号(Honour’s Degree)を終了後、1~2年の履修で取得が可能で、修士論文や面接試験などの審査を経て授与されます。博士課程は修士修了後、3~5年間のプログラムとなり、さらに専門分野の研究を進めます。MBA は通常1~2年のプログラムとなります。
カナダの大学では、11 の産業分野において、州ごとに強い分野の特徴があり、各州の地元産業と結びついた共同研究なども盛んに行われています。ライフサイエンス、通信、 コンピュータの分野では、世界的に高い評価を受けています。

希望の大学・学部に入学するルートはいくつもある
自分に合ったやり方で夢を叶えよう

アメリカ、イギリスに続いで、オーストラリア、カナダも教育制度や高等教育に関する取り組みが国によって大きく異なっていることがおわかりいただけたのではないでしょうか。この4か国だけでなく、ほかにも欧米やアジアで英語圏の留学先はいろいろあります。しっかり情報収集をして、様々な国や大学を比較し、自分に合った環境を選びたいものです。もし必要とされる英語力や高校での成績が希望の大学の基準を満たしていない場合でも、それぞれの国・大学で希望の学びにたどり着ける制度やルートが用意されていることもあります。あきらめずに、夢を叶えるための準備を着実に重ねていくことが何よりも大切です。

※この記事でご紹介している内容は2019年12月6日現在の情報に基づいています。

※この記事は、旧GLCウェブサイトの「グローバル海外進学コラム」2019年12月6日に掲載されたものです。

LINE UP

海外、国内を問わず、グローバルな進路を実現する
学習プログラムをご用意しています