海外大学進学情報

【留学中の先輩に聞いた】 あなたの大学が行った新型コロナ対策は? 


新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により、世界中の大学をはじめとする教育機関も大きな影響を受けています。各国の大学では、それぞれに教育・研究を守るための対応策を講じていますが、はたしてその実態は?学生たちは、そのとき何を考え、どう行動したのでしょうか?

今回は、「海外進学・留学ラボ協力隊」の先輩たちに緊急取材。アメリカの大学で学ぶ先輩が実際に体験した“パンデミックへの各大学の新型コロナウイルス対応”について、リアルな状況をレポートしていただきました。

緊急レポートをしてくれるのは、下記のお二人です。

Lilia.T 先輩
カリフォルニア州立大学 ロサンゼルス校(California State University, Los Angeles)/アメリカ

H.M 先輩
ウェズリアン大学(Wesleyan University)/アメリカ

【留学中の先輩に聞いた】あなたの大学が行った新型コロナ対策は?

Q. 休校が決まったその時、大学からはどのようなことを伝えられましたか?それについて、どのように感じましたか?

Lilia.T 先輩
学校から2度のメール。
今学期中の授業がすべてオンラインに変更

学校からはじめに送られてきたメールは、現在の新型コロナウイルスの状況を考えた結果、一時的に学校の授業すべてをオンラインにする、という内容でした。約1週間後、同じ学校の友達が住むキャンパス外の寮にみんなで集まって、いつも通り勉強したりご飯を作ったりしていたら、再び学校からメール。先週決まった一時的なオンライン授業が、今学期の終わりまでに延期になるという内容でした。
私は個人的にオンライン授業が好きですし、得意でもあるので、その時はオンラインになったからといって不安なことは特にありませんでした。しかし、取っている授業のひとつに、学校内のスタジオで撮影するということが目的のクラスがあったため、オンラインになった今、その授業をやる意味は何なのか、今まで撮影のために努力し、準備してきたものは無駄になるのか、と少し残念でした。周りの友達は交換留学生の子が多く、彼らは早めに自分の国へ帰るということも考え始めていました。

H.M 先輩
学長から全学生に向けて、
寮の閉鎖と授業のオンライン化を知らせるメールが

私に大学閉鎖の知らせが届いたのは、ちょうど2週間ある3月の春休みの途中でした。アメリカでは、ハーバードやイェールなどのニューイングランドにある大きな私立大学が先陣を切って、新型コロナにより学校閉鎖とオンライン授業化をするという通達を学生たちに出していました。自分達の大学(コネチカットにある)はどうなるかと友達とテキストで会話をしながら状況を案じていましたが、その数日後に学長から大学の全学生に向けて、春休みの後から寮の閉鎖と授業のオンライン化を行うことを伝える内容のメールが送られてきました。
新型コロナウイルスの急速な広まりの中で、コネチカットに隣接するニューヨーク州のエリアで、オーバーシュートがすでに発生していたこともあり、周辺の学校が次々とキャンパスの閉鎖を決める中だったので、自分たちの大学のキャンパスの閉鎖はある程度予測できていて、しょうがないと納得のできるものでした。ただ、つい1週間前まで、何事もなく通常の授業を行っていて、友達にも気兼ねなく会えていた中であまりにも突然の変化であったことは間違いなく、驚きと焦りがありました。
また、時差などの障壁がある中でどのようにオンラインで自宅にて授業を受けるのかといったことや、自分の部屋にある荷物の整理や倉庫スペース探しなど、急にやらなくてはならないこと、心配になることが増えてしまい、戸惑いました。留学生にとってはそのままキャンパスに留まるというオプションもあったので、それも考えましたが、アメリカでの急速な感染の広まり、空港のロックダウンの恐れなどのリスクを鑑みて、最終的に日本の自宅に帰る決断をしました。

Q. 休校になるにあたり、代わりに用意されたのはどんなプログラムですか?

Lilia.T 先輩:
今までの授業の時間に1回1~2時間のzoomミーティング
アプリの機能を使って発言やコメントできる

私の学校は元々、CANVASというサイトを使ってクラスの宿題やシラバスなどが管理されています。教授によってはCANVASを使わない人もいます。
オンライン授業の実施にあたり、多くの教授は講義・オフィスアワーをZoomというアプリを使って行っています。Zoomは無料で利用でき、大人数でのミーティングも可能です。画面の共有もできるため、教授が動画やドキュメントをみせながら生徒に話すこともあります。基本的に今まで授業があった時間にZoomでミーティングをするという形で、授業は一回1~2時間です。チャット機能や挙手機能もついているので、生徒はそれを使って発言したりコメントしたりします。たまに希望制のミーティングを開く先生もいて、そのミーティングはエクストラクレジットとしてみなされることもあります。また、全ての課題の配布・提出をメールで行う教授もいます。
オンラインのプログラムへの取り組みは、私としてはおおむねうまくいっていると思います。教室移動する必要がなくなったので、ずっと同じ場所(自分の部屋)で授業、宿題、自習ができます。今まで大人数のクラスだと緊張して発言しづらかったのですが、コメント機能により発言をもっと気軽にできるようになることは、良い点だと感じています。ただ、自分か先生のWi-Fi環境が悪いと先生の講義が途切れ途切れになり、聞き取りづらいことがあります。日本に一時帰国していると、時差のため日本時間の夜中や早朝にZoomミーティングがあるのが少し難点です。 また、オンラインでの授業は通常の授業と同じくらいの価値があるのか、具体的に言えば、金銭面的に通常の授業と同じ額を払う程の内容をオンラインで学べるのか、少し疑問に思う部分もあります。

自宅での学習環境はこのような感じです(Lilia先輩)

H.M 先輩:
授業内容やクラスの人数によって異なる対応
大人数の場合は投稿型の授業プラットフォームを利用

学校閉鎖の通達の後に、教授から今後の授業方針がメールで送られてきました。授業の内容や授業時間、クラスの人数によって対応は様々でした。時差があるために全員が参加できる時間を合わせることが難しいと判断された、比較的人数の多い15人や30人のクラスでは、ディスカッションのパートに投稿型の授業プラットフォームを用い、書いて意見を交換する形に。その反面、10人やそれ以下の人数のクラスでは、時差があっても時間を合わせられたため、Zoomを使って普段の授業のフォーマットを維持していました。教授たちが、シラバスの内容をあまり変えずに、授業外でのアカデミック会話やオフィスアワーなどの時間も含め、できるだけ今まで対面で行われていた交流を再現するということを、工夫してくださったようです。 ただ私としては、こうした新しい授業の形式は少しやりにくいと感じています。 たしかに、Zoomによるオンラインの授業であっても、少人数のクラスであれば対面の授業と遜色なくこなすことができます。プレゼンテーションなどは、画面越しに行うZoomの方がやりやすく、自然なときさえあります。書いてみんなで意見を出し合うフォーラムの方式も、過去の会話から遡って議論を進めることができるので、建設的なディスカッションになることが多くあります。 ですが、大人数のクラスであると、Zoomでは発言をする人の数が減ります。オンラインであるために、対面のような緊張感や自然なやりとりがなくなってしまい、授業の質は落ちてしまいます。それによって、学生の授業への気合いやパフォーマンスも、やはり対面に比べると、落ちてしまった印象があるのです。フォーラムも、書くことに時間がかかるために議論の進みがかなり遅く、不便と感じることも多いです。クラスメイトや教授と直接しゃべるような接触機会がゼロになってしまったので、授業外の自然な会話もなくなり、アカデミックな刺激も減ってしまっています。自分自身も、このように最適な学習環境を突然奪われてしまったことで、授業に対するモチベーションの低下やタイムマネジメントの面で、苦労しています。今学期においては、しょうがないと納得している学生が多い印象ですが、このような無味乾燥な授業環境が来学期以降も続くのではないかと、心配する声も多いです。

少人数のクラスは、オンラインで議論が活性化する場合もあります(H.M.先輩)

Q. コロナ休校中、大学はどのようなサポートをしてくれていますか?研究、実習、テストはどのように実施されますか?

Lilia.T 先輩:
メールなどで勉強に役立つサイト・アプリなどの情報提供あり
テストはWebサイトを通してクイズ形式で実施

メールやCANVASで、無料や割引価格で使える勉強に役立つサイト・アプリなどを随時教えてくれます。私の場合、専攻が映画系なので、映画の脚本を書くアプリの紹介や、Adobeなどの情報が送られてきました。学校のブックストアーから借りていた教科書は無料で郵送し返却できるようになりました。また、インターナショナルオフィスが数回、質問がある留学生のためにZoomでの質問会を開いてくれています。
私が取っている授業は、オンラインになったからと言って新たにエッセイや当初の予定以外に追加の課題を出した教授はいませんでした。テストはCANVASを通してクイズ形式のものが実施されます。

H.M 先輩:
キャンパスが使えなくても、シラバス変更でクラスを継続する工夫
テストはできる限り家でできるものに変更

私の学科では、毎年2年生に対する総合試験(自分は去年受けました)が中止になるなどの大きな変更から、シラバスの変更により元々はプレゼンテーションであった部分をレポート型にするなど工夫してミーティングの回数を減らすなど、様々な対策がありました。キャンパスが無い状態でも学生ができるだけ対応できるように、配慮していただける面も多かったです。テストや試験は、Take Home方式で、できる限り家でできるものへの変更で対応してくださっています。
留学生を含め、諸事情によって家に帰れない・帰るのを望まない学生は、希望制で学校に残ることが許可されました。時差の関係や家庭での学習環境に心配のある留学生の中には、キャンパスに残る選択をする学生も少なくはありませんでした。

Q. コロナインパクト前と比べて、価値観に変化はありましたか?またアフターコロナに、留学生として学び続けていくにあたって、学び方や滞在スタイルなどについて考えていることはありますか?

Lilia.T 先輩:
留学生活には医療や保険制度も重要。
世界情勢にも目を向けつつ、自ら学習する能力や復習を大切に

今までは自分が楽しいと思うことを勉強できればいいと思い、それを最優先にアメリカで勉強していました。カリフォルニアの気候も、街並みも心の広い人たちも好きですが、今回の新型コロナの影響を受け、医療や保険制度がその国に住むにあたってどれほど大事かも思い知らされました。アメリカは医療費が高いので、万が一体調を崩した時のことを考え、家族がいる日本に急遽、一時帰国することにしました。
また、私は今まで世界情勢に疎かったのですが、特にアメリカや日本で起こっていることにもっと目を配るようになりました。新型コロナにより、アメリカだけでなくヨーロッパでもアジア人に対する人種差別がひどくなったことを受けて、これから先、留学生としてアメリカで生活するにあたって、変なことに巻き込まれないようにさらに注意して生活しないといけないな、とも思っています。
私は専攻の関係でどうしても実践的な技術を学ぶことが多いので、通常はクラスで実際に機械を操作したりして学んでいます。新型コロナで休校中にオンラインで学んだ内容は、後に復習するなどして、自分で身につける努力をしないと、コロナの後の授業で応用できないなと思います。自分で学習する能力と復習の大切さを改めて実感しているところです。

H.M 先輩:
今まで当たり前だと思ってきたことが、今後できなくなる不安も。
自分のプライオリティーを明確に、苦境の中でも道筋を立てていくことが重要

毎年盛大に行われるコメンスメント(卒業式)も中止でオンライン開催になってしまったり、この夏休みに計画していたインターンシップを取り消されたり。学生最後の楽しみが一瞬にして奪われ、将来のキャリアに大きく影響が出てしまうような事態が起きるなど、パンデミック発生によって日常的には予測もできなかったような悲しいことが、自分の身の回りで起きました。
留学生として今まで当たり前に思っていたこと(アメリカに行く・帰国する、来年の卒業式を盛大に祝福するなど)も、今後できなくなってしまうのではないかと不安にもなります。現に、私はこの夏に卒業論文の研究のためにロシアに行く予定でしたが、それも大学の旅行制限やロシアのビザ規制で叶いそうになく、研究計画の変更を迫られています。
様々な憶測や意見が飛び交う混乱した事態の中で、自分の成したいプライオリティーは何かということを自分の中で明確にして、苦境の中でもできることから始めていく、その筋道を立てていくことが重要であると、思っている今日この頃です。

※この記事でご紹介している内容は2020年5月22日現在の情報に基づいています。

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