Common app, UCAS…海外大入試の「出願願書」とは?日本の受験と何が違う?
近年は日本の大学入試でもオンライン出願が増えていますが、海外大学の場合はほぼ100%と言っていいほどオンラインでの出願となります。それぞれの国では出願プロセスを簡素化・効率化するために様々な出願システム(オンラインプラットフォーム)が開発されています。出願のための書類や一連の手続きはアプリケーションと呼ばれ、アメリカやイギリスなどでは共通出願システムを利用すれば多くの大学に一括で出願することができます。
今回は、海外大学を目指す日本の高校生に向けて、「出願願書(アプリケーション)」の基本をわかりやすく解説します。海外大入試の実際のプロセスを正しく知り、早めの準備をしていくことが合格への第一歩となります。

海外大の願書って、そもそも何?
日本の大学入試では、とくに学力テストがある一般入試の場合、「願書」は単なる受験の申込書のような扱いであることが多いでしょう。
しかし海外大学の「出願願書(アプリケーション)」は、合否に直結する重要な役割を持ちます。1枚のペーパーのようなものではなく、自分で書き込むいくつかの書類や成績などの資料等をまとめて提出するシステムだと考えたほうが、実態に近いといえます。共通出願システムの場合、1つのアプリケーションに必要な情報を1度記入するだけで、複数の大学に出願可能です。基本的に合否はすべての書類・資料等をもとにした総合評価となり、大学によっては独自の追加書類を求められることもあります。
※日本の大学で考えると、「総合型選抜」における出願方法や提出書類が似ている部分があります。
海外大学への出願願書で代表的なもの
●Common App(アメリカ)●
「Common App」とは「Common Application」の略。アメリカで、800校以上の大学(※)で使える最も有名な共通願書システムです。サイト上で必要事項を入力すればシステムを通して希望する大学に一括で出願することが可能となっています。
※マサチューセッツ工科大学やカリフォルニア大学(UC)系列など、有名大学でもコモンアプリケーションを受け入れていない大学もあります。また、アメリカ以外の国(イギリス、ドイツ、カナダなど)でもコモンアプリケーションを採用している大学もあります。詳細は各大学のHPで確認してください。
●UCAS(イギリス)●
「UCAS」とは「Universities and Colleges Admissions Service」の略。イギリスの大学に入学する際の窓口となっている、オンラインでの「総合出願機関」のことです。UCASでは大学・コースのリサーチから、複数の志望先への出願、出願後の変更、出願進行状況の追跡・確認、合否通知の受け取り、入学意思の返事までを一括で行うことができます。
イギリスの大学(学部)のほとんどが、「UCAS」を通して出願を受け付けています。出願の手続きは基本的にUCAS のウェブサイトで行い、その後のやりとりもほぼすべてオンライン上で行われます。一度に最大5コースまで出願することができ(医学部、歯学部、獣医学部は最大4コース)、出願する大学・コースの優先順位は付けません。
※オックスフォード大学およびケンブリッジ大学については、いずれか一校にしか出願できない場合がありますので、詳細は各大学に問い合わせる必要があります。
※一部の大学・教育機関では、UCASのアプリケーション(共通願書)ではなく、学校独自のアプリケーションを選択できる場合もあります。
※ファウンデーションコースの場合は学校によって異なり、設置している学校に直接申し込むケースと、UCASを通すケースがあります。
その他の出願願書システム
<アメリカ>
●Coalition Application(アメリカ)
アメリカの150 以上の学校で導入されています。2016年から提供が始まった比較的新しいアプリケーションで、主要な総合大学やリベラルアーツ・カレッジなどが加盟しています。
●大学ごと・州ごとの出願システム(ポータルサイト)
- ・Cal State Apply:カリフォルニア州立大学群の23校に出願するためのシステム
- ・MY UC Application:カリフォルニア大学(UC)9校に出願するためのシステム
- ・Apply to SUNY:ニューヨーク州立大学および州内のコミュニティーカレッジに出願する際に利用する出願システム
- ・Apply Texas:テキサス州内の公立大学、私立大学、コミュニティーカレッジ等に出願する際に利用する出願システム
※コミュニティカレッジ(アメリカ)の場合:
アメリカのコミュニティカレッジ(2年生の公立大学)は、多くの場合、各学校で独自のシステムを用意していることが多いですが、特定の州や地域では共通の出願システムを利用できることがあります。コミュニティカレッジはほとんどがオープンアドミッション(Open Admission)制度を採用していますので、必要書類を揃えて出願すれば原則として入学が許可されます。また、ほぼすべてのコミュニティカレッジでRolling Admissionが採用されていますので、出願期限などもなく、いつからでも出願、入学が可能です。
<カナダ>
●OUAC(カナダ・オンタリオ州)
カナダ・オンタリオ州では、大学用の出願システムとしてOUAC(Ontario Universities’ Application Centre)が利用されています。
※イギリスやカナダでも、大学ごとのポータルサイトからの出願を受け付けているパターンもあります。
<ヨーロッパ(イギリス以外)の場合>
国ごとに出願システムは異なりますが、ほとんどの大学が独自のプラットフォームを使っています。
<アジア(日本以外)の場合>
- ○中国:APPLY CHINAやCAMPUS CHINAなどのポータルを利用可能ですが、多くは大学個別のオンライン出願となります。
- ○韓国:UWAYなどのポータルを利用可能ですが、多くは大学個別のオンライン出願となります。
- ○シンガポール:大学独自のオンライン出願システムを利用。直接出願が一般的です。
- ○マレーシア:大学個別のオンライン出願システムを利用します。
※オーストラリアの場合、出願の際に「願書(アプリケーション)」のような書類は必要ないことが一般的です。
海外大の願書には、何が含まれる?
◆アプリケーション(願書):
Common AppやUCASなどのサイトから、アプリケーションフォームに必要事項をすべて入力します。1つのアプリケーション内に様々な項目があり、中でも「課外活動の実績」の欄は重視されると言われています。
◆英語力を証明する書類(TOEFL iBT®テストやIELTSなど):
国や大学によって認められる英語テストが異なることがあります。基本的に、アメリカではTOEFL iBT®テスト、イギリスではIELTSが主流とされています。
◆英文エッセイ:
共通アプリケーションシステムの一部として入力が必須なエッセイと、大学独自で課されるエッセイがあります。
[アメリカの場合]Common Appのアプリケーションの一部として入力必須なエッセイはコモンアプリケーション・エッセイ(Common Application Essay)と呼ばれます。各大学が独自にテーマを設定して、提出を要求することがある補助エッセイはサプリメンタル・エッセイ(Supplemental Essay)と呼ばれます。
[イギリスの場合]UCASのアプリケーションの一部として入力必須なエッセイはパーソナルステイトメント(Personal Statement)と呼ばれます。
◆高校の成績証明書:
基本的に、高校の成績表(国によって決まっている基準に当てはめてGPAを算出)の提出は必須で、合否判定に大きな影響があります。IBやA-level、ファウンデーションコースの成績などを提出することもあります。
◆推薦状:
高校の先生からの推薦状(1~2通)が必要な場合があります。
◆指定された試験のスコア:
国によって異なります。アメリカの場合はSAT®、ACTなどの標準化テストのスコア提出を求める大学もあります。
どうやって準備する?海外大願書の流れ
海外大では1回の学力試験で合否が決まるわけではなく、提出した書類による審査で入学できるかどうかが決定します。そのため、すべての提出物の準備には1つ1つじっくり時間をかけて、納得いくものに仕上げる必要があります。出願書類の準備は、思っているよりも長期間にわたると考えておいたほうがよいでしょう。
海外大出願までの流れ
※下記はあくまで目安です。国や大学によって詳細のスケジュールは異なりますので、出願前に大学の公式サイト等で必ず正確な情報を確認してください。
<高校2年~3年の夏までに>
- ●留学の目的や動機の明確化 ⇒保護者との相談・話し合い
- ●情報収集/留学計画 ⇒進学する国や大学の絞り込み
大学に関する情報収集、資料請求/大学の入学資格や条件のチェック(求められるGPAや英語力の確認、経済力の確認・奨学金の検討)も行いましょう。
- ●TOEFL®テスト、IELTSなどの英語テストやSAT®などの必要なテストに向けた勉強、受検
- ●学校の成績を維持/課外活動に注力
- ●エッセイ(または志望動機)を書くための自己分析
<高校3年の夏〜秋>
- ●必要なテスト(TOEFL®テストやSAT®など)を受検/スコア決定
- ●エッセイの推敲・仕上げ
- ●出願のための必要書類の準備
推薦状や成績証明書など、通っている学校の先生に英文で用意してもらう必要があるものは早めに依頼しましょう。
<高校3年の秋〜冬>
●出願(願書や必要書類の提出)
各大学の募集要項に則り、必要書類を提出して出願します。出願書類・方法は、大学により異なることがありますので、必ず各大学の指示をよく確認してください。
※早期出願と通常出願の2通りのスケジュールが用意されている場合があるので、締切り日を間違えないように注意が必要です。
海外大学への出願は、日本の大学の場合とは勝手が異なるため、初めは戸惑うかもしれません。しかしながら一発勝負の学力試験ではない海外大入試では、アプリケーションを通して自分の能力や実績、長所や魅力を存分にアピールすることができます。こうした形式のほうが自分には向いているのでは?と思った方は、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。
【参考記事】:出願書類の書き方・提出のしかたどうやった? ~オックスフォード大学 Gaku M.先輩~
※この記事でご紹介している内容は2025年3月1日現在の情報に基づいています。