「THE大学インパクトランキング2024」で、SDGsへの貢献度が高い大学がわかる!
「THE世界大学ランキング」で有名なイギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education(以下、THE)」は、2024年6月12日に「THE大学インパクトランキング2024」を発表しました。大学の社会貢献の取組みを国連のSDGs(エスディジーズ)の枠組みを使って可視化したこのランキングは、2019年からスタートして今回で6回目。大学の社会貢献度を軸としているため、アメリカやイギリスを中心とした従来の研究重視の大学ランキングとは大きく異なるのが特徴です。
世界的なコロナ禍はほぼ終息したとされる現在、順位の変動に注目しながら、世界と日本のランキングをご紹介します。将来の社会との関りを前提に大学における「意味のある学び」を考えるための新たな視点とも言えるこのデータ、大学選択の観点の1つとしてぜひチェックしてみてください。
※SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは:国連の「Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標」のこと。17の目標(SDG)から成る。
【参考ページ】:Impact Rankings 2024|Times Higher Education
THE大学インパクトランキングとは?
「THE大学インパクトランキング(Impact Rankings)」は、世界の大学が社会課題にどう取り組んでいるかを、国連の「SDGs」の枠組みを使って評価したランキング。気候変動対策やジェンダーの平等、健康と福祉など、国連がSDGsで掲げる17の各目標について、「研究」「管理責任」「アウトリーチ(現場における実践)」「教育」という広範な4分野にわたる大学の取り組みをランク付けしています。評判や研究の名声といった従来の指標とは異なる新しい基準を活用しているため、地球規模の課題解決・サステナビリティに対する大学の貢献度に光を当てたランキングとなっています。
【参考ページ】:Sustainable Development Goals website
各大学はSDGsの17の目標の中から、自らの強みに合った分野を選んでエントリーします。ランキングには総合ランキングと、SDG別のランキングがあります。
総合ランキングにエントリーする場合は、「SDG17(パートナーシップ)」が必須項目で、これに加えて3つ以上の項目についてデータを提出する必要があります。「SDG17」のスコアと、それ以外でスコアの高い3つが総合ランキングに反映されます。
SDG別のランキングの場合は、各大学が強みとする分野(SDG)に1つからエントリー可能です。データを提出した項目(SDG)すべてで対象になります。
【参考ページ】:Impact Rankings 2024: methodology
なおTHEでは前回から、前年比を安定させるために総合ランキングに過去2年間のスコアの移動平均を使用しています。この変更により、ランキングの過度な変動性はある程度減少しています。
「THE大学インパクトランキング2024」結果概要
6回目となる今回のインパクトランキングには、125の国・地域から過去最多の2152校が参加。前回からは26%の増加となりました。参加校数が最も多いのはインドの105校で、次いでトルコ100校、パキスタン96校でした。日本の参加校は88校で、世界で4番目に多くなっています。
※順位の数字に「=」がついている場合:同順位の大学あり
※順位の変動が「=」の場合:前回順位から変動なし
■「THE大学インパクトランキング2024」総合ランキングTOP10
順位 |
大学名 |
国/地域 |
全体スコア |
2023年の順位 |
順位の変動 |
---|---|---|---|---|---|
1 |
ウエスタンシドニー大学(Western Sydney University) |
オーストラリア |
99.7 |
1 |
= |
=2 |
マンチェスター大学(University of Manchester) |
イギリス |
98.5 |
2 |
= |
=2 |
タスマニア大学(University of Tasmania) |
オーストラリア |
98.5 |
5 |
↑ |
4 |
オールボー大学(Aalborg University) |
デンマーク |
98.0 |
=9 |
↑ |
5 |
RMIT大学(RMIT University) |
オーストラリア |
97.7 |
=7 |
↑ |
6 |
アルバータ大学(University of Alberta) |
カナダ |
97.4 |
=7 |
↑ |
7 |
ニューサウスウェールズ大学シドニー校(UNSW Sydney) |
オーストラリア |
97.2 |
=18 |
↑ |
8 |
クイーンズ大学(Queen’s University) |
カナダ |
97.1 |
3 |
↓ |
9 |
アリゾナ州立大学テンペキャンパス(Arizona State University (Tempe)) |
アメリカ |
96.4 |
6 |
↓ |
10 |
エクセター大学(University of Exeter) |
イギリス |
96.1 |
=18 |
↑ |
■「THE大学インパクトランキング2024」総合ランキング(日本の大学のみ)上位10校
総合ランキングの中で、日本の大学の上位10校をご紹介します。
順位 |
大学名 |
設置区分 |
スコア |
2023年の順位 |
順位の変動 |
---|---|---|---|---|---|
=72 |
北海道大学 |
国立 |
90.6 |
22 |
↓ |
=95 |
京都大学 |
国立 |
89.5 |
=49 |
↓ |
101-200 |
広島大学 |
国立 |
84.0–89.1 |
101–200 |
= |
101-200 |
九州大学 |
国立 |
84.0–89.1 |
201-300 |
↑ |
101-200 |
大阪大学 |
国立 |
84.0–89.1 |
101-200 |
= |
101-200 |
東北大学 |
国立 |
84.0–89.1 |
101–200 |
= |
201–300 |
慶應義塾大学 |
私立 |
79.3–83.9 |
101–200 |
↓ |
201–300 |
神戸大学 |
国立 |
79.3–83.9 |
101–200 |
↓ |
201–300 |
名古屋大学 |
国立 |
79.3–83.9 |
201–300 |
= |
201–300 |
岡山大学 |
国立 |
79.3–83.9 |
201–300 |
= |
201–300 |
立命館大学 |
私立 |
79.3–83.9 |
201–300 |
= |
201–300 |
筑波大学 |
国立 |
79.3–83.9 |
101–200 |
↓ |
201–300 |
早稲田大学 |
私立 |
79.3–83.9 |
201–300 |
= |
■「THE大学インパクトランキング2024」 各SDGのトップ大学
SDGs別のランキングにおいて、それぞれのSDGで1位を獲得した大学をご紹介します。
SDGs |
1位の大学名/国名 |
スコア |
---|---|---|
SDG 1 – No poverty |
アイルランガ大学(Universitas Airlangga)/インドネシア |
92.7 |
SDG 2 – Zero hunger |
クイーンズ大学(Queen’s University)/カナダ |
90.3 |
SDG 3 – Good health and well-being |
JSS高等教育・研究アカデミー(JSS Academy of Higher Education and Research)/インド |
96.1 |
SDG 4 – Quality education |
オールボー大学(Aalborg University)/デンマーク |
91.4 |
SDG 5 – Gender equality |
ウエスタンシドニー大学(Western Sydney University)/オーストラリア |
79.7 |
SDG 6 – Clean water and sanitation |
エクセター大学(University of Exeter)/イギリス |
91.8 |
SDG 7 – Affordable and clean energy |
アフェ・ババロラ大学(Afe Babalola University)/ナイジェリア |
85.0 |
SDG 8 – Decent work and economic growth |
慶北国立大学(Afe Babalola University)/韓国 |
89.1 |
SDG 9 – Industry, innovation and infrastructure |
デルフト工科大学(Delft University of Technology)/オランダ アーヘン工科大学(RWTH Aachen University)/ドイツ ミュンヘン工科大学(Technical University of Munich)/ドイツ エディンバラ大学(University of Edinburgh)/イギリス エアランゲン・ニュルンベルク大学(University of Erlangen-Nuremberg)/ドイツ シュトゥットガルト大学(University of Stuttgart)/ドイツ 延世大学(ソウルキャンパス)(Yonsei University (Seoul campus))/韓国 |
100.0 |
SDG 10 – Reduced inequalities |
RMIT大学(RMIT University)/オーストラリア |
92.8 |
SDG 11 – Sustainable cities and communities |
マンチェスター大学(University of Manchester)/イギリス |
95.7 |
SDG 12 – Responsible consumption and production |
ボーンマス大学(Bournemouth University)/イギリス |
93.6 |
SDG 13 – Climate action |
タスマニア大学(University of Tasmania)/オーストラリア |
92.7 |
SDG 14 – Life below water |
アリゾナ州立大学テンペキャンパス(Arizona State University (Tempe))/アメリカ |
97.4 |
SDG 15 – Life on land |
マンチェスター大学(University of Manchester)/イギリス |
96.9 |
SDG 16 – Peace, justice and strong institutions |
マレーシアサインズ大学(Universiti Sains Malaysia)/マレーシア |
90.9 |
SDG 17 – Partnerships for the goals |
シドニー工科大学(University of Technology Sydney)/オーストラリア |
99.6 |
今年のランキングのトピックス
世界ランキングではウエスタンシドニー大学が3年連続1位、トップ10にはオーストラリアから4校
総合ランキングで1位に輝いたのは3年連続でオーストラリアのウエスタンシドニー大学。2位は同率でイギリスのマンチェスター大学(前年2位)とオーストラリアのタスマニア大学(同5位)でした。トップ10のうちオーストラリアの大学が4校(前年の3校から増加)を占め、イギリスとカナダからそれぞれ2校、デンマークとアメリカからそれぞれ1校ランクインしています。オーストラリアとニュージーランドからの参加29校のうち16校が100位以内に入っていることも含め、オセアニア、特にオーストラリアが持続可能性を非常に真剣に受け止めている地域であることがうかがえます。
総合トップ100入りはイギリスの25校が最多となりました。参加大学が最も多い地域は前回に引き続き東アジア・環太平洋地域(オーストラリアとニュージーランドを除く)であり、次いで中欧・東欧ですが、ランキング上位100校のうち48校がイギリス、オーストラリア、カナダの大学となっています。
今回、東アジア・環太平洋地域からランクインした大学は387校で、前年より21%増加しました。上位3カ国はタイ(77校)、日本(74校)、フィリピン(56校)となっています。
また、総合ランキングでは、アフリカの大学(75校)が北米(71校)を上回りました。アフリカからのランクイン校数は前年の32校から75校に増加しましたが、トップ400にランクインしたのは6校のみ。トップ100には南アフリカから3校がランクインしました。
日本の大学では北海道大学、京都大学がトップ100入り
日本の大学の総合ランキング上位は、72位タイの北海道大学、95位タイの京都大学。さらに101-200位の4大学(広島大学、九州大学、大阪大学、東北大学)と続き、トップ200に入ったのは6校でした。
SDG別ランキングで、日本最高位で全体でも100位までに入る高順位を獲得した大学は以下の通りです。
- SDG1(貧困):立命館大学 15位タイ
- SDG2(飢餓):京都大学 22位
- SDG3(保健):藤田医科大学 4位
- SDG6(水・衛生):九州大学 22位
- SDG9(イノベーション):大阪大学、東北大学 16位タイ
- SDG11(都市):広島大学 51位タイ
- SDG13(気候変動):広島大学 54位タイ
- SDG14 (海洋資源):熊本大学 47位
- SDG15 (陸上資源):北海道大学 51位
- SDG16 (平和):慶應義塾大学 60位
- SDG17 (パートナーシップ):広島大学 45位タイ
広島大学は上記に加えSDG4(教育)とSDG10(不平等)でも日本最高位を記録し、最多6つのSDGで日本のトップになりました。
日本からのトップ200入りが最も多かったのは、SDG14「海の豊かさを守ろう」の19校でした。
また、最も世界順位が高かったのは、SDG3(保健)4位の藤田医科大学。SDG17を除くと、SDG3は参加校数(72校)、トップ100(9校)とも日本が最多でした。
THEは「最近の英国王立医学協会ジャーナルにも掲載されたように、日本は集団の健康や平均寿命に関する国際的な研究において、常時トップ10圏内を堅持している」と説明。
チーフ・グローバル・アフェアーズ・オフィサーのフィル・ベイティ氏は「SDG3の結果は、数多くの調査において日本が世界で最も健康的な国のトップ10に入っていることや、世界最長寿国の一つであることを考えれば当然であろう。日本の大学にはこの分野における豊富なデータと研究の蓄積があり、世界的にも健康な国という自国のポジションを支えていくと思われる」とコメントしています。
現代では、大学という機関の役割が研究や教育にとどまらず、国や地域コミュニティへの貢献、さらには世界が直面している複雑な諸問題の解決に貢献することにまで広がりを期待されています。国連のSDGs(持続可能な開発目標)に対する大学の貢献度を測定する世界で唯一のこのランキングへの注目度は、今後ますます高まっていくでしょう。
総合ランキングだけでなく、各SDGのランキングも、大学の価値を考えるうえで今後ますます重要な指標となっていくはずです。
大学の多様性を浮かび上がらせ、大学ブランディングの強力な要素となりうるこのインパクトランキングを、単なる順位付けではなく、「社会貢献」という観点で国内外の大学を見る1つの物差しととらえると、大学選びの幅が広がっていくのではないでしょうか。
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※この記事でご紹介している内容は2024年7月31日現在の情報に基づいています。