THEアジア大学ランキング2024発表!「研究の質」の指標追加で日本の大学はどうなる?
ここ数十年、アジアの大学の台頭は世界でも大きな注目を集めています。そんな中、2024年5月1日付でイギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education(THE)」は「THEアジア大学ランキング2024(Asia University Rankings 2024)」を発表しました。今回からいくつかの指標項目で改訂があり、スコアや順位に大きな変動がありました。いったいどのような変化があったのか、注目して見ていきましょう。
「THEアジア大学ランキング」2024年度の改訂ポイント
これまで「アジア大学ランキング」は13の指標でアジア地域の大学をランク付けしてきましたが、今回から「THE世界大学ランキング(THE World University Rankings)」と同様の18の指標を使用したランキング方法に変更。改訂されたグローバルランキングと同じ枠組みに基づきつつ、それぞれの指標の重みづけはアジアの大学の特性を反映できるように再調整されています。
指標は5つの分野に分かれており、その中に18の指標項目が設定されています。大きな変更としては、従来の「被引用論文」分野が「研究の影響力」分野となり、3つの指標が追加されたこと。さらに、「産業界」分野に「特許に引用された論文数」の指標が追加されました。
◆新指標構成
分野 |
項目 |
% |
|
---|---|---|---|
教育(学習環境) |
評判調査<教育> |
10.0 |
25.0 |
学生に対する教員の比率 |
4.5 |
||
学士課程学生に対する博士課程学生の比率 |
2.25 |
||
教員に対する博士号取得者の割合 |
6.0 |
||
教育機関としての収入 |
2.25 |
||
研究環境 |
評判調査<研究> |
15.0 |
30.0 |
研究関連収入 |
7.5 |
||
学術生産性 |
7.5 |
||
研究の影響力 |
引用の影響力(大学平均FWCI) |
7.5 |
30.0 |
研究力(75パーセンタイルFWCI) |
7.5 |
||
研究の卓越性(トップ10%論文数) |
7.5 |
||
研究の影響力(被引用の質) |
7.5 |
||
産業界(知識移転) |
産業界からの研究関連収入 |
5.0 |
10.0 |
特許に引用された論文数 |
5.0 |
||
国際性(スタッフ、学生、研究) |
外国籍留学生の割合 |
2.5 |
7.5 |
外国籍教員の割合 |
2.5 |
||
国際共同研究 |
2.5 |
||
派遣留学生の割合*1 |
― |
*1) 2024年はカウントされません。
「THEアジア大学ランキング2024」 TOP20
今回で12回目となる「THEアジア大学ランキング」。2024年版では31の国・地域から、前回より70校多い739校がランクインしました。データを提出したもののTHEが定める条件や基準を満たしていない「ランキング対象外」は388校でした。
◆「THEアジア大学ランキング2024」 TOP20一覧
2024年順位 |
大学名 |
国・地域 |
2023年順位 |
順位の変動 |
---|---|---|---|---|
1 |
清華大学 |
中国 |
1 |
= |
2 |
北京大学 |
中国 |
2 |
= |
3 |
シンガポール国立大学 |
シンガポール |
3 |
= |
4 |
南洋理工大学 シンガポール |
シンガポール |
5 |
↑ |
5 |
東京大学 |
日本 |
8 |
↑ |
6 |
香港大学 |
香港 |
4 |
↓ |
7 |
上海交通大学 |
中国 |
=9 |
↑ |
8 |
復旦大学 |
中国 |
=9 |
↑ |
9 |
浙江大学 |
中国 |
12 |
↑ |
10 |
香港中文大学 |
香港 |
6 |
↓ |
11 |
中国科学技術大学 |
中国 |
15 |
↑ |
12 |
香港科技大学 |
香港 |
7 |
↓ |
13 |
京都大学 |
日本 |
18 |
↑ |
14 |
ソウル大学校 |
韓国 |
11 |
↓ |
15 |
香港城市大学 |
香港 |
16 |
↑ |
16 |
南京大学 |
中国 |
19 |
↑ |
17 |
延世大学校(ソウルキャンパス) |
韓国 |
13 |
↓ |
18 |
韓国科学技術院 (KAIST) |
韓国 |
17 |
↓ |
19 |
香港理工大学 |
香港 |
14 |
↓ |
20 |
東北大学 |
日本 |
34 |
↑ |
※ 順位の数字に「=」がついている場合:同順位の大学あり
※ 順位の変動が「=」の場合:前回順位から変動なし
2024年版ランキングにおける全体の動向
TOP3は5年連続で同じ顔ぶれ、上位2校は中国が占める
総合1位は中国の清華大学。6年連続でトップの座を維持しました。2位は北京大学(中国)、3位はシンガポール国立大学(シンガポール)で、こちらはそれぞれ5年連続となりました。
4位は南洋理工大学(シンガポール)で、1・2位を中国、3・4位をシンガポールが占める中、5位には東京大学(日本)が入りました。
トップ10の中で見ると、中国が前年より1校増の5校で他を圧倒しており、次いでシンガポールと香港が2校ずつ、日本が1校でした。トップ10のうち前年から順位を上げたのは、南洋理工大学 シンガポール(5位→4位)、東京大学(8位→5位)、上海交通大学(9位タイ→7位)、復旦大学(9位タイ→8位)、浙江大学(12位→9位)の5校です。
全体のランクイン校数で見ると、日本が前年より2校増の119校で前回に引き続きトップ。以下、インド91校、中国86校、トルコ75校、イラン73校と続いています。中国は前回の95校から9校減少し、16校増えたインドと順位が逆転する結果になりました。
日本の大学のランキングが軒並み上昇、新たに追加された指標が影響
◆THEアジア大学ランキング2024 TOP200入りした日本の大学
大学名 |
設置区分 |
2024年順位 |
2023年順位 |
---|---|---|---|
東京大学 |
国立 |
5 |
8 |
京都大学 |
国立 |
13 |
18 |
東北大学 |
国立 |
20 |
34 |
大阪大学 |
国立 |
28 |
47 |
東京工業大学 |
国立 |
29 |
56 |
名古屋大学 |
国立 |
41 |
=49 |
九州大学 |
国立 |
=52 |
108 |
北海道大学 |
国立 |
=79 |
=134 |
筑波大学 |
国立 |
82 |
=131 |
東京医科歯科大学 |
国立 |
90 |
112 |
神戸大学 |
国立 |
140 |
201-250 |
広島大学 |
国立 |
147 |
251-300 |
順天堂大学 |
私立 |
159 |
201-250 |
慶應義塾大学 |
私立 |
164 |
201-250 |
東京農工大学 |
国立 |
=176 |
401-500 |
東京医科大学 |
私立 |
198 |
351-400 |
※ 順位の数字に「=」がついている場合:同順位の大学あり
日本の大学では、トップが東京大学の5位、続いて京都大学の13位、東北大学の20位。さらに28位に大阪大学、29位に東京工業大学とTOP30までに5大学がランクインし、前回の2校から3校増。TOP100では6校→10校に、TOP200まで見ると13校→16校に増加しています。そのすべての大学が前回より順位をアップさせており、日本勢の躍進が目立っています。
その理由として挙げられるのが、今回改訂されたランキング指標です。「研究の質」に関する指標が加わったことが日本に有利に働いて日本の大半の大学のスコアが大幅にアップ、アジア地域の平均を大きく上回りました。結果として、ランクを14上げた東北大学、同じく19上げた大阪大学、27上げた東京工業大学など日本の大学の順位が軒並み上昇したのです。今回から新たに、和歌山県立医科大学(251-300位)、兵庫医科大学(401-500位)、奈良女子大学と富山県立大学(いずれも601+)の4校も日本からランクインしました。
THEチーフ・グローバル・アフェアーズ・オフィサーのフィル・ベイティ氏のコメント:
「新たな指標の導入により、日本の大学の研究成果における卓越性が明らかになった。今回の成績の好転と大幅な順位上昇は、日本の高等教育の先行きが非常に明るいことを示している」
今回、新しいランキング指標によって、日本の大学の研究力や研究の成果が高い評価を受けることになりました。これまではとらえきれていなかった大学のポテンシャルや底力を、より多面的にはかることができるようになったともいえます。こうしたランキングも、大学選びの参考にしてくと良いでしょう。
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※この記事でご紹介している内容は2024年5月23日現在の情報に基づいています。