イギリスの大学入試窓口「UCAS」とは?
留学生受入れ数が世界第2位のイギリス。オックスフォード大学をはじめ、世界トップクラスの名門大学がいくつも存在し、国土はそれほど広くないものの、世界中から優秀な学生を年間40万人以上も受け入れている留学大国です。歴史と伝統に支えられながら、最先端の研究・教育が提供されているイギリスの大学に憧れを抱く人も少なくないのではないでしょうか?
イギリスの大学入試制度は最も大きな特徴は、大学への出願が「UCAS(ユーカス)」というサイトで一括管理されていること。今回は、このUCASを中心にイギリスの大学出願システムについてわかりやすく解説します。アメリカともまた違う大学入試の仕組みを理解しておけば、今後、志望大学として「イギリスの大学も検討したい!」となったときも慌てることなく、自信をもって志望校選びができるようになるはずです。
イギリスの大学への出願手続きは?
イギリスの大学・高等教育機関のほとんどは、「UCAS」を通して出願を受け付けています。
UCASとは?
「UCAS」とは「Universities and Colleges Admissions Service」の略。イギリスの大学に入学する際の窓口となっている、オンラインでの「総合出願機関」のことです。UCASでは大学・コースのリサーチから、複数の志望先への出願、出願後の変更、出願進行状況の追跡・確認、合否通知の受け取り、入学意思の返事までを一括で行うことができます。通常、イギリスの大学(学部)への入学を希望する場合は、UCASを通して出願する必要があります。
出願の手続きは基本的にUCAS のウェブサイトで行い、その後のやりとりもほぼすべてオンライン上で行われます。
※ファウンデーションコースの場合は学校によって異なり、設置している学校に直接申し込むケースと、UCASを通すケースがあります。
※一部の大学・教育機関では、UCASのアプリケーション(共通願書)ではなく、学校独自のアプリケーションを選択できる場合もあります。
<UCAS ウェブサイトのおもなサービス>
- ・Course Search (学校検索)
- ・Apply (出願)
- ・Track (出願状況の確認等)
【参考】:UCASサイト
UCASによる出願スケジュールの目安
イギリスの大学は、一般的に9~10月に年度が始まります。基本的に学期は「ターム(term)」と呼ばれ、3学期制をとる大学が多くなっています。主に秋学期(Fall / Autumn term)が9~12月、春学期(Spring term)が1~3月、夏学期(Summer term)が4~6月というのが目安です。
※ファウンデーション・コースは、9月開始で翌年6月頃までが一般的です。
≪2022年秋学期入学の場合の例≫
時期 | 内容 |
---|---|
9月上旬 | UCASプラットフォームがオープン⇒大学の学部に出願申請をすることが可能に |
10月初め | 音楽コースの出願締め切り |
10月15日 | オックスフォード大学・ケンブリッジ大学の出願締め切り、医学部・歯学部・獣医学部(動物医学、動物科学)の締め切り |
12月中旬 | オックスブリッジの合格通知 |
1月26日 | 10/15に締め切られた大学・学部を除くほぼすべての大学の学部課程の申し込み締め切り (一部のアート&デザイン系コースの締め切りは3月24日になることもある) |
2月25日 | UCASエキストラがオープン |
3月末まで | 1/15に出願が締め切られたほとんどの大学・学部の合格通知(オファー)が届く ※大学によって差がある |
5月19日 | 1/26までに申込みをした場合の合否通知期限 |
6月9日 | 5/19以前に受け取ったオファーへの返信期限 |
6月末 | UCAS出願締め切り |
7月5日 | クリアリングでの申請開始 |
7月14日 | 6/30までに出願した場合の合否通知期限 |
7月21日 | 7/14以前に受け取ったオファーへの返信期限 |
10月19日 | クリアリングでの申請締め切り |
※ファウンデーションコースも含め、すべての大学・学部では入学定員に達すると新規出願を早期に締め切ることもあります。出願受付がスタートしたら、なるべく早めに出願申請を行うことが望ましいとされています。
UCASを通した出願手続き&選考プロセス
①UCASへの登録・サインイン
UCASの「STUDENT SIGN IN」からユーザー登録をし、アカウントを作成します。指定された個人情報等を入力してユーザー名・パスワード等を設定した後、サインインしてその他の必要な個人情報(資金状況および特別なニーズ等)を入力します。
【参考】:STUDENT SIGN IN|UCAS
②志望校選び・学部選択
UCASサイトには大学や学部のサーチツールがあります。自分の興味のある分野のキーワードを入力すると、そのコースを扱っている大学名とコース名の一覧が表示され、1校ずつ詳細を確認することができます。
UCASでは一度に最大5コースまで出願することができます(医学部、歯学部、獣医学部は最大4コース)。出願する大学・コースの優先順位は付けません。
※オックスフォード大学およびケンブリッジ大学については、いずれか一校にしか出願できない場合がありますので、詳細は各大学に問い合わせる必要があります。
【参考】:UCAS search tool
③アプリケーション(オンライン願書)入力
UCASサイトのアプリケーションは、通常、9月上旬から出願することができます。
アプリケーションによる出願は、同一年度に1回だけ可能です。
UCAS Hubのダッシュボードの「Your application」からアプリケーションを開始できます。
<入力する項目の例>
必須項目はすべて入力する必要があります。
- ・Personal Details – 個人情報(名前、住所、メールアドレスなど)
- ・Course choices – 選択した大学・コース(5コースまで出願コースを選択)
- ・Education history – 学歴(学校名や取得科目名、単位などを入力)
- ・Employment history – 職歴(職歴を入力)※職歴がない場合は、入力は不要
- ・Personal statement – 志望動機(1000字以上、47行もしくは4,000字以内で入力)
【参考】:UCAS Hub
出願締め切りはオックスブリッジと一部の学部で10月中旬、それ以外の大学では1月下旬に設定されています。
<2022年入学向けの出願締切り>
◆2021年10月15日18:00 (イギリス時間) オックスフォード大学、ケンブリッジ大学、ほとんどの大学の医学・歯学・獣医学部
◆2022年1月26日18:00 (イギリス時間) 上記以外のすべての大学・学部
※一部の大学・学部では、UCASアプリケーションと一緒に追加の入学試験を受ける必要があるため、個別に大学や学部の出願要件をチェックする必要があります。
④宣誓書への同意、推薦状の提出、出願料の支払い
アプリケーションをすべて入力し終えると、確認画面が表示されるので、必要であれば編集し直します。作成が完了したら、「完了(Complete)」にチェックを付けて保存し、「Declaration(宣誓書:UCAS利用条件)」に同意します。
次に自分の在籍校の教員などからの推薦状を添付します。
その後、オンラインで出願料を支払います。1コースの場合で22ポンド、複数のコースの場合で26.50ポンドです(2022年入学の場合)。
⑤申請完了
出願料を支払うとUCASから自動的に出願した各大学へ入力した内容の書類が送付され、申請が完了します。
⑥結果の通知
出願書類をもとにそれぞれの大学で入学審査が行われます。
出願後は、自分のアプリケーションにサインインすれば「Track(追跡)」と呼ばれるシステムで、いつでも出願状況を確認することができます。出願に関する最新情報がある場合は、メールで通知を受けることができます。
※大学から、面接やオーディションの招待要請(Invitation)が届くこともあります。
【参考】:TRACKING YOUR UCAS APPLICATION
大学による入学審査の結果はUCAS上で確認できます(出願した各大学から直接メールも届きます)。結果は下記の3種類あります。
<結果の種類>
- ◆無条件オファー(Unconditional Offers):条件なしで合格〔入学確定〕
- ◆条件付きオファー(Conditional Offers):要件(通常は試験結果)を満たすことを条件にした合格
- ◆不合格(Unsuccessful)
※条件付きオファーとは、それぞれのコースに入学するための最低条件を満たしている場合に受け取る通知です。最終的に指定されたテスト等で基準以上のスコアを取れば入学できるといった具体的な条件をつけた入学許可となります。
★結果通知の時期は大学により異なります(オックスブリッジの場合は、12月中旬には結果通知されます)。
⑦合格通知(オファー)への返答
受け取ったオファーに対しUCASを通じて返答をします。
届いたオファーの中から自分が行きたい大学を選び、UCASの「Track」からそれぞれの大学(コース)に返答を入力します。
<返答の種類>
- ◆Firm acceptance(第一希望)
- ◆Insurance acceptance(第二希望):第一希望に入学でいなかった場合に保険の役割を果たすコース
- ◆Decline(拒否)
※入学を希望する第一希望の大学から無条件オファー(入学要件がすでに満たされている)を受けた場合には、Insurance acceptanceを選択せずにすべてDeclineを選択し、入学意思を確定します。
※入学希望を伝えた後に選択を変えたい場合、14日以内なら変更可能です。14日を経過すると大学・学部との交渉が必要です。2022年7月26日以降は選択を変更することはできません(2022年入学の場合)
【不合格となった場合】
●エキストラ(Extra) (2月25日~7月4日:2021年入学の場合)
エキストラ制度により、2月末から7月初旬までの期間にまだ空きがあるコースへ出願できます。(申請は6月末まで)
●クリアリング(Clearing) (7月6日~10月19日:2021年入学の場合)
6月末までに出願できなかった人や、その時点で入学先が決定していない人を対象日にしたクリアリングという救済措置があります。UCASの通常の申請は6月末で締め切られ、大学はいったん受付を修了しますが、7月になると条件付きオファーを受けた学生の入学手続き状況などが判明するため、定員に空きが出た場合は再募集が行われます。7月中旬から9~10月ごろまで、定員に空きのあるコースに出願することが可能です。
UCAS出願に必要な書類
UCASを通じてイギリスの大学(学部課程)に出願する場合は、一般的に下記のような書類が必要です。
主な出願書類の例
・UCASアプリケーション
・英語力を証明する書類(TOEFL iBT or IELTS)※イギリスではIELTSが一般的
・Personal Statement(志望動機書:UCASに登録するエッセイ・各大学へ提出する場合もあり)
・成績表 (A-level / IB / ファウンデーションの成績)
・高校の卒業証明書
・教員からの推薦状
※提出書類は大学によって異なるので、各大学のホームページを必ずチェックしてください。
イギリスの大学(学部課程)への出願に必要となる「UCAS」についての情報をまとめました。 普段はなかなか触れることのない他国の大学出願の仕組みやプロセスを知るだけでも、少し安心するものですよね。イギリスの大学もぜひ視野に入れて、志望校選びをしていっていてはいかがでしょうか。
【参考記事】:海外大研究シリーズ イギリス編① オックスフォード大学<コロナ禍の最新情報もチェック>
【参考記事】:海外大研究シリーズ イギリス編② インペリアル・カレッジ・ロンドン<コロナ禍の最新情報もチェック>
【参考記事】:海外大研究シリーズ イギリス編③ マンチェスター大学<コロナ禍の最新情報もチェック>
ベネッセでは、グローバルな進路を実現する多様な学習プログラムをご用意しています。丁寧な個別カウンセリングをもとに、あなたの希望に合わせた、「あなただけの海外留学・進学」をプロの知識と経験でしっかりサポートします。
イギリスのトップレベル大学合格を目指した
IELTSやTOEFL®テスト対策もおまかせ!
ぜひご相談ください。
▼
※この記事でご紹介している内容は2021年11月5日現在の情報に基づいています。