海外大研究シリーズ イギリス編① オックスフォード大学<コロナ禍の最新情報もチェック>
わずかに収束の兆しが見えてきたとはいえ、いまだ世界中で新型コロナウイルス感染拡大のリスクは完全に消えたとはいえない状況。気軽に海外の大学を直接訪問し、自分の目でじっくり見てくるということはなかなか難しい、という人も多いのではないでしょうか。この海外大学研究シリーズでは、海外大進学に興味がある方に向けて、世界の人気大学を中心に「そこが知りたい!」と思うポイントをまとめた情報をお届けしています。
今回からはイギリス編がスタートします!第一弾は、世界的指導者やノーベル賞受賞者、作家を多数輩出しているオックスフォード大学を取り上げます。英語圏最古の大学として知られるオックスフォード大学は、THE世界大学ランキングでは6年連続世界1位、QSの2022年のランキングでは2位と、8世紀以上に渡り世界のアカデミズムをリードし続ける名門中の名門です。日本の大学における学科に相当するデパートメントと、カレッジと呼ばれる学寮を連携しながら学ぶのが大きな特徴となっています。また近年では、アストラゼネカ社と共同でCovid-19のワクチンを開発したことでも名を馳せました。
オックスフォード大学(University of Oxford)の基本データ
設立年 | 不明 (明確な設立年はわかっていない。1096年にはすでに教育が行われていたことを示す公式記録があり、1167年から急速に発展したと言われている) |
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所在地 | オックスフォード市 |
学部数 | 4つのDivision |
学生数 | 学部生 約12,000人 大学院生 約12,000人 ※うち約10,900人が留学生 |
大学ランキング(*1) | THE:1位 QS:2位 |
主な分野別ランキング(*2) | Clinical & health:1位 Computer science:1位 Social sciences:2位 Education:2位 Law:3位 Life sciences:3位 Arts & humanities:4位 Business & economics:4位 |
授業料と財政援助 |
●授業料:【留学生の場合】専攻によって金額は異なる ●財政援助:大学はイギリスに居住する学部生への財政支援に年間約800万ポンドを費やしているが、日本人の留学生が利用できる奨学金、ローン等は用意されていない |
合格率約 | 14.3% |
留学生率 | 約45% |
立地環境 | ロンドンから電車で約1時間半の、イギリス東部にあるオックスフォード市に位置する。同市はオックスフォード大学を中心として栄えたイギリスを代表する大学都市で、44のカレッジが点在し、街の人口の1/5ほどを学生が占める。大学施設や教会など歴史的建造物が建ち並ぶ美しい街並みは「夢見る尖塔の都市」とも称される。買い物や食事など必要なものは市内にまとまっている |
著名な卒業生 | ボリス・ジョンソン氏(英首相)、マーガレット・サッチャー氏(元英首相)、ビル・クリントン氏(元米大統領)、アウンサンスーチー氏(政治家)、アダム・スミス氏(経済学者)、スティーブン・ホーキング氏(科学者)、ルイス・キャロル氏(作家)、ヒュー・グラント氏(俳優)など |
公式URL | https://www.ox.ac.uk/ |
*1 THE:Times Higher Educationが発表している「World University Rankings 2022」
QS:Quacquarelli Symonds発表している「QS World University Rankings® 2022」
*2 Times Higher Education「World University Rankings 2022 by subject」より
オックスフォード大学の特徴
校風
モットーは「Dominus Illuminatio Mea’」(ラテン語:“主はわが光”という意味)。11世紀の末に大学の礎が築かれていることから、現存する大学としては世界で3番目に古く、英語圏では最古の大学と言われています。現在までに28人の英国首相、少なくとも30人の国際的指導者、50人を超えるノーベル賞受賞者、120人以上のオリンピックメダル受賞者を輩出し、長年にわたって研究・教育の各分野で世界をリードし続けています。
同大学はイギリスの伝統的なカレッジ制を採用しており、独立した自治権を持つ45のカレッジ(39のカレッジと6つのパーマネントプライベートホールと呼ばれるキリスト教系の教育機関)の連合体として運営されています。 カレッジとは別に、教育組織としての学部は大学本部の管理下にあり、講義やプログラムの運営、試験の運営、学位の授与などを行っています。日本の大学における学部や学系、学群などに相当する組織としてはDivisionがあり、その中にDepartment(日本でいう学科、専攻に近い)があります。学生や教員はDepartmentに籍を置くと同時に、必ず1つのカレッジに所属しています。
学生はカレッジへの帰属意識が高く、カレッジごとの団結心も非常に強いのが大きな特徴。ボートなどイギリス伝統の競技で行われる、カレッジ対抗のスポーツ大会が白熱することでもよく知られています。
人気のある専攻
「人文科学」「数学、物理および生命科学」「医学」「社会科学」という4つのDivision(学術分野)の中に、50近くの学部があり、さらにその中に数百の様々な専攻分野があります。
オックスフォードの看板学科としてとくに有名なのがPPE(Philosophy, Politics and Economics:哲学、政治学、経済学)。1920年にオックスフォード大学で確立された学問で、社会的・政治的概念やその歴史を紐解きながら、経済学、哲学、政治学を網羅的に学ぶことができるこのコースからは政治家や哲学者、ジャーナリストなど多くの著名人が輩出されています。
大学が設立された12世紀頃から続くMathematics(数学)のコースや、Biological Science(生物科学)なども有名ですが、ほかのすべての分野でも世界的に高い評価を受けています。
授業の特徴
オックスフォード大学のユニークな特徴であり、同大学における学部教育の中心となっているのがチュートリアル制度です。これは、Departmentでの講義と並行して、在籍するカレッジに所属する教員(チューター)から少人数制の教育を受けるシステムのこと。週に1回1時間、1〜3人の学生に対してチューターが1人つく、個別指導となります。
チュートリアルでは、毎週課題として8〜10冊の本を読み込み、さらに必要に応じて関連する授業も受けたりしながらエッセイを書き、そのエッセイをもとに教員による1時間の個別指導(議論)が行われます。少しでも理論に隙があると厳しく追及される、密度の濃い時間となります。このサイクルが、学期中は卒業までずっと続きます。
施設、設備の特徴
各カレッジは、大小問わずそれぞれに宿泊施設や食堂、バー、カフェ、図書館、スポーツジムなどの運動施設、ティーチングルーム、共用スペース、緑地などを備えています。
カレッジが保有する図書館は学習に必要な文献や資料を十分に取り揃えており、ほとんどの図書館が24時間解放されているので、自分のスケジュールに合わせた利用が可能です。全部で100以上ある図書館の中でも「ボドリアン図書館」は大英図書館に次ぐ規模を誇り、イギリスで出版されたすべての書物を見ることができます。
全カレッジの中でも最大規模のクライスト・チャーチカレッジのダイニングホールは、映画ハリーポッターシリーズの魔法学校のモデルとなっており、一般の見学も可能です。
学生生活の特徴
大学都市であるオックスフォードは、40以上のカレッジの建物・施設が町中に散らばっており、いわば町全体がキャンパスのようなイメージ。最寄りの市街地からは電車・バスで1時間ほどかかる距離にありますが、買い物や食事など衣食住すべてがキャンパス内で全て揃うようになっています。
生活の基盤となるのは、専門分野関係なく所属するカレッジ。カレッジは多様な学生・教員たちが共同生活を行うコミュニティのようなもので、独立した自治組織のため、大学とは別の独自の判断で入学者を選抜し、学習に必要な施設や手段を提供しています。毎日のようにイベントや講義も行われています。
カレッジには教員も居住しているため、食堂で教員と学生が一緒に食事をすることが1つの伝統です。一緒に過ごす時間が長いので、学生同士・学生と教員の距離が非常に近いのが大きな特徴と言えるでしょう。
ほかにもオックスフォード大の特徴として挙げられるのが、「オックスフォード・ユニオン」というディベートクラブ。世界的に著名なゲストスピーカーを呼んで講演が行われることがしばしばあります。また、「フォーマルディナー」と呼ばれるイベントでは、正装をして教授らと共にダイニングホールでコースディナーを食します。
なお、同大学では入学式などの式典やフォーマルディナー、学内試験などの際には「サブファスク」と言われる正装を着用するのがしきたりとなっています。サブファスクにもカレッジごとに特徴があり、厳格に着用方法が決められています。
コロナ禍での授業
新型コロナウイルスのパンデミックの間、オックスフォード大学は仮想学習環境システムを通じてオンラインで高品質な教育を提供してきました。また、リモート形式での評価を開発、および強化してきました。
2021年9月6日、オックスフォード大学は、同大学が策定した事業継続計画(BCP)フレームワークのレベル1に移行し、現在は以前に実施されていたCOVID-19に関する制限のほとんどが解除されています。ほとんどのコースで対面での学習と評価が可能になり、かつ、すべてのスタッフがキャンパスでの業務を行うことができるようになりました。また、キャンパスや大学施設で行われる教育関連イベント等への一般の方の入場可能数の増加も許可されます。
2021年の秋の新学期からは、最新のイギリス政府のガイダンスに沿って、ほとんどの教育が通常通り対面で提供される予定です(場合によっては、オンラインのリソースと指導により強化されます)。大規模なグループでの対面指導では、マスク着用が推奨(免除されている場合を除く)されますが、小グループの講義、セミナー、クラスでは必要ありません。
合格基準
2019年までに過去3回の入学サイクルでそれぞれ約23,000人が応募し、3,300人が合格通知を受け取った実績があります。
学力を証明する資格の例
大学が認定する中等教育の学力を証明する資格が必要です。
※日本の高校卒業資格だけでは、オックスフォード大学の出願基準を満たせません。
- ◇Aレベル試験(イギリスの統一試験)で3科目以上の科目を修めており、成績の目安はAAA~A*A*A (専攻科目により、Aレベルで必要な科目の条件がつく場合あり)
- ◇国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)試験において、38~40ポイントのスコア
英語力を証明するテストの例
- ◆Standard levelのスコアが必要なコース:Computer Science、Mathematics、Mathematics and Computer Science、Mathematics and Statistics
- ◆Higher levelのスコアが必要なコース:上記以外のすべてのコース
テストの種類 | Standard levelのスコア | Higher levelのスコア |
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IELTS (*1) | 7.0以上 (すべてのコンポーネントで6.5以上) |
7.5以上 (すべてのコンポーネントで7.0以上) |
TOEFL iBT®テスト/TOEFL iBT®ホームエディション(*2) | 100以上 (各項目の最低基準: Listening 22, Reading 24, Speaking 25, Writing 24) |
110以上 (各項目の最低基準: Listening 22, Reading 24, Speaking 25, Writing 24) |
*1) IELTSアカデミックオプションを推奨
*2) TOEFL® Essentials™テストは受け付けていません。
- ※学科(コース)により、大学独自の入学試験を受験することが必要です。
- ※オックスフォード大学の入学審査はインタビュー(面接)が必須となります。通常、12月の2週間の面接期間中に、書類選考を通過した約10,000人が面接(インタビュー)を受けます。
- ※オックスフォード大学では、「課外活動」は出願するコースに関連し、コースの選択基準を示すのに役立つ場合を除いて、審査時に考慮されません。
- ※オックスフォード大学には、留学生用の大学進学準備(ファウンデーション)コースやパスウェイプログラムはありません。
名実ともに世界のトップに君臨し続ける超名門大学であるオックフォード大学。日本の高校を卒業しただけでは直接入学することはできず、専用のファウンデーションコースもないため、学部入学のハードルが非常に高いことは間違いありません。
Aレベルと呼ばれるイギリスの統一試験の代わりにSAT®の成績も出願資格として認められてはいるものの、日本でIBバカロレアを取得できる高校に通っていなかった場合は、オックスフォード大学に受け入れられる他の教育機関のファウンデーションコースにいったん通ってから、入学を目指すのが現実的です。
ただし、ファウンデーションコースでも最高レベルの成績でプログラムを終了することが必須となります。学力、英語力ともに世界トップの学生たちと肩を並べる力が求められますが、道は閉ざされているわけでありません。最高峰の環境と仲間たちに囲まれて学ぶ時間は何にも代えがたい経験になるはず。どれだけ努力をしてでも、挑戦する価値は十二分にある大学と言えるでしょう。
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※この記事でご紹介している内容は2021年10月15日現在の情報に基づいています。