海外大学進学情報

【’21/8/6更新】コロナ禍の留学最新情報
ー秋学期からの授業はどうなる?ー

2020年に全世界を襲った新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック。昨今はワクチンが徐々に普及し始めるなど明るい兆しも見え始めてはいますが、いまだに予断を許さない状況が続いています。海外留学を考えている高校生の皆さんは、なかなか先が見通しにくいことで不安や心配事もたくさんあるのではないでしょうか? そこで今回は、コロナ禍の今、留学を目指す高校生が気になりがちな「今から海外留学ってできるの?」「留学スタイルってどうなるの?」などの、留学事情の疑問にまとめてお答えします。

【21/8/6更新】コロナ禍の留学最新情報

世界の留学概況

2021年も後半に入り、世界各国では新型コロナウイルスへの対応に、少しずつ差が生じてきています。自国の感染拡大状況にあわせ、入国制限や入国後の行動制限措置などの状況も、それぞれに異なっています。留学生に対する扱いも、定められた対策を確実に行えば渡航(留学)が可能となっている国、現在でも渡航が禁止されている国など様々です。

留学生として渡航が可能な国の場合、大学は秋学期から対面の授業を再開する傾向があります。基本的にはワクチンの接種後に、通常授業という流れになる予定です。
留学生を含めて海外からの入国禁止が続いている国でも、状況が好転すれば留学受け入れを再開するという姿勢は保持し続けています。渡航ができない留学生に対しても、その国・その大学でしかできない学びをあきらめなくて済むよう、各大学でそれぞれに配慮・施策が講じられています。キャンパスでの対面教育を最終的な未来のゴールに据えつつ、ひとまず現状ではオールオンライン授業や、オンラインと対面授業のハイブリッドなど、それぞれの大学によって工夫された教育が提供されています。

いずれの国でも感染状況によって対応は流動的であり、対面の授業が再び規制される可能性も常に残されていますが、世界的に見ても、パンデミック当初よりは大学のオンライン環境の整備がかなり進んでいます。オンラインによる教育システムはもちろん、大学生活に欠かせないコミュニティづくりなどの活動についてもノウハウ等が蓄積され、整ってきていると言えるでしょう。

世界各国の留学生受け入れ状況

2021年8月2日現在、日本の外務省は、感染症危険情報レベルについて、アメリカ・カナダ・イギリスを含む世界159か国・地域に対してレベル3(渡航中止勧告)、それ以外のすべての全世界(オーストラリア・ニュージーランドを含む)に対してレベル2(不要不急の渡航は止めてください)を発出しています。
ただ、日本で渡航中止勧告が出ていても入国自体は可能な国もあり、外務省も渡航先の防疫措置の確認など学生の安全確保に万全を期すことを前提に、留学の再開を認めています。

日本からの主要な留学先であるアメリカ・オーストラリア・カナダ・ニュージーランド・イギリス各国の【留学生受け入れ状況】(2021年8月6日現在)をまとめました。

国名 日本からの入国 出発前のPCR検査 入国後の行動制限 学生ビザの発給
アメリカ
(出発の3日前までに受検し、陰性証明を取得することが必要)
10日間の自主隔離(*1)
※ハワイは隔離不要
オーストラリア ×
カナダ △(入国には条件あり)(*2)
(搭乗前72時間以内に受検し、陰性証明の取得が必要)
14日間の自主隔離(*3)
ニュージーランド × (*4) 停止中
イギリス
(出発前3日以内に受検し、陰性証明書の取得が必要)
10日間の自主隔離

*1) アメリカは州および地域によって要件が異なります。PCR検査の陰性証明があれば、入国後の行動制限等が設けられていない場合もあります。

*2)  各教育機関がカナダ政府に提出するコロナ対策プランが認可された対象校に通う場合のみ、学生ビザでの入国が認められています。(州ごとに対応が異なる場合もあります)9月7日(開始予定日)からはワクチン接種を完了したすべての外国人の入国が可能となる予定です。

*3) 日本時間7月6日午前4時59分より、カナダが承認しているワクチンを2回接種し、その後14日間が経過している場合は自己隔離が免除になっています。また9月7日以降は、14日前までにワクチンの接種を完了し、すべての外国人の入国が許可されることが発表されています。

*4) 2021年1月にニュージーランドで学士以上の資格を取得中、または取得中であり、教育機関から指名された1000人の留学生の入国が特例で許可されました。留学生の入国は段階的に再開される予定ですが、今後については未定です。

※状況は常に流動的で、予告なしに入国制限が実施されることもあります。詳細な情報については、外務省や各国大使館など公的な機関が発表する最新情報を必ず確認してください。

秋学期からの世界各国の大学の動き(傾向)

各国の大学が2021年秋学期からどのように対応する予定か、国ごとに傾向をまとめます。

 

国名 秋学期からの大学の対応(傾向)
アメリカ 対応は大学によって異なりますが、秋学期からは対面授業を再開する大学が多くなっています。対面、オンライン、または両方を並行して行うハイブリッド型のいずれかで授業が行われる予定です。また授業再開に向け、440以上の大学でワクチン接種の義務化が発表されています。
オーストラリア 州によって対応が異なり、移動制限等が続いている州がある一方で、長期間新規感染者が出ていない州では大学キャンパスがオープンし、対面授業が開始されているケースもあります。国外からの留学生はオンライン受講が継続しています(対面授業同様に正規の留学単位として認められる)。オーストラリア連邦政府、州・準州政府では、少人数の留学生を段階的にオーストラリアに渡航させ、現地での留学を再開させる試験的取り組み(パイロット・プログラム)を検討中ですが、当面は現状のままの対応が続くとみられます。
カナダ 州によって対応は異なりますが、多くの州で対面授業が再開される予定です。完全なキャンパスでの授業を予定している場合と、オンラインとの併用が行われる場合があります。
ニュージーランド 現在、国内の学校は通常通り対面授業を行っていますが、留学生に対しては各大学でオンラインプログラムを実施しています。 ュージーランド政府は留学生の段階的な帰国を計画していますが、当面は秋学期以降も同様の対応が続く予定となっています。
イギリス 世界に先駆けてワクチンが普及しており、多くの国民がワクチン接種を終えているため、イギリス政府は2021年2月にCovid-19ロードマップを発表。秋以降、イギリスの大学は通常通りの学習に戻ると予想してUCAS出願を通常通り受け付けました。 多くのイギリスの大学は秋からキャンパスを再開し、対面とオンラインの授業を組み合わせた「ブレンド型学習」を導入する予定です。

大学ごとのオンライン・ハイブリッドの取り組み例

国や地域、大学によって、新型コロナウイルスへの対応は様々で、それぞれに工夫した教育が提供されています。以下に、各大学で提供されている授業スタイルの例をご紹介します。

<アメリカ>

スタンフォード大学(Stanford University)

スタンフォード大学は、大学運営の段階的回復を実施しています。現在は3段階の回復プロセスのステージ3(最終段階)にあり、州が定めた最低要件は満たす必要があるものの、大学での活動は大部分が許可されています。
2020-2021年の冬学期(Winter Quarter)は、ほぼすべてのコースがリモートでの授業となりました。2021年の夏学期(summer quarter)のクラスもほとんどがリモートで提供されており、対面授業は限られています。大学は「Teaching Commons」というサイトを立ち上げ、教員・スタッフ向けにリモートでの授業に役立つ様々なリソースを提供し、オンライン指導を成功させる努力を続けています。

公衆衛生状態が安定・改善していることから、夏学期の大学内の住居は1年生、2年生、大学院生、承認された特別な事情のある学部生に提供されています。キャンパス内に居住している学生を含め、頻繁に登校する学生は週に2回(具体的には3日ごと)、Color Genomicsを使用したキャンパス内COVID-19検査を受ける必要があります(ワクチンの接種が完了すると検査は免除)。

2021年秋学期より、従来の3学期制に戻し、主に対面での授業を行うことが計画されています。秋学期にキャンパスに入るすべての学生・教員等は、ワクチン接種を完了することが義務付けられます。

<オーストラリア>

メルボルン大学(The University of Melbourne)

メルボルン大学では現在、ブレンディッドラーニング(オンライン教育と対面教育の組み合わせ)が提供されています。2021年の教育は下記の3つのデリバリーモードで行われています。

●campus-based(基本的な対面活動)
:オンラインでは提供できないキャンパスベースまたは対面の活動が必要なモードです。キャンパスまたは指定の場所に出席できる学生のみ科目登録できます。

●dual-delivery(国内学生向けにはオンラインと対面の併用、国外学生向けにはオンラインのみ)
:キャンパスでの学習に参加できる学生にはキャンパスベースのアクティビティとオンラインアクティビティが組み合わせて提供され、キャンパスでの学習に参加できない学生には完全にオンラインで提供される、2つのモードが用意されています。すべての学生が科目登録できます。

●online(完全オンライン)
:キャンパスベースまたは対面の活動はなく、完全にオンラインで提供されるモードです。すべての学生が科目登録できます。

図書館や学習スペース、スポーツ施設、レストランなどはオープンしているため、可能であればキャンパスに戻ってクラスに参加することが推奨されていますが、キャンパスに戻れない場合はdual-delivery(デュアルデリバリー)モードまたはonline(オンライン)モードのいずれかで、状況に合わせた受講が可能です。学内のほとんどすべてのサポートサービスは、オンラインで利用できます。

■評価
2021年のほとんどの評価は、キャンパスベースの科目を除いて、オンラインのままになります。

※ビクトリア州では、7月27日(火)23:59よりCovid-19による制限の緩和が発表されました。同大学は、今後2週間で、リモートでは実施できない専門的かつ実践的な教育を復活させると発表しています。
※2021年セメスター2以降の科目の配信方法は決定されていませんが、科目の約90%をキャンパスから配信することが計画されています。その多くはdual-deliveryモードとなる予定です。

<カナダ>

トロント大学(University of Toronto)

2020-2021年の秋・冬学期は、大学のあるオンタリオ州の公衆衛生ガイドラインに従って、対面及びオンラインで授業が提供されました。学生は自分に最適なコース形式で登録することを選択できるように。対面クラスの定員は教員・アシスタントを含めて50人に制限されましたが、ほぼすべてのコースにオンラインオプションが設定されたため、トロントにいなくても受講することが可能になりました。オンラインの場合も、特定のコース、またはコースの一部(ラボ、チュートリアル、セミナーなど)はリアルタイム(同期)で開催されています。
オンライン授業の提供にあたって、トロント大学ではオンラインアカデミーを設立。教授、スタッフ、および関連する専門家のグループが学部等と協力してオンライン教育の最適な方法と専門知識を共有し、対面授業からオンライン環境(ラボ、フィールド、スタジオの一部のコースを含む)への移行が適切に行われるよう、サポートしています。

■評価
コースにオンラインセクションと対面セクションの両方がある場合、教員は両方のセクションの最終評価の方法とタイプを決定。対面セクションの学生は対面またはオンラインの評価、オンラインセクションの学生はオンライン評価のみが行われます。

※公衆衛生上の制限により、2021年の夏のセッションではほぼすべてのコース・授業がリモートで行われています(学部長室が直接授業を許可したコースを除く)。
※2021年秋学期より、キャンパスでの対面学習や各種活動、サポートの再開を目指しています。教職員や学生はキャンパスに戻り、特定の安全対策を講じてキャンパスでの研究を行うことができるようになる予定です。

<ニュージーランド>

オークランド大学(University of Auckland)

オークランド大学では、ニュージーランド国外でオンラインで学習している留学生のみを対象としてトータルなサポートサービスを提供する「Auckland Advantage™(オークランドアドバンテージ)」を展開しています。提供されているのは学習サポート、キャリアサポート、住宅(キャンパスでの生活への移行)サポートの3つ。
学習サポートによるサービスでは、海外からオンラインで勉強している場合、学生サービス料金は半額に。学部レベル(優等学位を含む)で120ポイントを完了すると1コースが無料になります。

さらに、オンライン学習をサポートする存在として、StudyBuddyが用意されています。これは国外にいる留学生だけが利用できるもので、実在の学生がCanvas(eラーニングシステム)のアクセス方法や時間割の管理まで、電話、電子メール、ズームなどのさまざまなチャネルを通じてサポートしてくれます。
また、大学の公式サイトでは、現在オークランド大学で学んでいる留学生とチャット形式で会話し、生活の様子などを聞くことができるサービスも提供されています。

<イギリス>

ケンブリッジ大学(University of Cambridge)

5月17日(月)からすべての大学生が対面教育に戻ることを許可するというイギリス政府の発表を受け、大学では小グループでの対面授業が可能になっています。対面試験が実施されましたが、キャンパスに戻れない学生に対してはオンライン試験が行われました。
秋学期以降も、対面での授業が提供される予定です。

また同大学はイギリス内務省の方針に従い、海外からの留学生に対して学習コース中の最大4か月の休暇期間中も、例外的にビザのスポンサーシップを継続することを表明しています。

日本人留学生の傾向

新型コロナウイルス感染拡大当初は、各国で大学が閉鎖されるなどの方針がとられたため、留学生はいったん帰国し、日本からオンライン授業を受講するスタイルが一般的でした。しかしながら現在では、渡航が可能になっている国であれば再渡航する学生が増えてきています。2021年前半から、仮にキャンパスでの授業が再開されていなかったり、対面とオンラインのハイブリッド型であるとしても、海外に「行ってキャンパス再開を待つ」「行ってオンライン授業を受ける」スタイルが広まりつつあります。日本に留まるより、現地に行く意義があると感じて渡航に踏み切る人が多いようです。現時点であれば、秋学期に備えて夏の間に渡航し、生活を軌道に乗せながら授業再開を待つ形でしょう。

基本的に、留学目的で渡航する際は、「ワクチンを接種してから」が基本(ワクチン接種が可能な年齢である場合)です。日本では、ワクチン接種を理由に留学を断念し、人生における貴重なチャンスを失うことがないように、留学予定者へのワクチンの優先接種を行う仕組みができています。これは文部科学省主導で行われているもので、今秋(令和3年10月末)までに渡航する必要があり、かつ渡航先でワクチン接種が必要とされている18歳以上の留学予定者に対して、大学拠点接種の枠組みの中で接種を受けられるよう支援しているもの。希望者は、下記ページを参照の上、自分で申し込む必要があります。

【参考ページ】:留学予定者ワクチン接種支援事業について

ワクチン接種完了後、文部科学省により「接種記録保有証明(英語)」が発行されます(※1)。

ワクチンは2回接種する必要がありますが、渡航までに2回の接種が難しければ、渡航してからワクチンを打つことも考えられます。留学生へのワクチン接種が無料の国・地域もあります。渡航後のワクチン接種で入国・入学が認められるか、留学先にあらかじめしっかりと確認しておきましょう。

※1 各市町村(特別区を含む。)において、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の事実を公的に証明する接種証明書が交付されることになり、7月26日(月)から申請受付が始まっています。文部科学省が発行する接種記録保有証明(英語)は、今秋の渡航までの暫定的な措置として、臨時で発行するものです。今後、 英語でのワクチン接種証明が必要な場合は各自治体の発行する接種証明書の申請を行うことが基本となり、その入手が間に合わない等の事情があれば文部科学省が発行する接種記録保有証明(英語)を活用することを推奨しています。


新型コロナウイルスの感染流行により、海外留学を取り巻く状況も、刻一刻と変わってきたこの1年半。世界的にはようやく少し落ち着きを見せてはきたものの、状況はまだイレギュラーで、特別な対応が必要になることもあります。これまで通りの留学スタイルを取り戻すのには、まだ少し時間がかかるところもあるかもしれません。

ただ、自分の将来を見据え、思い描いてきた理想の未来図を考えた時、コロナ禍だからと言ってすべてをあきらめるのは非常にもったいないと思いませんか?自分の人生に対して後悔しないよう、「留学」という選択肢を残しつつ、今だからこそできるベストな選択をしたいものです。「どうしたらいいかわからない」「今できるベストな選択を教えてほしい」…そんなときはぜひ、わたしたちを頼ってください!

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※この記事でご紹介している内容は2021年8月6日現在の情報に基づいています。

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