「国際性」が高い国内大はどこ?コロナ禍で学びは変わった?-THE世界大学ランキング日本版2021より-
去る2021年3月、イギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education(THE:ティー・エイチ・イー)」が「THE世界大学ランキング日本版2021」をリリースしました。世界的に最も権威のある大学格付け機関の1つと言われるTHEが、日本のベネッセグループと共同で調査・発表しているこのランキングも今年で5回目。今回は、この発表の中からとくにグローバルな進路を目指す方にとっては気になる「国際性」指標に注目します。「国際性」で上位の日本の大学はどんな取り組みをしているのか? 新型コロナによってどんな影響があったのか? …など、「国際性」について高い評価を受ける大学の今を取り上げます。
「THE世界大学ランキング日本版」とは?
「THE世界大学ランキング日本版」は、2017年からTHEと日本のベネッセグループが共同で調査・作成し、発表している、”日本の大学のみを対象としたランキング”です。2021年版では278校がランキング対象とされています。
2017年から発表が始まった比較的新しいこのランキングの最も大きな特徴は、「評価基準」(ランキング指標)にあります。世界中の大学を対象とした「THE世界大学ランキング」や、アジアを対象とした「THEアジア大学ランキング」は、『大学院の研究力』を重視し、「教育の質・学習環境(教育力)」「学生と教員の国際性」「産業界からの収入」「研究の質(研究力)」「論文被引用数(研究の影響力)」の5分野13指標で評価されます。
それに対し日本版では『学部の教育力』が重視されたランキング指標を採用。大学院よりも学部教育に焦点を当て、日本の教育事情に即した独自の指標で大学の「教育力」を測る設計になっています。偏差値(入学難易度)だけではない「大学の中身」を知るための情報を提供し、高校生に大学選びの新たな基準として活用してもらうことを狙いとしています。
【参考ページ】:総合ランキング|THE世界大学ランキング日本版
国際性ランキングの考え方
「THE世界大学ランキング日本版」の指標は、「教育リソース」「教育充実度」「教育成果」「国際性」という4分野16項目で構成されています。
- ●「教育リソース」: 5項目:どれだけ充実した教育が行われている可能性があるかを表す(全体の34%)
- ●「教育充実度」: 5項目:どれだけ教育への期待が実現されているかを表す(全体の30%)
- ●「教育成果」: 2項目:どれだけ卒業生が活躍しているかを表す(全体の16%)
- ●「国際性」: 2項目:どれだけ国際的な教育環境になっているかを表す(全体の20%)
上記のうち「国際性」分野の指標項目は下記の通りです。
<「国際性」分野の指標>
- ・外国人学生比率 5%
- ・外国人教員比率 5%
- ・日本人学生の留学比率 5%
- ・外国語で行われている講座の比率 5%
※大学から提供されたデータをもとに、項目ごとにスコア化され、評価されます。
国際性ランキングTOP20
2021年版の「国際性」分野ランキングの上位20校を見ていきましょう。
順位 | 大学名 | 所在地 | 設置区分 | 「国際性」スコア |
---|---|---|---|---|
1 | 国際教養大学 | 秋田県 | 公立 | 99.9 |
2 | 立命館アジア太平洋大学 | 大分県 | 私立 | 99.7 |
3 | 国際基督教大学 | 東京都 | 私立 | 98.0 |
4 | 大阪女学院大学 | 大阪府 | 私立 | 93.9 |
5 | 関西外国語大学 | 大阪府 | 私立 | 92.6 |
6 | 梅光学院大学 | 山口県 | 私立 | 91.8 |
7 | 京都外国語大学 | 京都府 | 私立 | 91.5 |
8 | 宮崎国際大学 | 宮崎県 | 私立 | 91.4 |
9 | 創価大学 | 東京都 | 私立 | 91.3 |
=10 | 福岡女子大学 | 福岡県 | 公立 | 90.2 |
=10 | 神戸市外国語大学 | 兵庫県 | 公立 | 90.2 |
12 | 上智大学 | 東京都 | 私立 | 90.1 |
13 | 東京国際大学 | 埼玉県 | 私立 | 88.1 |
14 | 東京外国語大学 | 東京都 | 国立 | 87.7 |
15 | 東北大学 | 宮城県 | 国立 | 86.8 |
16 | 名古屋商科大学 | 愛知県 | 私立 | 85.9 |
17 | 名古屋外国語大学 | 愛知県 | 私立 | 85.5 |
18 | 麗澤大学 | 千葉県 | 私立 | 85.4 |
19 | 早稲田大学 | 東京都 | 私立 | 84.0 |
20 | 一橋大学 | 東京都 | 国立 | 83.4 |
※「=」は同順位を表す
昨年度からの順位の変動
「国際性」分野でトップとなったのは、秋田県にある国際教養大学。以下、2位に立命館アジア太平洋大学、国際基督教大学が3位、大阪女学院大学が4位と続きます。上位4校は、前年と変わらない顔ぶれとなりました。
トップ20の大学は、公立が3校、国立が2校で、残りの15校が私立。トップ50までで見ても31校を私立大学が占める結果となっており、この分野では私立大学の強さが目を引きます。
2020年版からランクアップした注目すべき私立大学としては、20位までだと前年からスコアを9.4ポイント伸ばした関西外国語大学(10位→5位)、同16.8ポイント増の宮崎国際大学(19位タイ→8位)が挙げられます。50位までに目を向けると、共愛学園前橋国際大学(34位タイ→31位)、立教大学(53位→32位)、立命館大学(43位→33位タイ)、拓殖大学(56位→43位タイ)などがスコア・ランクのアップを果たしています。
特筆すべきは8位の宮崎国際大学。2020年から大きくスコアを伸ばした同大学は、英語教育とリベラルアーツを掲げる学生数約400人の小規模大学です。各大学の強み・特徴を評価し、大学の多様性に光を当てることを目指す「THE世界大学ランキング日本版」の象徴的存在と言えるかもしれません。
コロナ禍で国際的な学びに変化はあった?
2020年以降、世界中の教育界が新型コロナウイルスの感染拡大によって大きな影響を受ける中、日本の大学も授業やキャンパスでの生活において様々な対応を迫られてきました。現在も通常とは異なる、工夫された教育を提供している学校が多くあります。
「国際性」分野で高い評価を受ける大学は、海外との繋がりを重視するグローバルな環境が魅力。「国際性」TOP3の大学はコロナ禍でどんな対応をしているのか、「留学」「授業スタイル」の2点に焦点をあてて動向をチェックしてみましょう。
「国際性」1位:国際教養大学
<留学>
- ◆2020年秋学期に予定されていた留学プログラムはすべて中止されました。
- ◆2021年春学期に留学を予定していた学生は、下記の留学の代替施策(Study Abroad Alternatives)のいずれかを完了すると、卒業要件である1年間の留学が免除されます。
- ・2021年春学期のバーチャル留学
- ・留学の代替となる独自の研究
- ※状況が好転して留学が可能になった場合、上記のいずれかを修了した学生には1学期の留学機会が提供されます。(1年間の留学を希望する場合は、2021年秋学期の留学申請に変更することも可能)
<授業スタイル>
2021年度春学期の講義形態は、「対面授業」「パラレル授業(対面とオンライン授業の並走)」「オンライン授業」の3パターンが、各科目の履修状況等に合わせて柔軟に提供されています。
※1年次は全寮制が義務付けられていますが、2021年度の新入生で健康上の理由等からキャンパスでの居住に不安を感じる場合は、個別相談に応じています。
※大学施設(図書館、カフェテリア、カレッジカフェ等)の一般の方の利用は制限されており、視察、見学、交流の受入れは中止されています。
「国際性」2位:立命館アジア太平洋大学
<留学>
ダブル・ディグリープログラムや海外交換留学プログラムなどの実施が予定されていますが、留学についてのアカデミック・オフィスの担当者との相談は現在Zoomで行われています。
<授業スタイル>
2021年度秋セメスターの授業形能は、ハイブリッド型・対面型・オンライン型で行われます。 ※現段階では、2022 年度は一部の授業を除いて全て対面での実施が想定されています。
「国際性」3位:国際基督教大学
<留学>
大学が定める諸条件すべてが整った場合には、海外渡航しての交換/海外留学プログラムへの参加が認められます。
■主な条件
- ≪派遣先国の条件≫
- ●外務省危険レベル・感染症危険レベルが共に2(不要不急の渡航は止めてください。)以下である
- ●派遣先国が、必要な学生ビザを発行している
- ●入国にあたっての自己隔離等、派遣先国政府の定める措置や条件が明確に示されており、その措置を取れる環境が確保されている
- ≪派遣先大学の条件≫
- ●派遣先大学から渡航して留学することについて許可が下りている
- ●学生と教職員のキャンパスへの入構が許可されている
- ●学生が留学する当該学期に、十分な数の対面式授業が開講されており、海外渡航する正当性が確保されている
- ●派遣先大学の感染予防対策への対応として、ICUが十分と考える基準を満たしている
- ●学生の安全な滞在先住居が渡航前に確保されている
- ≪学生の条件≫
- ●留学期間が留学先大学の1学期を満たしている、もしくはそれ以上である
- ●心身共に健康である
- ●保証人から渡航することについて同意がとれている
<授業スタイル>
2021年秋学期の授業形態は、基本的に「オンライン式授業」「ミックス式授業」のいずれかとなります。
*ミックス式授業:オンライン授業と対面授業を組み合わせた授業。キャンパスに来ることができない学生がオンラインで授業に参加できることを前提とし、オンラインのみの授業とハイブリッド式の授業の割合を自由に決定できる。
◆小・中規模授業:
一部の例外を除き、予想される受講生数が 60 名以下の授業は、秋学期を通してオンライ ン式、ミックス式のいずれかでの実施を担当教員が決定。
◆大規模授業:
予想される受講生が 61 名以上の授業は、秋学期を通してオンライン授業。
※教室の収容定員:
原則として、1つの教室に入ることが許される受講者数は、収容定員の半分とする。最も大きな教室(定員が140 名以上)の場合、上限を定員の約40%とする。
※下記2タイプの授業にかぎり、少数ではあるが対面のみで開講する授業がある(オンラインで受講不可)。
・一部の実験授業、フィールドワークの授業、実習授業、体育の実技授業
・その他対面での開講に適した科目
日本の教育事情に合った独自の評価指標を採用したことで、「学部」の「教育力」にフォーカスしていることが大きな特徴のTHE日本版ランキングは、大学院レベルの研究ではなく、学部に焦点を当てているからこそ、それぞれの大学の「価値」を考える新たな手がかりとなります。
これまで大学選びに利用するデータといえば、偏差値以外にはほとんどなかったのが日本の実情ですが、偏差値は入学前の学力を基準にした、大学に入学するための情報。対してこの日本版ランキングの「教育力」に特化したデータは、入学後の4年間(または6年間)でどれだけ成長できるかを知る目安として考えることができます。高校生の皆さんが大学選びをする際に活用できる、大きな情報源になりつつあると言えるでしょう。
中でも、英語や海外での学びに興味を持っている方であれば、コロナ禍の今は国内で「国際性」のデータをしっかり吟味し、国際性の高い大学で学ぶことも選択肢の1つになりうるのでは?ランキング指標のスコアはもちろんのこと、項目ごとの詳細数値にも大学の特徴が表れるているので必見です。将来的な海外留学も視野に入れ、国内の国際系大学への進学を考える際にも非常に役立つはずですので、ぜひチェックしてみてください。
ベネッセでは、グローバルな進路を実現する多様な学習プログラムをご用意しています。丁寧な個別カウンセリングをもとに、あなたの希望に合わせた、「あなただけの海外留学・進学」をプロの知識と経験でしっかりサポートします。
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※この記事でご紹介している内容は2021年7月30日現在の情報に基づいています。