【’21/4/9更新】アメリカの大学入試に必須のSAT®/ACTの成績は、コロナ禍でどう反映される?
新型コロナウイルスのパンデミックによる影響が、いまだ続いている海外大入試。アメリカでは、2020年に学校の休校・SAT®/ACTなどの標準化テストの中止があったことなどから、2020ー2021年の出願要件としてSAT®やACTのスコア提出を必須としない大学が増加しました。この対応は2021年秋以降も続く傾向がありますが、2020年の入試の状況から見えてきたこともあります。今回は、アメリカの大学入試について、SAT®/ACTに関する話題を中心に、最新情報をお伝えします。
2020-2021 アメリカ大学入試におけるSAT®/ACTの状況
これまで、アメリカの大学に出願する際は、テスト要件としてSAT®(ScholasticAptitude Test)またはACT(American College Testing)という標準化テストのスコア提出が指定されていることが一般的でした。しかし2020年3月以降、新型コロナウイルスの感染拡大によりアメリカ全土で高校の休校が相次ぎ、SAT®/ACTも次々と中止に。100万人以上ともいわれる多くの学生が6か月近くにわたってSAT®やACTを受験できない状況に陥り、その後の見通しも不透明だったことなどから、アメリカの多くの大学で出願時のSAT®/ACTに関する通常のテスト要件を停止する動きが広がっていきました。
結果として、2020-2021年の大学入試では、ハーバード大学をはじめとしたすべてのアイビーリーグの大学やスタンフォード大学、マサチューセッツ工科大学などのトップ校を含む、多数の総合大学・リベラルアーツカレッジが、出願時のSAT®またはACTのスコア提出を「必須としない(提出の義務はない)」とするテストオプショナルの方針(*)を採用。最終的に、全米の4年制大学の3分の2以上が2020年秋入学の出願要件でSAT®/ACTをオプションとしました。
* テストオプショナルポリシーと呼ばれます。
SAT®/ACTのスコア提出が不要⇒アメリカ名門大学の受験率はアップ傾向!
2020年のアメリカの大学において大きなトピックスとして話題になったのは、一流と言われる私立大学や州立大学で出願者が急増したこと。たとえば私立大学でいえば、アイビーリーグに所属するハーバード大学への出願数は43%増加、ペンシルベニア大学への出願数は30%以上増加。世界屈指の評価を得ているマサチューセッツ工科大学にいたっては65%強も増加しました。もともと入学に関しては狭き門とされる私立名門大学ですが、今年度の合格率は一桁台前半でさらに低くなっています。
また州立大学では、カリフォルニア州全土に10の大学を持つアメリカ最大規模のカリフォルニア大学群で、昨年より18%多い25万件の出願がありました。バージニア大学の出願は17%増加、ジョージア大学への出願は40%増加するなど、こちらも名門と呼ばれる州立大学は軒並み出願数を増やしています。
この理由として挙げられているのが、SAT®またはACTといった標準化テストが出願時に提出必須ではなくなったこと。テスト要件がなくなったことで、従来であればテストスコアが足りずに出願ができなかった層が、名門大学への入学を目指して果敢にチャレンジしたと見られています。出願者数の急増にアドミッションオフィスが対応しきれず、通常より合否の決定が1-2週間遅れた大学もあったようです。
テストオプショナルの名門大学では、提出されたSAT®/ACTは合否判定に影響あり
アメリカの大学入試において、出願時にSAT®/ACTのスコア提出を必須としないという現在の流れは、引き続き2021年度も継続される傾向が強い見込みとなっています。
ただし、「SAT®/ACTのスコアを提出しなくても出願できる」大学は、詳しく言うと「テストブラインド」と「テストオプショナル」という2つのタイプに大きく分かれており、実はこの2タイプはそれぞれSAT®/ACTへの対応が大きく違うため、注意が必要です。
テストブラインドとは、SAT®やACTのスコアを合否安定の際にまったく考慮しない方針のこと。National Center for Fair & Open Testing (FairTest)によると、2021年2月の時点でテストブラインドを採用している大学は、カリフォルニア工科大学やカリフォルニア大学群、リードカレッジなど69大学です。この方針を導入した大学では、出願の際にSAT®/ACTのスコアは一切受け付けられません。
他方、テストオプショナルとは、前述の通りSAT®/ACTのスコア提出を「必須としない」だけで、学生はテストスコアを出すか出さないか選択することができます。もちろんテストスコアを提出しなくても出願はできるわけですが、学生が任意で提出したスコアは合否判定に反映される傾向があること、とくに名門とされるTOP大でその傾向が強いことが2021年秋入学の入試結果から見えてきています。たとえばペンシルベニア大学では早期入学で合格した学生の4人に3人がテストスコアを提出、ジョージタウン大学では93%もの学生がスコア提出をしたと報告されています。とはいえその一方で、早期入学の合格者の中でテストスコアを提出していない学生が71%を占めるボストン大学や、半数以上のタフツ大学のような大学もあり、SAT®/ACTスコアの扱い方は大学によって異なっているので一概には言い切れないのも事実。ただ、優秀な学生が多数集まり合格へのハードルが高いトップレベルの大学ほど、入学した学生がその後の大学の勉強で苦労しないようにという配慮もあって、ある程度以上の学力があることを確認できるSAT®/ACTのスコアを提出した学生に高評価を与える傾向があるのは間違いないようです。
National Center for Fair & Open Testing (FairTest)によると、2022年秋入学の入試でも、すでに1370以上の学校(全米の4年制大学の半分以上)でテストオプショナルの方針を取ることが発表されています。オプションではあっても、名門大学ではSAT®/ACTのハイスコア提出が合否判定で有利に働く可能性が、今後も高いと考えられます。
留学生にとってのSAT®/ACT、コロナ禍での考え方や対策は?
学びたいアメリカの大学がテストオプショナルだった場合、出願時にSAT®/ACTのスコアを提出すべきかどうか、迷う方も多いかもしれません。ネイティブでない学生にとってSAT®/ACTはかなり難しく、対策に苦労する方も多いので、「提出しなくていいなんてラッキー」と思ってしまう方もけっこういるのではないでしょうか?
しかしながら、見方を変えてみると、SAT®/ACTは留学生にとっては武器にもなりうるテストです。アメリカとは文化も環境が違う日本の高校では、成績の付け方や課外活動の機会などがどうしても異なってしまうため、現地の学生と同じ土俵で競い合って評価されるかどうかはなかなか見通せないところがあります。ですがSAT®/ACTであれば、どこで受けても条件は同じですし、結果も平等に入試で参考にしてもらえます。ハイスコアが獲得できれば合否判定で高く評価されることが期待できますし、大学入学後の授業のことを考えてもSAT®/ACT対策で身につけたことは必ず生きてくるので、無駄にはなることは絶対にありません。アメリカの大学への進学を目指すなら、ぜひSAT®もしくはACTを受検してみることをおすすめします。
仮にもし、頑張ったけれど、どうしてもSAT®/ACTの点数がふるわないという状況に陥っても、心配はいりません。そんな時は逆に、テストオプショナルを利用して多様なレベルの大学に挑戦できる!受験のチャンスが増える!と考え方を変えればいいのです。SAT®/ACTのスコアを提出しなくてもきちんと合格している学生はいるのですから、「都合が良すぎる…」なんてことはまったくありません。あきらめず、謙虚になりすぎず、前向きに考えることが大切です。
海外大入試もコロナ禍での特殊な状況はしばらく続くことが想定されますが、現状の入試システムや出願要件を自分に合った形で利用して、自分にとって一番良い未来を掴みとっていきましょう。
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アメリカの大学入試で、まだまだ重要とされるSAT®。
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※この記事でご紹介している内容は2021年4月9日現在の情報に基づいています。