【2/19更新 新型コロナウイルス情報】海外大入試は何が変わる?どう対策する?
世界的に、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染終息の兆しがなかなか見えてこない今、海外大進学を考えている方の中には、何を対策しておくべきか、迷っている方もいるのではないでしょうか?昨年、地球規模で広がったコロナ禍は、世界の高等教育のあり方さえも少しずつ変化させてしまいました。入試システムについても変更を余儀なくされた大学は世界中で数多くあります。海外大への出願に際して必要とされるテストも、試験日程や受験方法などに多大な影響が出ました。コロナパンデミックの始まりから約1年、ここで再度、海外大入試に関する最新の動向をチェックして、「アフターコロナ」に備えて、今できることをしておきましょう。
入試要件を変更した海外大学
新型コロナウイルスによるパンデミックの影響により、すでに多くの海外大学で2021年秋の入学に必要な入試要件の変更が発表されています。アメリカでは、高校の休校やSAT®/ACTなどの標準化テストの中止により、2021年度の出願要件としてSAT®やACTのスコア提出を必須としない大学が増加しています。
また、入学手続きのスケジュールにも影響が出ました。通常、アメリカやイギリスでは、1月中旬ぐらいには次年度の秋入学の願書の提出がほぼ締め切られ、4月上旬ごろまでには合否通知が届きます。どちらの国も、5月初めごろが進学先決定(大学からのオファーに対して入学希望を伝える)のデッドラインとなります。
2020年秋入学に関しては、アメリカでは多くの大学がキャンパス閉鎖などの対応を取ったこともあり、デッドラインの延長を認めたり、受験生の事情に応じて柔軟な対応を取ったりするなどの措置が講じられました。
さらに、ギャップイヤー(入学延期)を認める、または推奨した大学も多数あります。
SAT®・ACTに関する入試要件を変更した大学(アメリカ)
2020-2021年の大学入試では、全米の4年制大学の3分の2以上が、出願時のSAT®またはACTのスコア提出を「必須としない(提出の義務はない)」とするテストオプショナルの方針(*)を発表しています。その中にはハーバード大学をはじめとしたすべてのアイビーリーグの大学やスタンフォード大学、カリフォルニア工科大学、マサチューセッツ工科大学などのトップ校を含む、多数の総合大学・リベラルアーツカレッジが含まれています。
大学の多くはこのテストオプショナルの方針を「一時的な措置」としていますが、2021年秋以降の入学サイクルでもSAT®/ACTをオプションのままにすることを検討している学校も増えてきています。
*テストオプショナルポリシーと呼ばれます。
<2021年度入試のテストオプショナル例(概要)>
◆ハーバード大学(Harvard University)〔私立・総合大学〕
SAT®/ACTおよびSAT Subject Tests™のスコアを必要としない。ただし、スコア提出はオプションのため、SAT®またはACTを提出することも可能。
◆イェール大学(Yale University)〔私立・総合大学〕
SAT®またはACTのスコアを提出するという要件を一時的に停止。SAT Subject Tests™も考慮されない。
※ 2022年秋以降に出願する予定の学生は、通常通りSAT®/ACTのスコア提出が課される予定。
◆カリフォルニア大学群(University of California system)〔公立・総合大学〕
2021年秋/2022年秋の入学者の選考では、SAT®/ACTのスコア提出は選択制(スコア提出をしなくても出願可能)。
※2023年秋/2024年秋の入学者の選考では「テストブラインド」が採用され、審査にテストスコアが考慮されなくなる。
◆スワースモア大学(Swarthmore College)〔私立・リベラルアーツカレッジ〕
2020–21年および2021-22年の入学サイクルの2年間、SAT®/ACTのテストスコアを提出する義務を一時停止。
※2023年秋入学者の選考に際して、再度検討される。
◆ウィリアムズ大学(Williams College)〔私立・リベラルアーツカレッジ〕
SAT®およびACTのスコア提出をオプションとし、受験生が自ら選択できる。
入試のテスト要件を変更する大学が多くなっているとはいえ、大学の対応は公立・私立問わず様々。SAT®/ACTがオプションとはいっても、合否判定においてまったくスコアを見ない大学から、スコアが提出された場合はそれについての評価も加味する大学など、大学ごとにSAT®/ACTへの対応ポリシーにはそれぞれ若干の違いがあります。また、入試要件を変更している大学も、2022年以降の入試がどうなっていくかは不透明な状況です。 現時点で、アメリカ、イギリスなどの大学では、2021年秋入学の願書提出はほぼ締め切られていますが、2022年春~秋以降にメリカを含む海外大学への出願を考えている方は、今後もこまめに大学の公式サイト等をチェックし、各大学の入試方針や出願要件がどうなっていくか最新情報の収集に努める必要があります。ただ、テストオプショナルなどを含む入試の動きを注意深くウォッチしつつ、SAT®/ACTの対策はしっかりと続けていったほうがよいでしょう。大学によってはSAT®/ACTが入試のテスト要件として復活する可能性も十分にありますし、出願自体には必要なくても、奨学金を獲得する要件としてSAT®/ACTが求められる場合もあります。
さらに要注意ポイントとしては、入試要件の変更がある場合、合否判定における各種の提出書類の重視傾向(採点ポリシー)が各大学で変わってくる可能性があることが挙げられます。現状で、明確に発表されているケースはほとんどありませんが、とくにエッセイの重要度などは増すことが考えられますので注意が必要です。また、学力を確認するためのSAT®やACTが入試要件から外れるのであれば、高校の成績がより重視されるようになることも考えられますので、普段からの学習をしっかり積み重ねていくことも大切です。SAT®/ACTのスコアを提出しないのであれば、その対策に費やすはずだった時間や労力は別の対策にあてることができるようになりますし、SAT®/ACTでもし高得点がとれるのであればオプションであってもスコア提出をしたほうが合否判定で有利な材料となることも考えられます。大学の出願要件や自身の状況にあわせて、どこに力を入れて対策をしていくべきかパワーバランスをしっかり考えていきましょう。
【参考記事】:多くのアメリカの大学で、2021年度入試でSAT®/ACT提出が「オプション」に!
海外大学への出願プロセスで必要なテストの実施状況
2020年は海外大学への出願に必要な各種テストの運営・実施状況にも大きな影響が。日本で実施されているほとんどのテストが、テストセンターや会場等の閉鎖などにより一時中断されました。
現在ではほぼすべてが会場でのテスト受験を再開していますが、世界の新型コロナウイルスの感染状況により、今後も急な変更がある可能性も否めません。各国政府や各機関の公式サイト等での発信をこまめにチェックし、最新情報のキャッチアップをしっかり行うことが大切です。
TOEFL®テスト・IELTSの現状
海外大への出願に際してはどの国でもほぼ必須であり、留学生にとっては非常に重要なTOEFL®テスト、IELTSといった英語テストは、日本をはじめ多くの国でテストセンターの閉鎖により一時中断。オンラインでの受験を可能とするなどの代替策がとられました。現在は、どちらも会場試験が予定通り実施されることになっています。
■TOEFL®テスト■
●TOEFL iBT®テスト(テスト会場での受験)
2021年2月15日現在、日本では新型コロナウイルス感染拡大の影響によって臨時閉鎖中の試験会場はなく、今後も当初設定通りの日程・会場で試験が実施される予定です。
ただし、今後、日本でのTOEFL iBT®テスト会場運営を行っているプロメトリック(株)が必要と判断した試験会場については、臨時閉鎖(試験中止)となる場合があります。受験する際は、プロメトリック(株)のWebページにて試験会場の開催状況に関する最新情報を必ず確認してください。
【参考ページ】:新型コロナウイルス情報:臨時閉鎖会場および対応方針のお知らせ|プロメトリック(株)
●TOEFL iBT® Home Edition
新型コロナウイルス感染防止の対応策として2020年4月から実施されていた「TOEFL iBT®テスト」の自宅受験「TOEFL iBT® Special Home Edition」が、2021年以降も継続して実施されることが発表されています。今後も、受験者自身が「テスト会場受験」か「自宅受験」かを選択できる体制が継続されます。
<TOEFL iBT® Home Editionとは>
通常のTOEFL iBT®テストと同じ内容、フォーマット、画面のテストをProctorU®の試験監督者によるオンライン監視の下、自分のパソコンを使用して自宅で受験する自宅受験テスト。週に4日24時間受験でき、最短で申込完了の翌日に受験することが可能です。スコアは会場での受験と同じくTOEFL iBT®テストの公式スコアとして教育機関などで活用することができます。 ※受験にあたっては使用機器・受験環境の要件を満たす必要があります。
■IELTS■
2021年2月15日現在、当初設定されていた日程・会場で予定通りテストが実施されています。なお、2020年9月よりコンピューターで受験する「Computer-delivered IELTS」(CD IELTS)がスタートしており、こちらも予定通り実施が継続されています。
<Computer-delivered IELTS(CD IELTS)とは>
試験の内容、採点基準、試験時間は、紙と鉛筆で受験する従来のIELTSと全く同じで、成績証明書も従来と同様に利用可能です。このテストの利点は、従来より多くの試験日程が設定されていること、成績証明書の発行が早い(3-5営業日で発行)ことなどが挙げられます。
ACT、SAT®等の現状(アメリカの大学入試関連)
2020年、アメリカでは全国の高校が閉鎖または運営が制限されたため、ACTおよびSAT®は6月まですべての試験がキャンセルになりました。一時はオンラインテストの導入も検討されましたが、2020年秋には会場テストが再開されています。また、College Board®が運営するプログラム・テストではAP(Advanced Placement)プログラムのオンライン化がスタートしており、APテストは在宅で受験できるようになっています。
■ACT■
2021年2月15日現在、アメリカ以外の国で会場実施されるACTについては、国際試験日、国際テストセンターとも当初の設定通り実施される予定となっています。
【参考ページ】:The ACT Test: Non-US Students|ACT
なお、アメリカでは各学校が2020年9月1日から2021年6月30日までの間に自宅または教室でいつでもテストを設定し、柔軟なテスト管理を可能とすることで、2020年から2021年の学年度に定期的なテストを実施できるACT Aspireがスタートしています。
【参考ページ】:ACT Aspire Periodic Assessments|ACT
また、ACTを運営するACT Inc.は、新型コロナウイルスの影響を受ける学生・教師・大学を対象とした、無料のデジタル学習リソースとワークフォースリソースを備えたウェブサイトを立ち上げています。
■SAT®■
2020年6月までのテストが中止となりましたが、8月末から徐々にテスト会場での実施が再開されました。2021年2月15日現在、日本で提供されているSATの試験は当初設定どおり実施される予定となっています。なお、2020年秋からの提供が検討されていた在宅テストは実施されないことが発表されています。
■APテスト■
College Board®が運営するAP(Advanced Placement)テストでは、2020年5月より在宅での受験もできるようになっています。2021年の試験スケジュールでは、5月上旬から6月中旬までの間に、科目ごとに3つの試験日が提供されます。学校でデジタル試験を受けることができない場合は、APコーディネーターが自宅での受験を許可することができます。
<AP(アドバンスト・プレイスメント)プログラムとは>
高校生に大学の入門レベルのカリキュラムや試験を提供するプログラム。College Board®によって運営され、IB(国際バカロレア)と同様に、学習への高い意欲を示す高校生を対象とした高度な教育プログラムとして、世界的に認知されています。主にアメリカとカナダの高校で実施されていますが、ヨーロッパやアジアの一部の高校でも採用されています。
イギリスの大学入試関連
イギリスでは2020年前半にコロナ禍により全土の学校が閉鎖されたことを受け、2020年5、6月に予定されていたGCSE(義務教育期間の修了時に行われる全国統一テスト)とA-level(大学入学資格として認められる統一テスト)がキャンセルとなるなど、大学進学希望者に大きな影響が出ました。2021年については、すでにイギリス教育省(DfE)がGCSE及びASレベル 、Aレベルの2021年の試験のほとんどを、通常より3週間遅れ(※)で実施することを発表しています(2020年10月発表)。,br> 2021年6月7日から7月2日の間に、ほとんどのASレベル、Aレベル及びGCSEの試験を実施。結果についてはASレベル及びAレベルは8月24日に、GCSEは8月27日に判明するため、学生は通常通り翌年の学事年度から新学期を迎えることができるとしています。
※通常は毎年5~6月に行われ、同年8月に結果が公表されます。
▼イギリスの教育制度についてはこちらを参照
【参考記事】:こんなに違う!イギリスとアメリカの大学教育制度を徹底比較
【参考記事】:お国柄が出る? ユニークな学部・学科を持つ大学 ~イギリス編1~
海外の大学は、コロナ禍でも学生が不利益をこうむったり、不平等にならないよう、入試システムを変更するなど、様々な対応をとっています。入試に関する様々な変更が一時的なものではなく、今後も続いていく可能性すらあります。海外渡航が再び制限される国があるなど不安なことも尽きない状況で、いまだ困難な時期ではありますが、このパンデミックをきっかけにこれまでよりも柔軟な受験スタイル、留学生にとっても有利なシステムが実現し、選択肢が増えるようなこともあるかもしれません。
いずれにせよ、海外大の入試で求められる力、入学してから充実した学びを行うための力そのものが変わるわけではない、ということは間違いないでしょう。今は最新の状況を随時チェックしながら、必要な準備・対策を続けていくことが大切です。
※この記事でご紹介している内容は2021年2月19日現在の情報に基づいています。