海外大入試に必要!今日からできる「コミュニケーション力」の磨き方
海外大に進学した先輩たちに「高校生のうちにつけておきたい重要な力は?」と質問すると、必ず返ってくる答えの1つが、英語での「コミュニケーション力」。海外大では、「英語を学ぶ」のではなく、「英語で学ぶ」姿勢のある留学生が求められています。少しぐらい自分の英語力に不安があっても、自分から積極的に英語でコミュニケーションをとっていかなければ、海外では相手にされず、大学での学びにうまく参加できないこともあります。ところが、特に日本からの留学生の場合、日本人の特性としてよく挙げられる「奥ゆかしさ」ゆえに、「自分の気持ちを表現する」ことに慣れていない傾向があり、英語でのコミュニケーションを苦手に感じてしまう人も少なくないようです。それでは留学生活の意義も半減しかねません。
英語でのコミュニケーションのスキルは日常生活のなかで心がけておくだけで少しずつ身につけることができ、入試の結果や入学以降の充実度が確実に変わってきます。今のうちから、普段の生活を通して、英語コミュニケーション力を磨いていきましょう。
海外大入試でも、入学してからも
英語での「コミュニケーション力」は必要!
海外大で学ぼうとするとき、知識・学力や学びへの意欲、豊かな人間性などと同じぐらい重視されるのが、英語での「コミュニケーション力」です。ここで英語コミュニケーション力といっているのは、英語という“言葉”を使って、「自らの言いたいことを伝える力」&「相手の言っていることを受け取る力」のこと。つまり、英語で一方的に伝えたり、理解したりすることではなく、英語を使ってお互いに意思疎通ができる力のことです。
海外大の入試では、学校での成績や英語を含むテストのスコアだけでなく、高校での様々な取り組み(ボランティア活動など)とともに、エッセイや面接などで判断される人間性も評価に大きく影響します。また、大学入学後の授業や日常生活でも、英語コミュニケーション力によって留学の質が大きく左右されることになります。
★例えばこんなところで…
(英語コミュニケーション力が必要となる場面)
<入試>
●アプリケーション等のエッセイテーマ
海外の大学に出願する際のアプリケーション(願書)で課されるエッセイや、TOFEL、IELTSなど入試に必要な英語能力検定試験などでは、「自分の考えを英語で表現する」ことや「英語で自分を魅力的に紹介する」ことが求められます。独りよがりな思いの押し付けではなく、相手にしっかりと伝わるメッセージが必要となります。
≪例≫
・IELTS: 試験官との1対1のインタビュー形であるスピーキングの「パート2-3」では、最大2分でトピックに関するスピーチを行うことが求められ、さらに同トピックについて試験官から1〜2の質問がなされる
・アプリケーションエッセイのテーマ例:
「障害からどのように学びましたか?」「尊敬する人について説明してください」 など
●面接(課される大学あり)
海外大の入試では面接(Interview)が課される大学もあります。面接が必須とされる大学はあまり多くはありませんが、任意ではあるものの面接を受けることが推奨されている大学は意外とあります。海外大入試の面接は、受験者の人間性を見極め、また個性を見出すために行われるもの。大学のキャンパスに行って受けるだけでなく、自分の居住地の近くにいる卒業生と面談するケースや、電話やビデオ通話で行われるものなど、大学によって形式は様々です。一問一答形式のようなものではなく、面接官から聞かれたことについて会話を重ねていくような形が多いようです。きちんと英語で会話のキャッチボールができ、その中で自らのことをしっかりアピールできれば、プラスの評価がもらえます。
<入学後>
●ディスカッション中心の授業
海外大の授業は、先生による講義のみという形式があまりありません。テーマが与えられてクラスでディスカッションをしたり、グループで共同作業をしたり、といった形で授業が進んでいくことがほとんどです。先生やクラスメイトと思ったこと・考えたことを言い合い、お互いに意見のすり合わせをして、方向性を見出していく、という緊密なコミュニケーション作業を英語でほぼ毎日行うことになります。
授業時はもちろん、普段の生活から常にオープンマインドであること、社交的であることは交友関係や広げたり、相手との信頼関係を深めたりすることにポジティブに働き、留学生活を豊かにしてくれます。そのためには、英語だからといって構えてしまわず、英語で積極的に周りと関わっていくこと。先生やクラスメイト、サークルやボランティア活動で出会う人、暮らしている街の人々など、現地の様々な人と積極的に交流していくことで、留学は何倍も充実したものになるはずです。
高校生のうちに、英語コミュニケーション力を伸ばしていくには?
実は、英語テストのスコアが伸びても、英語でコミュニケーションができるようになるとは限らない、というのが難しいところ。もちろん、英語テストで測られる英語力がベースになることは間違いないのですが、コミュニケーションスキルを向上させるにはそれにプラスしていくつかのポイントがあります。TOEFLやIELTSなどの英語能力検定試験のスコアをアップさせるための英語力の習得には継続的な努力が必要なので、そこには費やす力は維持しつつ、日常の生活の中でコミュニケーションのスキルアップにつながるアクションを取り入れていくと、コミュニケーションの能力向上に効果的です。
ここでは、英語コミュニケーション力を伸ばしていく方法として、5つのトレーニングを提案します。
① 英語のシャドーイング
【Listening & Speaking】
「シャドーイング(Shadowing)」とは、英語を聞きながらそれを真似して発音する訓練法のこと。聞いた英語の音声を、すぐに声に出して繰り返すことがポイントです。
題材は、実用的な英語の宝庫である映画やニュース映像などが良いでしょう。映画であれば、日常の会話形式の英語に慣れ、口語的な言葉や表現、リズムなど言語の雰囲気をつかむことができます。お気に入りの映画であれば、飽きずに続けることもできるはずです。ニュースの場合は、アナウンサーやキャスターが使用する標準的な英語に触れることができるのが利点です。
英語の映画やニュースをただ見ているだけでもかなり役に立ちますが、さらに効果を高めるために、気になったフレーズを声に出して、後について繰り返していきましょう。はじめのうちは機械的にでも反復することで、次第に英語が音声として体の中に染み込んでいくような感覚が期待できます。単語ではなく、短くてもフレーズを意識して繰り返すと効果的です。
先輩が行っていた「コミュニケーション力UP対策」とは?
Michiru.I先輩
アメリカ・ウェルズリー大学(Wellesley College)
とにかく慣れるために、英語を使う機会を増やす!
好きな英語動画を字幕なしで視聴することも有効
海外大学受験のプロセスの中で、面接をする学校もありますし、大学説明会で大学側の方とお会いする機会も多いので、コミュニケーション力は大切になってきます。上達にはどうしても慣れが必要になるので、塾の友達や学校で英語を使う機会をとにかく増やすことが効果的です。またTEDxなどの動画や、好きな海外のYouTubeを字幕なしで見聞きしたり、大学が出しているキャンパスライフ動画などを見てテンポを掴んだりすることも楽しいと思います。もし英語で話すこと自体に自信を持っていなくても、まずは挑戦する姿勢が大切です。当たり前ですが、大学は寡黙な生徒より自分から熱意を伝えてくれる生徒を欲しているので、恥ずかしがらずにアピールしてください!
② 好きな本などを「フレーズを意識しながら」読む
【Reading】
コミュニケーションというと、話す力にばかり気を取られがちですが、話すためには当然、基礎となる言語力が必要です。一見、口頭での会話には役立たないと思えるような「読む」という作業は、確実に英語力を向上させます。読んだテキストに知らない単語が出てくれば語彙を増やすのに役立ちますし、長い文章を読むことで単語同士の関係や文法、パッセージで使用される言語の構造などを確認し、慣れていくことができます。
最初は好きな小説や、内容をよく知っている本の英語訳からスタートしてみるのがおすすめ。すでに知っているものや好きなものを読むことで、ストーリーの流れではなく、使われている言葉に集中することができます。慣れてきたら様々なジャンルの本に触れると、語彙も増え、英語の上達につながります。読みながら、フレーズを声に出して読んでみるのもよいでしょう。
また、さらに一歩進んで新聞、雑誌などにも挑戦してみると、時事問題や流行などに関する最新情報が得られ、ネイティブスピーカーとのコミュニケーションの際に、話題にすることができと便利です。
先輩が行っていた「コミュニケーション力UP対策」とは?
Toko.M先輩
アメリカ・ピッツァー大学(Pitzer College)
まずは相手が一番伝えたいことを把握・理解することがカギ
相手への共感もコミュニケーションには大切
コミュニケーションについて、特に初対面の人が相手だと苦労することは私も多々ありますが、今までの経験から言えることは、(会話であれば)相手/(読解であれば)著者が一番何を伝えたいのか、何を目的として発言しているのかを把握することが大切、ということです。例えば女性の権利について80年ほど前に書かれたパッセージを読むとすると、著者が権利を肯定する立場なのか否かをまず理解すること、それを踏まえた上で、各文章の目的を読みとることが鍵だと思います。
また、人とのコミュニケーションにおいては Sympathy (同情)と Empathy (共感)の違いについて知ることも大切だと思います。相手の不遇をかわいそうに思うのが同情、相手の立場に立ち理解しようとするのが共感、と私は捉えています。(Brené Brown on Empathy というYoutube動画が分かりやすく説明しているので、ぜひチェックしてみてください!) 相手をひとりの人として理解するためには、その人の置かれた状況に思いを馳せる=共感することが非常に大切だと感じます。
③ 英語で日記を書く
【Writing】
海外の大学では、授業や宿題で頻繁にエッセイやレポートなどが課されます。英語で、自分の考えや意見を、事実などを交えて論理的に書くという力は、海外の大学ではとても重要なスキルです。まずは身近なところから、英語で「書く」というトレーニングを続けておくと、大学入学後も非常に役立ちます。
英語で書く練習をする際の題材はなんでもいいのですが、おすすめは日記を書くこと。日々起きることは違いますし、感じることも違うので、様々な内容を扱えます。答えがない内容を、自分なりにまとめて論理だて、英語でアウトプットしていく練習をしていくにはピッタリと言えるでしょう。
最初のうちは1日に数行だけでもOK。少しの時間でも集中して書くことは、自らの知識や思考を整理するのにも非常に役立ちます。新しく知った単語を意識して使ってみたり、文法の確認をすることで、英語で表現する力は多彩になっていきます。定期的に、過去のものを読み返してみると、自分の英語力の向上をチェックしていくこともできます。
④ ひとつのテーマについて「なぜ?」→「それはなぜ?」と考える習慣をつける
【思考力を高める】
英語で「会話が続かない」「うまく伝わる文章が書けない」理由は、英語力に課題がある場合ももちろんありますが、そもそものコミュニケーションスキルが不足気味であることに原因があることもよくあります。たとえば「会話が続かない」というときは、その話題に対して話を広げていくことができないということ。もし仮に、あまり興味がない話題だったとしても、それに対して質問してみたり、自分の似たような経験を伝えてみたり、会話を広げる方法はいくつもありますが、そのためにはその場でいろいろな見方や視点をできる柔軟な対応力や思考力などの“スキル”が必要なのです。
だからといって、急にディスカッションの場を設定したり、スピーチする機会を設けたり、といった特別感のあることをする必要はありません。家族や友達との普段の会話の中や、テレビを見ているとき、本を読んでいるときでも、少し意識を変えてみるだけでコミュニケーション上手になれるトレーニングはできます。
まずは、日常の中で気になったことについて、理由や背景を掘り下げて考えていく癖をつけてみましょう。1つのことに対していろいろな角度から見てみることで、違ったテーマと思いがけずリンクすることもあります。思わぬ分野に関心をもったり、知識を増やしたり、結果的に視野を広げることにもつながっていきます。自分の中に話題の引き出しが増えれば、自然と会話も続いていくようになります。
当然のことながら、まずは日本語で考えてOKです。日本語でうまく話のキャッチボールができないのに、急に英語で会話上手になるはずがありません。まずはコミュニケーションに必要な基本的な力を、蓄えていきましょう。
⑤ 英語の壁打ち相手を作る
【How】
コミュニケーションというのは、最終的には相手がいないと成り立ちません。スキルアップに役立ついくつかのトレーニングを重ねつつ、やはり最終的にはとにかく英語でやりとりをする機会を作ることが大切になります。
話すコミュニケーション力を高めるためには、頻繁に英語で話せる相手を見つけること。ネイティブスピーカーである友達や先生がいれば、彼らと話す機会を積極的に持つと良いでしょう。英語を勉強中だと伝えて、会話の途中でわからないことを質問したり、間違いを指摘してもらったりするのも、実践的な練習になります。もし知り合いにネイティブスピーカーがいなければ、英語を学ぶ友人でも大丈夫。英語だけを使う時間を決めて話すなど、楽しくできる方法を工夫しましょう。
英語で会話をする際に重要なのは、何よりもまず、積極的に相手とコミュニケーションしようとする姿勢です。正しい英語を使うことばかりに気を取られると、適切な文法や単語が出てこないときに言葉に詰まってしまうこともよくありますが、そこで黙り込んでしまうと会話は終わってしまいます。なんと言っていいかわからない場合も、たとえ不正確であっても考えているとわかるような言葉をつないでみたり、ボディランゲージやアイコンタクトなどの非言語コミュニケーションを使ってみたり。そうすることで、総合的なコミュニケーションのスキルは向上していきます。
書くコミュニケーションであれば、ネイティブスピーカーや英語の先生などと、英語でメールのやりとりをしてみるとよいでしょう。そうした相手が見つからない場合は、オンラインのフォーラムに投稿したり、興味がある分野のサイトやブログにコメントしてみたりするといった方法も、相手の意図を理解してこちらから意見を返す、というスキルアップに役立ちます。
英語でのコミュニケーションというと、ついつい「英語を正しく使う」ことばかりに意識が向きがちですが、大切なのは相手としっかり意思の疎通ができることです。そのためには、どうしたら伝わるのか、を常に意識することが必要になってきます。とくに「話す」場合には、正しい英語にこだわりすぎず、相手と会話しようとすることをあきらめない姿勢(わからないところは聞く、多少不正確でも言葉を発する、アイコンタクトやボディランゲージも使ってみるなど)が、まずはコミュニケーションの一歩目だったりします。
そもそも、日本語や英語などの言語を問わず、コミュニケーションスキルは人生を豊かにしてくれるもの。英語コミュニケーション力は留学生にとても有効なスキルであり、その後の人生にも生きる大切な力になるでしょう。
※この記事でご紹介している内容は2020年7月31日現在の情報に基づいています。