知っておきたい!アメリカ・イギリスの受験スケジュール
現在、日本の大学のほとんどが4月入学の制度を採用しています。日本の教育システムでは小学校~高校も4月入学・3月卒業のスケジュールがベースであるため、高校卒業後、スムーズに大学に進学することが可能となります。しかし海外大学の場合、基本的に入学は9月と日本とは入学時期が異なっていることから、受験のスケジュールも日本の大学入試とは進行がまったく異なります。海外大学進学を目指すなら、「気づいたら出願の締め切りを過ぎていた!」とか「TOEFLを1回しか受けられなくて満足いくスコアが取れなかった!」などということがないように、まずはしっかりと海外大学受験のスケジュールをチェックしておくことが大切です。海外大学の入学に向けたおおまかな1年間の予定を把握しておけば、必要書類の提出時期や、面接の時期から逆算して対策を練ることができます。
海外大学と日本の大学 主な入試の違い
海外大学の場合、入学試験の多くが書類審査となります。とくにアメリカ・イギリスの大学では、日本の大学のように、「大学入試センター試験」や大学ごとの「個別試験」のような一斉ペーパーテストを受けることは、原則としてありません。(※1・2) アドミッションポリシー(入学審査方針)に基づいて、学力、高校までの活動の履歴、志望理由、入学後や将来のビジョンなど、出願時に提出した複数の書類に記入された内容から総合的に選考が行われます。場合によっては面接が実施されることもあります。
世界中から優秀な学生を求めている海外大では、書類審査や面接を通じて、出願者が「学力」だけでなく、際立つ独創性やリーダーシップ、入学への熱意などを兼ね備えているかといった、「人間力」も審査されています。出願者や推薦者が提出する複数の書類をじっくりと精査し、出願者個人の「学力+人間力」を多面的・総合的に評価して合否を決定するため、出願から合否発表まで数カ月かかるのが一般的です。
※1 アメリカ・イギリスとも、大学・学部によっては出願の要件として、あらかじめ決められた学力テスト・適正テストなどのスコア提出が必要なことがあります。また、国や希望する専攻分野によっては、特別な試験を受けるなどの準備が必要になることもあります。
※2 音楽や美術、建築などの実技を必要とする科目では、オーディションを受けたり、それまでに作った作品集(ポートフォリオ)の提出が必要になったりする場合もあります。
アメリカの大学に進学する場合
■アメリカの大学への出願時に必要となる主な書類
- ●共通願書(オンライン出願が主流)
- ●成績証明書(高校の成績の英文証明書・GPAでの算出が求められることが多い)
- ●英文エッセイ(Admission essay)
- ●先生からの推薦状
- ●指定された適正能力テストのスコア(SAT®またはACT・大学や学部によってどちらを要求するかは異なる)
- ●英語力を証明するテスト(TOEFL®テストなど)のスコア
- ●財政能力証明書
*大学によっては、共通願書に追加して大学独自の願書を提出させる場合や、共通願書を採用しておらず独自の願書のみで選考を行う場合もある。
イギリスの大学に進学する場合
イギリスは教育制度が日本と異なるため、日本の高校を卒業した後、直接イギリスの大学の学部(学士)課程に入学することは原則としてできません。イギリスの大学の多くは1年目から専門課程がスタートする3年制(一般教養課程なし)をとっており、日本の大学の「一般教養」にあたる内容は高校で学びます。イギリスの高校から大学に進学するにはGCE-Aレベル(General Certificate of Education, Advanced Level)(※3)という統一試験の成績と面接で基準以上の成績を収めることにより、大学での勉強に必要な知識やスキルが身についているとみなされ、進学できるコースが決定します。
日本の高校を卒業してイギリスの大学の学部に進学を目指す場合は、GCE-Aレベルを受けていないため直接入学が許可されず、一般的にFoundation Course(ファウンデーション・コース)といわれる大学進学準備コースを修了することが入学の条件となります。ファウンデーション・コースでは、大学の学部課程の授業についていくために必要となるアカデミック英語やスタディ・スキル、また専攻する予定の専門的知識を学ぶための前段階と言える「一般教養科目」を学びます。このファウンデーション・コースはほぼどこの大学でも開講していますが、学校側が定める一定の成績を修めてコースを修了した場合、希望する大学の学部への進学が可能となる(成績によって入学できる大学が決まる)システムです。志望大学のファウンデーション・コースを修了しても、成績によっては同大学に入学できないこともあるので注意が必要です。ただ、学部によっては特定の科目をファンデーション・コースで履修していることを入学条件にしている場合があるので、進学希望の大学をある程度絞ったうえで、その大学で開講しているファウンデーション・コースの中から専攻を希望する学部等に合ったコースを選択するのがよいでしょう。
※3 GCE-Aレベル:大学で専攻する予定の「専門分野」の基礎知識を問う試験で、イギリスの大学または大学レベルのカレッジへの入学資格として広く使われています。
■ファウンデーション・コースの入学条件の目安
IELTS 4.5~5.5またはTOEFL iBT®テスト 53~68程度
■ファウンデーション・コース入学に必要な書類の例
- ・入学願書
- ・成績証明書
- ・IELTS等の認められた英語能力検定試験のスコアレポート
- ・志望動機書またはエッセイ(英文)
- ・高校の先生からの推薦状(英文)
*イギリスの大学の入学条件としてはTOEFL®テストが認められているところも多いですが、留学のための学生ビザの申請に必要とされる英語テストとしてTOEFL®テストが認められていないため、イギリス留学の際の英語力の基準についてはIELTSスコアで考えることが一般的です。なお、学生ビザを取得するためには、通常のIELTSではなく、IELTS for UKVIのスコアが必要です。
◆アメリカの大学の年度・学期制度◆
アメリカの大学は、一般的に9月から翌年の5月までの9カ月間 を1学年(academic year)としています。6~8月は、夏休みか夏学期(summer session / school)です。1学年間(9カ月間)を2期に分けるのがセメスター(semester)制で、1年間(12カ月間)を4期に分けるのがクオーター(quarter)制です。
◆イギリスの大学の年度・学期制度◆
イギリスの大学は、一般的に9~10月に年度が始まります。基本的に学期は「ターム(term)」と呼ばれ、3学期制をとる大学がほとんどです。主に秋学期(Fall / Autumn term)が9~12月、春学期(Spring term)が1~3月、夏学期(Summer term)が4~6月というのが目安です。
ファウンデーション・コースは、9月開始で翌年6月頃までが一般的です。
アメリカ・イギリスの大学の入試スケジュールの目安
日本の高校を卒業し、アメリカ・イギリスの大学に進学することを目指す場合に、キーになるスケジュールのポイントをまとめました。あくまでも、日本の高校卒業後にアメリカまたはイギリスの大学に入学する際のおおまかな流れであり、大学・学部によって異なる部分がありますので、詳細は必ず各大学のホームページや大学案内等で確認してください。
※9~10月入学を基本としたスケジュールの目安です。ただし、海外大は学期ごとに入学できるチャンスがある学校も多いので、気になる大学の制度はしっかり調べてみましょう。
※イギリスの大学については、高校卒業後すぐには学部課程に入学できないので、一般的にファウンデーション・コースに留学します。ファンデーション・コースは、設置している学校に直接申し込むのが基本となります。
日本の大学に1年以上在籍した後であれば、直接イギリスの大学の学部課程に入学することも可能です。その場合は、必ずUCAS(Universities and Colleges Admissions Service)という統一出願機関を通してオンラインで出願します。(一部、大学に併設されているファウンデーション・コースの申込でも、UCASでの出願を求められる場合があります)
◇~高校3年生の9月
■主なやるべきこと
- ・留学の目的や動機の明確化
- ・大学に関する情報収集、資料請求/大学の入学資格や条件のチェック(求められるGPAや英語力の確認、経済力の確認・奨学金の検討) ⇒進学する国や大学の選択
- ・TOEFL®テスト、IELTSなどの英語テストやSAT®などの必要なテストに向けた勉強、受検
- ・エッセイ(または志望動機)を書くための自己分析
◇9月~
翌年の秋入学に向けた出願期間が徐々にスタートします。
- 9月4日 ●イギリス:UCASプラットフォームがオープン⇒大学の学部に出願申請をすることが可能に
- 9月上旬 ●アメリカ:早期申請に間に合うタイミングでのSAT®受検の登録締め切り
■主なやるべきこと
- ・出願書類の準備
- ・必要な英語テストや適正テストなどの受検
- ・【イギリスの場合】希望するファウンデーション・コースの申込みが始まっていれば出願⇒順次、合格通知
- ※ファウンデーション・コースも含め、すべての大学・学部入学定員に達すると締め切られることもあるので、出願受付がスタートしたらなるべく早めに出願申請を行うことが望ましいです。
◇10月~
イギリスは出願期間で、オックスブリッジ(オックスフォード大学とケンブリッジ大学をまとめた呼称)は締め切りを迎えます。アメリカは一部の大学で早期出願の締め切りです。
- 10月1日 ●イギリス:音楽コースの出願締め切り
- 10月15日 ●イギリス:オックスフォード大学・ケンブリッジ大学の出願締め切り、医学部・歯学部・獣医学部(動物医学、動物科学)の締め切り
- 10月中旬 ●アメリカ:一部の大学で早期出願の締切
◇11月
イギリスは出願期間、アメリカは早期出願期間です。
※アメリカの場合、名門大学の出願締め切りは早い傾向にあるので注意が必要です。
11月上旬 ●アメリカ:トップスクールを含む多くの学校で早期出願の締切、通常出願に間に合うタイミングでのSAT®受検の登録締め切り
■主なやるべきこと
・出願書類の準備、オンラインシステムを通じた出願
◇12月
- 12月上旬~ ●アメリカ:通常出願の受付がスタート
- 12月中旬 ●イギリス:オックスブリッジの合格通知
- 12月中旬~ ●アメリカ:早期出願の合否通知が届く可能性あり
◇1月
- 1月上旬 ●アメリカ:トップスクールを含むほとんどの大学の通常出願の締め切り
- 1月15日 ●イギリス:10/15に締め切られた大学・学部を除くほぼすべての大学の学部課程の申し込み締め切り(一部のアート&デザイン系コースの締め切りは3月24日になることもある)
■主なやるべきこと
・出願書類の準備、オンラインシステムを通じた出願
◇1~2月
インタビューシーズン:出願した大学のインタビュー(面接)が行われることがあります。
2月25日 ●イギリス:UCASエキストラオープン
※イギリスでは、エキストラ制度により、2月末から7月初旬までの期間にまだ空きがあるコースへ出願できます。(6月末まで)
◇3月~4月
- 3月末まで ●イギリス:1月に出願が締め切られたほぼすべての大学・学部の合格通知(オファー)が届く
- 4月上旬まで ●アメリカ:通常出願の合否通知が届く
※イギリスの大学のファウンデーション・コースに出願した場合、順次、合格通知が届きます。9月から1年間のコースに通うことが決まったら、4月~8月は語学学校などの英語力を補強するコースに通う方も多いようです。
◇高校卒業後の5~7月
- 5月1日まで ●アメリカ:合否結果により進学先を決定
- 5月5日 ●イギリス:合格通知(オファー)に対して、入学希望を伝える期限
- 6月30日 ●イギリス:UCAS出願締め切り
- 7月6日 ●イギリス:クリアリングシステム登録開始
※イギリスでは、6月30日までに出願できなかった人や、その時点で入学先が決定していない人を対象日にしたクリアリングという救済措置があります。7月中旬~9月まで、定員に空きのあるコースに出願することが可能です。
■主なやるべきこと
- ・入学手続き(授業料などの費用支払いを含む)
- ・ビザの取得
- ・滞在先の確保
- ・パスポート・航空券の手配
- ・予防接種
- ・海外送金の手続き
- ・クレジットカードの準備
- ・海外での保険加入
- ・外貨購入
- ・荷物の発送 など
海外大の入試は個人の能力、意欲、人間性などを総合的に判断
留学生の場合、語学力も合格を勝ち取るための大きなポイント
日本の大学入試は多様化が進みつつも、一斉テストで受験する大学が多いことに対して、海外大学の入試は、一斉学力テストが課されることはほとんどなく、書類審査が基本。提出書類がじっくりと吟味され、語学力を含む総合的な観点から合否が決定します。それぞれの大学によって重視する観点が異なり、大学の特徴に合わせた人材であるかどうかも見られるのが大きなポイントといえるでしょう。それに加えて海外からの留学生の場合は、入学後に授業にきちんと参加できる語学力を備えていることが、合格の「前提条件」といえます。出願要件としてTOEFL®テストなどの英語テストの基準スコアが明示されているのであれば、当然それをクリアしていなければいけませんし、基準スコアが示されていない場合でもかなりのハイレベルな英語力が求められるのは覚悟しておかなければなりません。進学後に困らないためにも、海外大の入試スケジュールにあわせて計画的に英語力のアップを図っていきましょう。
※この記事でご紹介している内容は2019年7月5日現在の情報に基づいています。
※この記事は、旧GLCウェブサイトの「グローバル海外進学コラム」2019年7月5日に掲載されたものです。