留学生でも学費が安価な「北欧・ヨーロッパ留学」を考えてみる
海外留学はお金がかかる、というイメージを持っている方も多いのでは?留学プランや海外での住居の選択などで節約ができる場合もありますが、油断しているとどんどん費用がかさんでしまい、思ったより高額になって苦労する…ということも往々にしてあります。経済的な心配をせずに集中して学ぶためには、やはり留学費用はできるだけ低く抑えたいもの。実は北欧やヨーロッパには、ノーベル賞受賞者を輩出するようなレベルの高い教育を行っている大学でも、学費が無料または安価な国が多くあります。英語での受験が可能であったり、英語の授業を行うコースを持つ大学もあるため、留学の目的に沿うのであれば、お金のことをあまり気にせずにのびのび学ぶことができます。自分の学びたいことや留学の目的をきちんと整理したうえで、自分に合った大学がありそうなら、留学先として北欧・ヨーロッパを考えてみるのもありかもしれません。まずは、学費が安価な北欧・ヨーロッパの大学の特徴や制度をチェックしておきましょう。
北欧・ヨーロッパで大学の学費が無料または安価な国
留学先の国や大学によって海外留学の費用はことなってきますが、世界には大学の学費が無料という国もあります。日本から留学した場合(基本的に日本国籍のみを持ち、日本在住の場合)に、学費が無料もしくは非常に安価な北欧・ヨーロッパの5つの国々の制度をご紹介します。
※基本的に、学費が無料(もしくは安価)なのは各国とも公立大学のみです。私立大学は有料となり、それぞれの大学で定められた学費等の納入が必要です。
※外国通貨を日本円に換算した金額は2019年4月上旬の目安です。換算額は、為替相場により変動します。
ノルウェー
ノルウェーの公立大学の学費は、学習・研究レベルや国籍に関係なく、すべての学生が無料とされています。学期ごとに、学生福利厚生会費および試験料を含むsemester feeとして300~600NOK(*1)前後(日本円でおよそ4,000~8,000円)の手数料のみ支払いが必要となります。
現在、ノルウェーには9つの公立総合大学、8つの公立単科大学、5つの公立科学大学があります。一般的に、学士課程は3年で、秋学期・春学期の2学期制がとられています。学士課程の授業はノルウェー語のみで行われている大学が多く、ノルウェー語の力を証明する書類等が必要な場合もあるので、留学には注意が必要です(英語で授業を行う学部もあります)。入学の際に求められる語学力は、学校によって決められていることが多く、専攻するコースの教授言語がノルウェー語の場合はノルウェー語力と英語力、教授言語が英語の場合は十分な英語力が必要となります。大学院の修士課程および博士課程は英語プログラムが一般的で、英語のみで受講できることコースも数多くあります(大学院も公立は無料)。修士課程は2年、博士課程は3年となっています。
なお、日本国籍を持っているとビザは不要ですが、3か月以上滞在する場合は滞在許可証の取得が必要です。また、一般的にノルウェーは物価が高いと言われており、生活費として月に9,000NOK(日本円で12万円弱)程度はかかると見込んだ方がよいとされています。
*1 ノルウェーの通貨であるノルウェークローネのこと。
ドイツ
ドイツでは公立大学の場合、小学校から大学院まで、国籍に関わらず原則としてすべて学費が無料となっています(私立は有料)。授業料は州の政府によって定められていますが、公立大学の学部課程は授業料が原則無料で、共済費として150~250ユーロ程度(19,000~31,000円程度)が請求されます(*2)。ただし、既卒者は無料にならないこともあるなどいろいろな条件があるため、各大学への確認が必須です。
学士課程は3~4年で、夏学期・冬学期の2学期制です。学士課程入学には、「大学入学資格」(HZB:Hochschulzugangsberechtigung)という学歴上の条件がありますが、日本の高校を卒業した場合は、センター試験を受験して62%以上の成績をおさめた学科および関連学科に出願できます。ただし、大学の授業は基本的にドイツ語で行われるため、授業を理解して課題に取り組めるだけの十分なドイツ語力が必要です。ドイツ語の語学能力試験のスコア提出、またはドイツ語試験を受けることになります。とはいえ、ドイツの大学全体で提供されている19,000以上のコースのうち、主に英語で授業が行われる学科も2,000以上あるので、よく調べてみるとよいでしょう。
なお、日本のパスポートを持っていれば入国後90日以内の滞在にビザは不要ですが、それ以上の場合は滞在許可の取得手続きが必要です。留学生が滞在許可を申請するには、入学許可証などとともに、留学費用を負担できることを証明する財政証明(現在のところ年間約8,000ユーロ/日本円で約100万円)が必要です。
*2 例外として、南西部にあるヴァーデンヴゥルテンベルク州のみ、EU圏出身ではない学生に対して学期ごとに1,500ユーロ(日本円でおよそ19万円弱)の授業料が要求されています。
アイスランド
アイスランドでは、国公立大学の授業料が無料となっています。ただし、年間で75,000ISK(*3)(日本円で約7万円)前後の学生登録費が、毎年必要となります。
一般的な学士課程は3~4年、神学・医学・農業科学・薬学・助産学・法学・心理学・歯学といった特定の分野で取得可能な学位は5~6年かかります。通常は秋学期・春学期の2学期制です。授業で使われる言語は主にアイスランド語ですが、英語の教材や文献を利用することから高い英語運用能力も必要です。ほとんどの大学では英語によるプログラムもあり、国立で最大の総合大学であるアイスランド大学などでは留学生のために英語で履修可能な学位取得プログラムが提供されています。
なお、3か月以上アイスランドに滞在する場合には、滞在許可の取得が必要となります。申請には、12,000ISK(18歳以上/日本円で約11,000円)の申請料が必要です。また、アイスランドも一般的に物価が高いと言われており、生活費が月に約140,600ISK(日本円で13万円強)かかるとされているため、実際に生活する場合は注意が必要です。
*3 アイスランドの通貨であるアイスランドクローナのこと。
オーストリア
オーストリア国籍、またはEU圏出身の学生は公立大学の学費が無料とされていますが、日本人などそれ以外の国からの留学生は、1学期につき約726ユーロ(日本円で9万円強)の学費が課せられます。年間で18万円強なので、学費としては比較的安価といえるでしょう。このほかに、学生組合費(OeH-Beitrag)として約19ユーロ(日本円で2,400円程度)を支払う必要がありますが、学生組合員として保険に加入したことになるため事故などの補償を受けることができるようになります
オーストリアの公立大学は22校。ウィーン大学などの総合大学をはじめ、公立の医科大学や芸術大学などもあります。学士課程は3~4年で、冬学期と夏学期の2学期です。一部の例外を除き、大学の学士課程の入学試験は無く、書類審査で合否が決定されます。日本から留学する場合、一般的に「高校を卒業し、日本の4年制大学に合格していること」「合格している大学での専攻分野が留学先の専攻と同じであること」「十分なドイツ語運用能力があること」などが条件となります。オーストリアの大学の授業で使われるのは基本的にドイツ語のため、多くの専攻において、出願時に授業についていけるだけのドイツ語能力があることを示す証明書の提出が求められます(一般的には、ドイツ語能力を示すテストでCEFRのB2ないしはC1のレベル)。専門分野によっては英語での受講も可能です。
なお、6か月以上オーストリアに滞在する場合は、現地で在留許可を申請する必要があります。生活費としては、月に約950ユーロ(日本円で約12万円・年間で約144万円)が目安とされています。
フィンランド
フィンランドでは2017年度から大学が有償となり、大学ごとに学費が定められるようになりました。各大学、学部、プログラムにより授業料は異なっているので個別に情報収集が必要になりますが、一般的にファインランドの公用語であるフィンランド語もしくはスウェーデン語で履修する学士課程と修士課程は授業料が無料となっています。博士課程においては、教授言語に関係なく無料です。フィンランドは英語で学位を取得できるプログラムの提供に力を入れているため、400以上のプログラムが英語で受講可能で、特にポリテクニックと呼ばれる専門(応用科学)大学では英語のみで学位を取得できる学科が多数ありますが、大学の学士課程と修士課程で教授言語が英語の場合は、年間に4,000~20,000ユーロ(日本円で約50万~250万円)の学費がかかるので、注意が必要です。博士課程は教授言語に関係なく無料となります。このほか、大学の学生は学生自治会(Student Union)に加盟する必要があり、年会費は80~100ユーロ(日本円で約1万~1.3万円)程度です。
大学の学士課程は通常3年で、秋学期・春学期の2学期制です。各大学は独自の方法で学生を選考していますが、一般的には高校の卒業証明書が必要で、書類選考と現地での入学試験で合否が決定します。出願に際しては、教授言語の十分な言語能力(フィンランド語もしくはスウェーデン語、あるいは英語/基準は大学によって異なる)が要求されます。英語でのプログラム受講を希望する場合は、大学や学部によって、IELTS 6.0以上、TOEFL iBT®テスト 80以上など独自の基準を設けているので確認が必要です。
日本国籍保持者はビザ不要ですが、3か月以上滞在する場合は滞在許可を取得しなければなりません。生活費は月に約700~900ユーロ(日本円で約8.8万~11.3万円)程度とされています。
自分の将来をしっかりイメージして留学先を選ぼう
北欧・ヨーロッパでは、大学の学費が日本より安い国がいくつもあります。アメリカなど人気の留学先より、費用がかなり安く抑えられる大学が数多くみつかります。ただ、英語だけで授業が受けられる学校はやはり限られているため、英語を磨きたい場合は大学のコースやプログラムをよく調べることが大切になります。もし、英語以外の言語も合わせて習得したいという希望があるなら、学費が無料もしくは安価な国への留学は、有力な選択肢になるでしょう。
北欧や、英語圏ではない国に留学する場合は、その国の産業や文化も知り、学ぶ内容や自分の将来まで留学前にイメージしておくのが成功の秘訣です。日本にいるとなかなか留学に関する情報が入ってきにくい国々が多いですが、国・大学によって特徴はかなり異なるのでWEBサイトなども使ってしっかり調べて検討しましょう。
グローバル社会がますます拡大している現代では、英語以外の言語を習得している人材は非常に貴重になってきています。英語をきっかけに、英語圏以外に飛び出してみる経験は、将来、国際人として活躍するために大きな武器となるかもしれません。
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※この記事でご紹介している内容は2019年4月19日現在の情報に基づいています。
※この記事は、旧GLCウェブサイトの「グローバル海外進学コラム」2019年4月19日に掲載されたものです。