海外大や国内グローバル大入試で続々採用!「国際バカロレア」の取得メリットとは?
国際的に認められた大学入学資格である「国際バカロレア(IB)」。欧米をはじめ、海外では多くの学生にごく一般的に知られている資格です。近年、国内グローバル大などを中心に入試で続々採用されるようになっており、注目度が高まっています。
では、この「国際バカロレア」プログラム、いったいどのようなことが学べるのでしょうか。また、取得するとどんなメリットがあるのでしょうか。国内外の導入事情も含め、最新情報をお伝えします。
国際バカロレアとは?
国際バカロレア(IB:International Baccalaureate、以下IB)は、1968年にスイス・ジュネーブで設立された非営利組織・国際バカロレア機構(IBO)が提供している国際的な教育プログラムです。
IBは、多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成を目的としています。その目的を実現するために、チャレンジに満ちた総合的な教育プログラムとして、未来へ責任ある行動をとるための態度とスキルを身に付けさせるとともに、国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)を与え、大学進学へのルートを確保することを目指しています。
IBプログラムの構成
IBはグローバル化に対応できるスキルを身に付けた人材を育成するため、生徒の年齢に応じて、以下の4つの教育プログラムを提供しています。IBのプログラムを提供できるのは国際バカロレア機構が独自に認可した認定のみとなっていますが、プログラムは全て導入することもどれか1つのみ導入することも可能となっており、2023 年 2 月の時点で世界159 か国の 5,600 を超える学校で7,800 を超えるプログラムが実施されています。
①プライマリー・イヤーズ・プログラム(PYP :Primary Years Programme)
/対象:3-12歳
精神と身体の両方を発達させることを重視したプログラム。どのような言語でも提供可能。
②ミドル・イヤーズ・プログラム(MYP:(Middle Years Programme)
/対象:11-16歳
青少年に、これまでの学習と社会のつながりを学ばせるプログラム。どのような言語でも提供可能。
③ディプロマ・プログラム(DP:(Diploma Programme)
/対象:16-19歳
所定のカリキュラムを2年間履修し、最終試験を経て所定の成績を収めると、国際的に認められる大学入学資格(国際バカロレア資格)が取得可能。原則として、英語、フランス語又はスペイン語で実施。
④キャリア関連プログラム(IBCP:Career-related Programme)
/対象:16-19歳
生涯のキャリア形成に役立つスキルの習得を重視したキャリア教育・職業教育に関連したプログラム。一部科目は、英語、フランス語又はスペイン語で実施。
日本におけるIB教育
日本国内でもIBの導入拡大を目指し、文部科学省を中心に様々な取り組みが進められてきています。2013年からは国際バカロレア機構との協力の下、ディプロマ・プログラムの科目の一部(※1)を日本語でも実施可能とする「日本語DP」の開発・導入が推進され、一部の認定校では2015年4月から日本語DP課程が実施されています。
※1)日本語で実施可能となる科目等は、以下の通りです。
経済、地理、歴史、生物、化学、物理、数学、数学スタディーズ、音楽、美術、知の理論(TOK)、課題論文(EE)、創造性・活動・奉仕(CAS)
(ただし、日本語DPでも、6科目中2科目(通常、グループ2(外国語)に加えて更に1科目)は、英語等で履修する必要あり)
<日本の国際バカロレアの認定校>(2023年12月31日時点)
国際バカロレア認定校等数:191校
- ●PYP 認定校:59校 候補校:21校
- ●MYP 認定校:34校 候補校:8校
- ●DP 認定校:66校 候補校:3校
上記のうち、
- ◆学校教育法第1条に規定されている学校(1条校):72校
- ◆日本語DP実施校:33校
*IB認定校等を学校・プログラム単位で数えたものであり、IB機構が公表している校数とは異なる
≪1条校とは?≫
日本における国際バカロレア認定校には、「1条校」と呼ばれる学校と、インターナショナルスクールがあります。1条校とはいわゆる一般的な幼稚園・小学校・中学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校・大学・高等専門学校が該当します。IBプログラムに関しては1条校もインターナショナルスクールも違いはありませんが、日本の高校卒業資格と同時に国際バカロレアを取得できるのは、基本的には1条校のみとなっています。
【参考ページ】:認定校・候補校|文部科学省IB教育推進コンソーシアム
IBのディプロマ・プログラム(DP)のメリット
16歳~19歳までを対象としているディプロマ・プログラム(DP)は、所定のカリキュラムを2年間履修し、最終試験を経て所定の成績を収めると、国際的に認められる大学入学資格(国際バカロレア資格)が取得できます。「日本語DP」の対象科目等を除き、英語、フランス語又はスペイン語で実施されます。
独自のカリキュラムで、生涯を通して「自分から学べる人」になれる
行動的で、思いやりをもった生涯学習者を育成するというIBの使命を実現するため、IBプログラムは「学び方を学ぶ」ことに焦点をあてたアプローチを重視しています。それにより、IBプログラムでは、世界に通用する論理的思考力や表現力、コミュニケーション能力など、欧米の大学で学ぶ際に必要となる基礎的な力や、将来グローバル社会で活躍するためのスキルを身につけることができます。
DPのカリキュラムは、以下の6つのグループ(教科)及び「コア」と呼ばれる3つの必修要件から構成されています。
■グループ(教科)の科目
生徒は、6つのグループからそれぞれ選択し、6科目を2年間で学習します。(ただし、「芸術」(グループ6)は他のグループからの科目に代えることも可能)
なお、大学やその後の職業において必要となる専門分野の知識やスキルを大学入学前の段階で準備しておく観点から、6科目のうち3~4科目を上級レベル<HL(Higher Level)・各240時間>、その他を標準レベル<SL(Standerd Level)・各150時間>として学習します。
グループ | 科目名 | 特徴・身につけられる力 | |
---|---|---|---|
グループ1 | 言語と文学(母国語) | 「言語A:文学」 「言語A:言語と文学」 「文学と演劇」SLのみ(※2) |
・さまざまな文脈で言語の複雑さ、豊かさ、微妙さを理解する ・言語と文学に対する学生の生涯にわたる関心と、人間の表現の豊かさへの愛情を育む |
グループ2 | 言語習得(外国語) | 「言語B」 「初級言語」SLのみ |
・多様な文脈でさまざまな目的のために使用できる言語を習得 ・言語の研究を通じて他の文化の理解を促進 |
グループ3 | 個人と社会 | 地理、歴史、経済、ビジネスと経営、情報テクノロジーとグローバル社会、哲学、心理学、社会・文化人類学、世界の宗教(SLのみ)、グローバル政治 | ・個人や社会の性質や活動に関する理論、概念、議論を特定し、批判的に分析し、評価する能力の育成 |
グループ4 | 理科 | 生物、化学、物理、コンピュータ科学、デザインテクノロジー、スポーツ・エクササイズ・健康科学、環境システムと社会(※2) | ・各分野を支える概念、理論、モデル、技術を探求し、これらを通じて科学的方法の理解を深める ・必須の演習では、学生が科学の環境的、社会的、倫理的な意味を理解することを奨励 |
グループ5 | 数学 | 「数学:解析とアプローチ」 「数学:応用と解釈」 |
・数学の国際的な側面と、その文化的および歴史的視点の多様性を理解する ・数学におけるテクノロジーの使用を理解し、グラフィック表示電卓に習熟する |
グループ6 | 芸術 | 音楽、美術、ダンス、フィルム、演劇 | ・批判的で内省的で情報に基づいた実践を促進 ・芸術のダイナミックで変化する性質を理解し、時間、場所、文化を超えた芸術の多様性を探求し、自信と能力を持って自分自身を表現できる |
※2)「文学と演劇」はグループ1と6の横断科目。「環境システムと社会」はグループ3と4の横断科目。
■コア科目
上記6グループのほか、カリキュラムの中核となるコア科目として、Theory of Knowledge(TOK、知識の理論)、Extended Essay(EE,課題論文)、Creativity, Activity & Service(CAS、創造性・活動・奉仕)の3科目があり、必修要件を並行して履修します。この3つのコア科目が、探求型学習と全人的教育を強調するIB教育の大きな特徴といえます。
課題論文 (EE:Extended Essay) |
知の理論 (TOK:Theory of Knowledge) |
創造性・活動・奉仕 (CAS:Creativity/Activity/Service) |
---|---|---|
生徒が関心のある研究分野について個人研究に取り組み、研究成果を4,000語(日本語の場合は8,000字)の論文にまとめる。 | 「知識の本質」について考え、「知識に関する主張」を分析し、知識の構築に関する問いを探求する。批判的思考を培い、生徒が自分なりのものの見方や、他人との違いを自覚できるよう促す。 | 創造的思考を伴う芸術などの活動、身体的活動、無報酬での自発的な交流活動といった体験的な学習に取り組む。 |
<DPの評価>
国際バカロレア資格の取得には、DPカリキュラムを全て履修し、外部評価(国際バカロレア試験等)及び内部評価を通じて、45点満点中、原則として24点以上を取得する必要があります。
配点は、6科目につき各7点(計42点)。さらに、必修要件(「コア」)について、TOKとEEの評価結果の組み合わせに応じて最大3点が与えられます(CASは評価対象外)。
国際バカロレア試験は、南半球と北半球の学校年度に対応できるよう、年2回、世界で一斉に実施されます。日本の1条校の場合は、原則として3年次の11月に実施され、翌年の1月5日に最終スコアが通知されます。
世界人としてのマインドも身につく
すべてのIBプログラムのねらいは、人類に共通する人間らしさと地球を共に守る責任を認識した国際的な視野をもった人間を育てることにあります。このねらいの中心にあるのが、「国際的な視野をもつ」ということ。国際的な視野とは、世界に対しての開かれた態度と、人間が相互に関わりあっているという事実を認識した考え方、在り方、そして行動によって特徴づけられる、多面的かつ複雑な概念と、IBでは位置づけています。
世界に対して開かれた人であるためには、世界を理解することが重要です。そのためIBプログラムは、ローカルおよびグローバルのさまざまな課題や考え方を、持続的に探究する機会を子どもたちに提供しています。
子どもが自分自身のものの見方、文化、アイデンティティーを振り返り、そして他者のそれに対しても同様に振り返りを行うことを促すことで国際的な視野を育みます。IBの学習者は異なる信念、価値観、および経験に対して価値を見いだし、異なる文化や学問領域を横断的に捉え、協力することを学びます。
さらにIBの教育は多言語主義を通じて国際的な視野の発達を促します。子どもたちはすべてのIBプログラムにおいて、複数の言語で学習を行うことが求められます。これは、複数の言語でコミュニケーションを行うことは異文化への理解と敬意を育むためのすばらしい機会を与えてくれる、というIBの信念に基づくもので、自身の言語、文化、世界観が数ある中の1つでしかないことを理解するのに役立ちます。
海外・国内の大学受験に強い!
国際バカロレア資格は、世界で100 以上の国と地域の 5,000 以上の大学入試において、自分の能力を証明する資格として広く活用されています。
イギリスでは、中央機関(UCAS)がIBやイギリスの共通試験であるAレベル等のスコアの統一的な換算表を作成し、各大学が入学オファー等にIBのスコアを用いる際の目安として活用しています。アメリカでは、共通試験(SAT、ACT等)や高校の成績等を総合的に評価して入学者選抜が行われていますが、いわゆる名門とされるハイレベルな大学においてとくにIBの履修を推奨、または高く評価する傾向があります。実際、IB履修生はハーバード大、プリンストン大、イエール大、スタンフォード大を含むアメリカのもっとも権威ある10大学に合格する傾向が通常より21.4%高いことがわかっています。
また、例えばIBのディプロマ・プログラムの上級レベル科目(HL)において一定の得点を取得した生徒に対し、当該科目に相当する一部科目について、入学後の履修が免除(単位認定)になるなど、さまざまなメリットが与えられるケースも多く見られます。
日本でもIB資格を有する者で18歳に達した者に対しては、大学への入学資格が認められています。大学入試においてもIB資格及びそのスコアの積極的な活用を文部科学省が推進していることもあって、近年ではIBを出願資格の1つとして定めていたり、IBを活用した入試を行ったりする大学・学部が増えています。
2023年1月時点で、国際バカロレアのスコア等を活用した入試が行われている大学は78校です(文部科学省IB教育推進コンソーシアム事務局調べ)。
日本でIBを活用した大学入試が可能な大学は、下記のWebページで検索することができます。
【参考ページ】:IBを活用した入試制度|文部科学省IB教育推進コンソーシアム
様々なメリットのあるIPのディプロマは、自分のスキルを上げる教育プログラムとして高い評価を受けており、難関大学への入学に有利と言われていることもあって海外の学生にとってはポピュラーな資格です。それだけに、DPの最終試験の評価基準は非常に高く、取得することが難しいことでも知られていますが、海外大学や国内のグローバル系大学の入試に活用できることはもちろん、将来、世界を舞台に活躍できる力が身につくことが期待できるため日本でもIB校の人気は次第に上昇しています。
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※この記事でご紹介している内容は2023年2月3日現在の情報に基づいています。