私の海外大生活~楽あり↑・苦あり↓④〜
先輩たちが長い海外大生活の中でどんな苦労した時期、最高だった時期を出来事とともに振り返り紹介してくれるシリーズも4回目となりました。今回は、アメリカでリベラルアーツを学ぶために海外の道を選んだYuka T.先輩に登場いただきます。好奇心を常に持ち、幅広い活動をされてきた先輩の“苦楽とは?“を語っていただきます。
期末試験とダンスの発表が重なる超多忙な日々にまさかの体調不良!「Work SMART」に気付くきっかけになりました。
今回の「ラボ協力隊」
Yuka T.先輩
ミドルベリー大学(Middlebury College)3年生。
大学入学前に専攻したい学部・学科が分かっていなかったことがきっかけで、2年間自分のやりたいことを探せるリベラル・アーツ・カレッジで学びたいと考え海外進学を決意。心理学の授業中に学んだ脳科学分野と、
Q. 海外での学生生活ならではの「苦労したこと」「失敗したこと」はありますか?
A. 勉強の時間や取り組み方をどう効率的にすればいいか分からず、端から端までやりつくしていました。
大学3年生の秋学期、ちょうど期末試験シーズン(12月上旬)の時が苦労した時期でした。大学の授業には各授業それぞれの特性があり、あらゆる点で苦労はつきまとうのですが、とにかく大変だったのは、勉強の時間配分に慣れることです。
私はどちらかというと「時間のある限り、端から端までやりつくす!」というタイプの勉強法をする人間なのですが、これでは本当に死んでしまいます…笑。例えば、”Reading”に慣れるまでがどうだったかというと…、最初は、毎回授業の予習として渡された論文もテキストも、端から端まで全部読んで、ルーズリーフに書いてまとめていました。授業後も、授業によっては録音させてもらい、もう一度それを全部聞き直して、授業内容と共にすべてまとめて書き直しをしていました。
しかし、これでは“物理的な時間を延ばす”という「人類史上の大発明!(笑)」をする方法以外にやり遂げる方法がないことに段々と気が付き、”どう効率的にサボるか!?” を覚えるというのが、大学で学んだ大きな1つのこととなりました。 実際、後で分かってきたことですが、教授の方々も信じられない量の課題やリーディングを出している理由は、社会に出て必要となるこの効率的に進めるスキルを身に着けてもらうためのようです。いつもOffice Hours(教授に個別の質問などができる時間)に行くのですが、私が受けるアドバイスは毎度似たようなもので、授業そのものの内容ではなく“効率よくどう学べるか”を教えてもらっています。今、私の教訓となっているのは、ある教授から言われた“Don’t work hard, work SMART”(一生懸命やるな、賢くやれ)です。
Q. その大変な苦労や失敗。どんなエピソードがあったのでしょうか?また、一体どのように乗り越えたのですか?
A. ダンスチームのイベントと期末試験が重なりピンチ!さらにインフルエンザにかかりどん底状態に。でも、教授の深くて温かい理解に助けられました。。
私は大学のダンスチームに所属しているのですが、いつも学期ごとに開催している大きなDa
Showの2週間前から通常の練習だけでなく、”All Day”と呼ばれる舞台でのリハーサルを何度かやったり、照明や衣装を着て試す“Techリハーサル”が加わったりなど、ほぼ毎日ダンス漬けになってしまうので、課題と期末の勉強との両立をしようとすると毎回死にそうになります…。(と言いつつも、Showが終わるとその達成感はなんとも言えず素晴らしくて、その気持ちが勝ってしまい止められない!のですが。)
そんな中、一番大変だったのが、3年生の秋学期。この時は、いつもに加えて、インフルエンザのようなものにかかってしまったせいで全ての予定が狂いだしました…。
2日間高熱にうなされ部屋に寝たきり、そのせいでダンスリハーサルには出られずにメンバーの皆に迷惑をかけた上、課題の進捗も遅れる…。なんとか追いつこうと夜中に頑張って朝4時までかけて書いた(もうすぐで出来上がりそうだった!)エッセイのデータが飛んでしまい、泣きながら教授に謝りのメール…、そんな事態が起きてしまいました。そんな苦労をしている間にも37度5分の熱はずっと下がらず、結局微熱のままShowを2回やり切り、そのまま期末へ突入しました。おそらく人生で一番の“精神とハードスケジュールに体調がついていかない状態”を経験しました。
その時私にできたことといえば相談をすることで、教授たちに素直に全てを話しました。すると教授は皆、そんな状況にある私の精神を救ってくれたのです。私が“どうしよう…“と弱音を吐いても、どの教授も真摯に受け止めて下さり、真剣に相談に乗ってくださいました。中でも社会言語学の教授は、優しい激励の言葉だけでなくメディテーション(瞑想)の勧め、そしてWarm Hug(温かみのあるとても優しいハグでした…!)までして下さったのがとても嬉しかったです。”この人の元で勉強できて良かった!“と心から思えました。(ついでに課題の締め切りも延ばしてくださいました…!)
他の教授も、交渉次第で、テスト時間を延ばしてくださるなど本当に臨機応変で、こんな教授との関係性は“日本だったらありえなかったかな…”と想像しています。
ダンスのShow。風邪ひいていても、踊っている時はアドレナリンのおかげで超元気。
終わったら熱が復活。それでも舞台は楽しい!笑
Q.苦労や失敗から「学んだこと」、「身についた力・スキル」はありますか?
A. 効率よく勉強を進めるスキルと困ったら何事も相談する姿勢が身につきました。
やっぱり“Don’t work hard, work SMART”の言葉を実行するスキルが一番身についたことだと思います。そして、“何事も相談してみる大切さ”ですね!
私はそれまで、“誰かに相談するのって良くないのでは…”と、なんだか申し訳なく思ってしまう傾向にあったのですが、相談することは何も悪いことではなく、自分の状況に合わせて問題や課題をクリアして前に進めるための必要なことだと気付き、それを克服できました。
Q.経験されたような“苦労をする意味”って何でしょうか?
A. 「苦労する経験をしなければ良かった」と思うことは絶対無い!自分をレベルアップさせるために必要な経験です。
留学生活では上記のように苦労することもありますが、正直、私はどの経験も全て“将来の自分をより良いものにレベルアップさせることのできるファクター(要素)”としか思えないので、全てに意味があるといつも思っています。
むしろこういう経験がないと自分が慢心してしまって、何も変化や成長が無いことに気づかないのではないかと思います。私にはそちらの方が恐ろしいです。
なので、私はいつも自分にも周りの人にも言っているのですが、失敗や苦労をした時「二度と経験したくない!しないようにする!」とは思うけど、「
Q.逆に海外での学生生活で「最高潮だったこと」「最高に楽しかったこと」はどんなことですか?
A. 語学プログラムで「色んな人達に出会うこと」の面白さ、イベント開催で「同じ志を持った人と一緒に活動する」素晴らしさを知りました。
私の海外での学生生活での最高なことは、正直言うと一時期的なピークが大きくあったというよりは、私の場合はもう少しショートスパンで”Up & Down”を繰り返しているような感じです。なんならUpとDownが常にoverlapしている(重なり合っている)感覚で、例えば、大好きな授業に出ている時は楽しいけど、思ったように点数が取れないと、数日悔しさから抜けられない…というような感じです。なので、常に最高なこともあれば、そうでもない…を繰り返してはいます。
でも、強いて言うなら、例えば大学2~3年の間の時期でしょうか。夏に “Summer Language School”というプログラムに参加したことと”言語学クラブのイベント“を主催したことは印象深い思い出です。
まず“Summer Language School”。これは、私の大学が夏に特別に開講している、大学ではかなり有名な「8週間に及ぶ言語習得集中プログラム」のことです。12言語から選ぶことができ、私はこのプログラムに中国語で参加することで、1学期分の単位も取ることができて、1年分の中国語の授業をスキップできました…笑。
プログラムに参加している学生は、私の大学のミドルベリーの学生が6割くらいで、残りの4割は外部生です。ほとんどがアメリカの名門大学生か、政府機関の方々で、すごく面白い人々に出会うことができたのが最高でした!それに、私も利用していましたが、ミドルベリーの生徒だと参加する言語の学部から奨学金をもらうことができて授業料も減額してもらえるんです。
でも、プログラムは“集中習得”なのでかなりきつくて、2か月間受講する言語以外で話すことは厳禁!もし、3回他の言語で話していることがばれたら強制送還になる…という環境です。一から新しい人に出会いながら毎日毎日言語の勉強・筆記テスト・音読テストをこなすのはすごく大変なのですが、それだけ仲間との結束が深まることができたんです!
思った以上に中国語を上達させつつ、アメリカ中から集まって来た多種多様な人々と友達になれるとは思っていなかったので毎日がとても幸せでした。今でも親友と呼べる多くの友達や尊敬できる先生方も、このプログラムで出会った人たちです。
最後のほうには3~4時間に渡る大規模な“出し物大会兼パーティー“のようなものがあり、イベントのMCは各学年から選ばれるのですが、驚くことに自分が選ばれました!ゼロから番組司会台本のようなものを仲間と作ったのですが、全部中国語でかつ”面白くないといけない!”というプレッシャーと戦いながら作成した経験は初めてで、本当に貴重なものでした。そして「同じ志を持つコミュニティの中にいる!」と思えたことは、これまで他になかったと思います。
そしてもう一つの忘れられない出来事は、「言語学クラブ」。このクラブは、もともと存在していたものの、メンバーが卒業してしまったことで休止してしまっていたクラブだったのですが、それを復活させるメンバーとして教授に誘っていただき、3人の言語学大好きな子たちと一緒にイベントづくりをしました。
そして、「あ…私、本当に海外大学に本当に来てよかった!」と心の底から思ったシーンがありました。それは、学問的興味を同じように持つ子たちと、Onlineアプリ”Kahoot!” というクイズのプラットフォームを使って、言語学に関する「4択クイズ大会」を企画した時のことです。
クイズの問題作りしている時はこんな様子で…、
「Noam Chomsky (“言語学の父”と言われるMITの教授) の顔を当てるクイズはやろうよ!」
「めっちゃいいやん、それ!(笑)。で、ダミーの選択肢はミドルベリーの大学の教授にしない?」
「いいね、いいね!」
「音声解析ソフトの”Praat”ってさ、スペリングちょっと変だから、aの数だけ変えて4択クイズにしようよ。」
「それもめっちゃ、おもしろいね! 後、エスペラント語を公用語としてアメリ国内で”国”を名乗っているエリアがあるんだけど、それを問題にするのはどう?」
「え、そんなとこ、あるの!?」
…とこのように、次から次へとアイデアが止まらないミーティングになりました。
その時、心から「同じ学問に興味がある仲間に出会えたのは、この場所とコミュニティと教授のおかげだなぁ」としみじみ思い、最高の時を過ごしていると実感できました。
- Chinese Nightという出し物パーティにMCに選んでいただいた時の写真です。
- 私を含めMC5人と先生2人と撮影。これまたテスト前の、1からの中国語での台本作り…でも最高の経験!
タピオカティーを配った言語学クラブのイベントの時の写真です。
IPA(international phonetic alphabet)という言語学者が使う世界言語の発音を全てカバーした発音記号によって、ラベリングしている様子。読めないと、正しいタピオカが飲めません!
Q. その経験や出来事が何かに“活きている”と思うことはありますか?
A. 自分が活きるコミュニティを見つけて飛び込んでいくことを覚えました。そうするとどんどん世界が広がっていきます。
やはり、自分から好きだと思うコミュニティには、見境なくとりあえず飛び込んでいく積極性と勇気が必要です。それさえあれば、どんどん自分の周りに自分と共鳴する人々が増えていきます。ということが体験できたことで、おかげさまで、人生の教訓の一つとなっています。
Q.最後に、海外大学生活だからできる「成功体験」「楽しい経験」とはどのようなことですか?
A. 海外というだけで刺激的な環境。さらに“英語で過ごす”というチャレンジをしながら勉学に励む日常が待っています。自分がレベルアップしないわけがありません!
楽しさはあちらこちらにあって語り切れませんが、一つ、英語が母国語でなく完全に「第二言語」である私に確実に言える事があります。海外大学で生活するということは、常に「母国語禁止」のような生活です。それに改めて気づかされる出来事がありました。“Summer Language School”では、「勉強しに来た言語以外禁止」の誓約書を書かされるのですが、その”Language School”に参加した子たちが私に言っていたのは、こんな言葉でした。「Yukaって、そういえば普段からこういう状態なんだよね?ずっと母国語禁止で、毎日を過ごしていて。しかも、それで私たちと同じ大学の教科書とか論文とか読んで議論までしてるんだよね?よく考えたらめっちゃすごいよね!辛くない?!私、今、めっちゃつらいのに!」と。確かに海外に進学し、生活をするということはそういう状況です。でも、言われて気づいたのは、多種多様な人が当たり前に集まる中で、日々刺激を受け「母国語を使わない」という+αのチャレンジを自分に課している状態も、なおかつ好きな勉学に励むということができることも、海外大学ならではの経験で何にも代えがたい環境であるということです。
そして、もう一つ。ミドルベリーは様々な国から、そして、アメリカの色んな地域からの学生が多いのですが、本来アメリカに住む賢い学生であれば、自分が住む州で一番賢い大学(多くの場合州の名前が付いたような州立大学)に行けば、名声もあるうえ、学費も州外から来る生徒より割安に通えるはずです。でも、特に遠く離れたリベラルアーツの大学を選びミドルベリーに来ているということは、大学に行くために高いお金を払い、または、奨学金を獲り、実家を離れて、少人数制の大学にわざわざ来ているわけです。それだけ学ぶことに対してモチベーションのある学生が多いと感じています。だからこそ、全てのことに真剣に取り組む人が多くて刺激になり、勉強になり、感化されることがたくさんあります。そんな環境の中に自分を置けることはレベルアップができる最高の環境だと私は信じています。
2019年12月に最後親友と同じテストを受けて帰る道での一枚。
彼女とは今でもずっとテキスト・時々ビデオチャットする仲ですが、コロナのせいで
この写真を撮った時以来、もう1年以上会えていません…泣。
いかがでしたか?
Yuka T.先輩は、学業面や様々なことをスムーズに進めることに苦労をされていましたが、効率的に学んでいく学業面のスキルを磨いたり、課題や問題を誰かに相談をするコミュニケーションの力を利用したりして、活躍するフィールドやコミュニティを自ら広げているところがとても輝かしく感じました。うまくいかないことが続いても前向きに取り組んでいる姿勢は海外の地で培われているようですね。
次回は、シリーズ最終回。アメリカで大学を卒業し、現在は他の大学院で学ばれているY.S.先輩にお話をお聞きします。
【他の先輩の楽あり↑・苦あり↓体験談もチェック!】
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※この記事でご紹介している内容は2021年3月23日現在の情報に基づいています。