どう対策した?自分らしさを伝える「アプリケーション(願書)」②
毎月「海外進学・留学ラボ協力隊」が書き下ろし原稿で、動画で入試や大学生活についてレポートをお届け。9月のテーマは自分の強み・個性を表現するための「アプリケーション(入学願書)」の書き方についてです。
海外進学に向けて最終学年は、出願先によって多少スケジュールは異なりますが、夏から元旦あたりまでの間は出願期限までに「願書」やその他の書類を仕上げていくラストスパートの期間になります。この大切な期間に焦らず余裕を持って準備をするためにも出願内容の情報をしっかり集めて、必要な提出物を仕上げるイメージを事前にしっかり固めておきたいですよね。とはいえ、具体的にどう工夫や調整をしていったらいいのか…は情報だけでは分かりにくいこともあると思います。
そこで、今回も海外に進学した先輩たちにどのように願書の準備を進めて、スケジュールを組み、内容を工夫して臨んだのかをお話しいただきます。2回目は、アメリカのジョージア工科大学で建築を学んでいるM.T.先輩に語っていただきます。
「自分」を一番アピールできるのはエッセイとポートフォリオだと思い、エッセイは何度も書き直して完成させました
M.T.先輩
アメリカ ジョージア工科大学 (Georgia Institute of Technology)
コモンアプリケーションに加えて建築学部ではポートフォリオを提出。
各大学の出願内容はそれぞれ早めに確認すべきです
私はアメリカの大学を複数、カナダの大学を2校受けました。ジョージア工科大学を含めてほとんどのアメリカの大学は共通願書となっているコモンアプリケーション(Common Application / Common App)での出願でした。
コモンアプリケーションの提出の締め切りはレギュラー出願だと大体1月1日で、「個人情報」、「高校の成績」、「TOEFL / SAT / SAT Subject Testの成績」 、「課外活動や受賞歴」、「推薦状」、「共通エッセイ」などを入力します。また、大学によっては個別のサプリメントエッセイ(Supplement Essay)と言って、各大学から課せられるエッセイ がありました。私の場合は、建築学部を受験したので、コモンアプリケーションを提出した後にポートフォリオ(自身の経験や能力を示すための個人作品集)を大学に送らなければなりませんでした。
他の大学ではコモンアプリケーションとは別の方法でホームページなどにある願書に入力して提出したこともありました。そこに入力する事項はコモンアプリケーションとほぼ一緒でしたが、大学によってはレギュラー出願が11月中と早めだったりするので注意が必要でした。
高校2年生の夏に海外進学を決意。
課外活動のスケジュールなどは時間がないので焦りました
私は高校2年の夏に海外大学に行きたいと考えるようになりました。なので、そこから進学に向けての準備をスタートしました。海外大学を受験すると決めてからは、まず課外活動やTOEFL、SATの勉強をしました。課外活動ができるのは高校2年生のうちだと思ったのでかなり焦りました…。
高校3年生の夏に担任の先生や教科の先生に推薦状をお願いして、実際に願書を書き始めたのが11月頃。レギュラー出願のみ提出しました。エッセイを書く練習も高校2年生の時からしていましたが、結局提出ぎりぎりまで何度も書き直していました。
コモンアプリケーションのプロセスを説明すると、自分のアカウントを作ってから自分で入力するものは「個人情報」、「課外活動/受賞歴」、「共通エッセイ」、「大学別のサプリメントエッセイ」です。成績や推薦状は高校の先生にアカウントを作ってもらい入力してもらう必要があります。
テストスコアはTOEFL、SATから直接スコアを大学に送ります。入力する内容を整理したり、先生に提出を頼むスケジュールを考えたりする必要があるので事前に知って準備を進める方がいいです。
成績をのばすためのSAT対策!
受ける試験の回数やスケジュールはかなり重要です
個人的にはSATの英語対策をもっと早くから始めておけば良かったかなと思います。TOEFLは予約が出来れば毎週受けることが出来るので出願提出直前の12月頃まで点数を伸ばす期間がありますが(ですが、テストスコアが返ってくるまでの時間は考慮すべきです。)、SATは年に6回ほどしか受ける機会が無く、またSAT(英語と数学)とSAT Subject Test(副教科、一日3教科まで受けることができます。) を同時日に受けることが出来ないので、TOEFLほどスケジュールの余裕が無いです。日本のSATテスト会場はすぐ予約で埋まってしまうので、そこも要注意ポイントです。私はなんと韓国にまで行ってテストを受けました…。
高校で海外に進学するのは自分一人
準備を進めるための情報収集に苦労しました
私の高校からは同じように海外大学を志望する仲間が一人もいなかった点では苦労しました。高校に海外進学、願書の提出についての経験やノウハウがあるわけではなかったので自分で調べ、整えていく必要がありました。それでも、高校の先生方には私から出願の内容を説明し、私だけのために海外大学受験の準備をしてくださいました。
なので、高校以外での海外大学を志望する人たちが集まったコミュニティに参加することで情報をもらった り、先輩方からアドバイスをいただいたりしました。準備を進めるには、願書や勉強以外の部分で人脈づくり が大切だと思いました。
「自分」を評価されるエッセイとポートフォリオで勝負!
エッセイのテーマは自分がやってきた経験を全て書き出してから一番伝わるものを選びました
コモンアプリケーションの中で自分の強みを見せるところはやはりエッセイだと思います。同じような成績やテストスコアの生徒がたくさんいる中、大学側が“誰を取りたいか”、“誰なら入学をさせたいか”を決めるのはエッセイです。
大学からの質問に答えつつも、その中で他人とは違う考え方や自分しか体験していないような出来事を述べてユニークさをアピールしました。私の場合、エッセイのテーマを考えるのにとても時間がかかりました。対策としては、書く前の最初に今まで取り組んだ事などを全て書き出しました。その作業自体に時間はかかりますが、案外過去の小さな体験を忘れていたことに気付くことができました。その小さな、自分にとっては当たり前な体験でも、他人からするとユニークな出来事だったりするので、まずは全て思いつくことや、考えつく過去の体験などを書き出してみることをお勧めします。また、書いては書き直しを繰り返していくうちに、完成したエッセイテーマは最初に書きたかったテーマとは全く違うことに気付くことができました。
テーマの選びなおしや書き直しの繰り返しを経て、私は震災で挫折した経験について書きました。マイナスなイメージがあるので「挫折」については書きたくないと思っていましたが、挫折して考えたこと、学んだことや、どのようにしてその挫折を乗り越えたかをエッセイにしました。最初にエッセイを書くときに考えたテーマは13年間取り組んでいた習い事についてで、自分の強みはそこにしかないと決めつけていましたが、最終的にはそれについては書きませんでした。良いエッセイを書くには、テーマの選びなおしや書き直しの繰り返しが重要です。自分が書きたいことを書くのがベストですが、最初にテーマを決めつけるのではなく、最初のテーマでエッセイの練習をしながら他のオプションも考えると良いと思います。
また、私の場合は建築学部を受験したので、エッセイの他に一番重視されたところはポートフォリオじゃないかと思います。ポートフォリオは自分で制作した作品の写真を一つのファイルにまとめた作品集です。アメリカの建築学部は芸術性なども求められるので、“芸術的な才能はあるか”、“ユニークであるか”などを見られます。私は、自身の芸術性や個性を表せる作品を選び、グラフィックデザインや家の模型などを作って送りました。
~先輩の「自分らしさを伝える願書」アドバイス~
早めに提出内容を把握しておくこと!大学・学部によって準備するものが違うのでそれぞれに合わせた対策が必要になります
私のアドバイスとしては、早めに受験したい、進学したい大学を決めて、出願に必要なものをしっかり大学別・学部別に調べることです。コモンアプリケーションが基本であるとしても、ある大学には面接が必要だったり、ある学部には私のようにポートフォリオの提出が必要だったりします。
自分が受験したい大学の傾向や学部で必要なものによって、準備期間や対策の仕方も大きく変わってきてしまいます。私も早めに建築学部にポートフォリオが必要であることを知っていたら、もっと時間をかけて作品集を作っていました。「願書」と一括りにいっても大学・学部ごとに対策をしないといけないので、まずは受験する大学を定めてしっかりと準備すべきものを確認することで余裕持って準備ができると思います。
大学一年の春学期に行った建築の最終プロジェクトの一部
アメリカの建築学部1年生はこのようなプロジェクトを行います!
※TOFEL、SATなどの試験について今年度は新型コロナウイルスの影響で開催スケジュール、会場などが去年と異なる場合があります。最新の情報は、公式HPなどでご確認ください。
※この記事でご紹介している内容は2020年9月8日現在の情報に基づいています。