留学生に人気の就職先「外資系コンサルティングファーム」で働くには?
将来は得意の英語を操り、国際社会を舞台に活躍するビジネスパーソンを夢見ている方もいるのでは?近年、そのような“大学卒業後は英語力を活かして働きたい”という学生の間で人気を集めている仕事の1つが、外資系コンサルティングファームです。なんとなく聞いたことがあり、漠然とした憧れはあるけれど…実際に何をしているのかはよくわからないという方も、意外と多いかもしれませんね。今回は外資系コンサルティングファームの仕事内容や、仕事をするうえで必要とされる力などについてご紹介します。
外資系コンサルティングファームとは?
企業や機関が抱えるさまざまな課題に対して、企業・機関側から依頼を受け、その課題を解決に導く支援活動を行うことをコンサルティングといいます。そのような業務を行う人をコンサルタントと呼び、コンサルティングファームとはコンサルタントが集まった企業のことを指します。 外資系企業というのは、「外国の法人、あるいは外国人が一定程度以上の出資をする日本の企業」のことですので、外資系コンサルティングファームとは、海外からの資本が入って経営されているコンサルティングファームのこと、となります。
もともと「コンサルティング」というビジネスは19世紀末ごろにアメリカで生まれたもので、当初は工場の作業を効率化するためのアドバイスなどを個人で行う形が主流でした。世界最古のコンサルティングファームは、1886年にマサチューセッツ工科大学のアーサー・D・リトル博士によってアメリカで設立された「アーサー・D・リトル」で、その後次第に現代まで続く大きなコンサルティングファームが登場。現代にいたるまで、多くの新しいコンサルティング領域が誕生し、日々コンサルティング市場は拡大を続けていますが、世界のコンサルティング業界は質量ともにアメリカがリードし続けていると言われています。
外資系コンサルティングファームの種類・仕事内容
昨今のコンサルティングファームは、主として扱っているテーマや業種、仕事の内容によって非常に多様なタイプが存在しています。いろいろな分け方がありますが、ここではごく一般的に言われている、現在の外資系コンサルティングファームのカテゴリー分類に基づいて、仕事内容を簡単にご紹介しましょう。
<おもな種類とそれぞれの仕事内容>
■戦略系コンサルティングファーム
企業の経営戦略や、M&Aによる事業統合のサポートなど、主として企業経営のトップレベルにおける戦略策定やアドバイスを行い、問題解決を図るコンサルティングを主要業務としています。大企業や官公庁など、ある程度規模の大きい顧客が多いことも特徴の1つです。
具体的に手がける仕事は、グループ経営戦略、M&A戦略、中長期の成長戦略など会社全体の課題解決支援をはじめ、新規事業戦略、新製品開発戦略、人事戦略、マーケティング戦略、IT戦略などといった個別の課題を扱うプロジェクトまで様々。また通常、戦略コンサルタントは2~5人程度の少人数からなるチーム制でコンサルティングにあたることも多いため、300人以下という規模が小さめのファームも多数あります。
■総合系コンサルティングファーム
企業・事業戦略の立案からIT戦略の立案・システム構築などの上流フェーズと呼ばれる基幹部分から、システムインテグレーションや業務のアウトソーシングといった部分まで、会社全体に対するあらゆるコンサルティングサービスを手掛けるコンサルティングファームです。扱う課題が多岐にわたるため、多くのファームでは領域別に専門組織が分けられています。通常は金融業、製造/流通業、通信、エネルギー、官公庁といったインダストリーごとの「業界別のチーム」と、戦略、会計、人事組織、ITなどの業界横断的な「機能別のチーム」が組織され、必要に応じて協業して顧客企業をサポートしていることが多いようです。
さまざまな業界のクライアントに対して幅広いサービスを提供しているため、社員数が数百~数千名程度の比較的規模の大きなファームが多いのが特徴で、もともと会計事務所だったファームが多いことから会計系コンサルティングファームと呼ばれることもあります。
■IT系コンサルティングファーム
システム構築やITを使ったビジネスに強みを持つコンサルティングファームのことを指します。会社の規模やサービスの範囲は大きくないものの、独自の知識や技術力等を活かして、大企業から中小企業・ベンチャー企業にいたるまで、様々な企業のIT戦略策定や業務改革支援などのコンサルティング、システム導入支援を手掛けています。
それぞれのファームによって事業領域や特色は異なりますが、中にはITやシステムに関するコンサルティングという枠を超えて、企業のビジネス全体のコンサルティングサービスを提供するファームも多くなってきています。
■財務系コンサルティングファーム
M&A関連の業務や、財務に関連した課題解決に特化したコンサルティングファームで、FAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)とも呼ばれます。企業のM&Aの支援、バリュエーション(企業価値の評価、知的財産評価など)の業務、事業再生の支援、フォレンジック(不正調査・係争分析)などのサービスを提供しています。この分野では、BIG4と呼ばれる世界4大会計事務所が設立したファームが非常に有名で代表的ですが、大手金融機関や著名なファンド出資者等によるM&Aを専門とした独立系ファームがいくつもあり、存在感を増しつつあります。
■人事系コンサルティングファーム
専門的な領域での企業の課題解決をサポートする専門系コンサルティングファームの中でも、人材戦略、採用、評価など、人事関連の領域を専門としているのが人事系コンサルティングファームです。経営者の報酬制度の設計・調査、給与制度や評価制度の改革、人材開発戦略の策定、M&Aにおける組織統合支援などの人事上の制度構築はもとより、人材能力開発、さらには組織文化・風土改革といった部分にまで踏み込んだコンサルティングを行っています。また、確定拠出型年金の導入、退職給付制度の改革等の福利厚生・年金に関わるサービスも提供するなど、人事上のあらゆる領域を幅広くカバーしていますが、日本においては数10名~100名強の規模で活動しているファームが多いようです。
外資系コンサルティングファームの仕事
コンサルティングファームで働くコンサルタントは、明確な所属部署や仕事内容が決まっていないことがほとんど。顧客企業の課題ごとにプロジェクトが発足し、そこに召集された複数のコンサルタントがチームを組んで企業の課題解決にあたるのが一般的です。一定期間のプロジェクトが終了するとチームは解散し、また別のプロジェクトが召集される形になります。
コンサルティングファームでは通常、経験年数や職責によってコンサルタントにいくつかの役職・ポジションがあります。役職名などはそれぞれのファームによって異なりますが、代表的な呼び方と役割は以下のようなものがあります。
●パートナー/エグゼクティブ
ファームの経営や事業開発の責任者であり、プロジェクトにおいては最終責任者として顧客に対するすべての責任を負う。また、顧客開拓とプロジェクトの受注を行う。
●マネージャー
プロジェクトの実質的な現場責任者として、メンバーをマネジメントし、プロジェクトの管理を行う。
●コンサルタント
プロジェクトを構成する一定の範囲を担当し、課題解決のための仮説の構築や検証作業を行う。
●アナリスト/アソシエイト
プロジェクトを進行させるための情報収集や調査、分析作業などのリサーチ、議事録や提案書などの資料作成を主に担当します。
一般的に、1つのプロジェクトには各ポジションからメンバーが集まり、3~5名ぐらいのチームを構成します。
外資系コンサルティングファームで働くには
新卒でコンサルティングファームに入ると、アナリスト/アソシエイトといったリサーチ業務からスタートすることが多いと言われていますが、その後コンサルタントへとステップアップして働いていくわけですから、入社にあたっては様々な資質やスキルが必要とされます。コンサルタントは期限の決められたプロジェクト単位で働くため、多岐にわたる業務内容で、たとえ作業量が多くても、短時間で高いレベルのアウトプットをすることが求められます。多様な企業の課題を解決へと導く問題発見・解決能力、論理的思考力、判断力はもちろん、期限内に着実に成果を出せる集中力、責任感、さらには体力も必要になってきます。顧客やプロジェクトメンバーとの信頼関係を築くコミュニケーション能力も重要です。
外資系の場合、日本人以外のコンサルタントと協力してプロジェクトを進めることも多く、英語力が必要になるシーンも多々あります。英語ができるかどうかによって、担当できる仕事の範囲が変わってくる可能性も。入社試験時に英語力によって採用の可否が決まるかは会社によりますが、高い英語力はその後のキャリアアップも含めて、前提条件となってくるでしょう。
なお、外資系コンサルティングファームでは、学歴が重視される傾向があるとも言われています。名門と呼ばれるような大学院でMBA資格を取得しておくなどすると、高評価につながることもあるかもしれません。
外資系コンサルティングファームで働くなら英語力は必須。
将来を見据えて、海外留学も視野に入れよう
人気の高い大手の外資系コンサルティングファームは、一般に年収が高いと言われていますが、同様に転職が多く、人材の流動性が高いことでも知られています。平均在籍年数は、3~4年と言われており、終身雇用が普通の日系企業とは文化が異なります。総合商社や金融関連など多様な業界からの専門的な知識を持つ転職者も多いため、戦略系や総合系の大手コンサルティングファームは新卒には非常に狭き門と言えるでしょう。また、成果主義、能力主義が徹底されていると言われる外資系コンサルにおいては、新卒者も同様にプロフェッショナルとしての仕事が求められ、海外の客層に対応するための高い英語力を身に付けていることも必須となります。世界のグローバル化が急速に進む現代では、コンサルティング業界でもグローバル案件がさらに増えていくことは確実です。海外の大学で培った異文化対応力や、外国人とのコミュニケーション力に加え、論文など大量の文章を書く中で培われる情報編集能力・ライティング力、ディスカッション等のアウトプット中心の授業で養われる思考力や交渉力などのスキルを、さらにアピールできるでしょう。
※この記事でご紹介している内容は2019年3月29日現在の情報に基づいています。
※この記事は、旧GLCウェブサイトの「グローバル海外進学コラム」2019年3月29日に掲載されたものです。