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お国柄が出る? ユニークな学部・学科を持つ大学 〜カナダ編〜


国や地域、都市によってそれぞれに特徴が異なる、世界各国の大学・学部。日本の大学ではなかなか深く学べない内容の学問を提供している学校も数多くあります。海外留学を考える際に、大学ランキングのみにとらわれず、自分が本当に興味・関心のある分野を大学選びの観点の1つとして持つことは非常に大切です。後悔しない留学・大学選びの手助けとなるよう、“国によって特徴的かつユニークな学部・学科をもつ大学”を紹介しているのがこのシリーズ。今回は「カナダ編」です。各地の風土・産業や文化に根付いた、ユニークな学部・学科をもつカナダの大学を5校ご紹介します。

ユニークな学部・学科を持つ世界の大学~カナダ編~

カナダの大学教育の特徴

英語とフランス語の2か国語を公用語とするカナダは、世界的にも教育水準が高いことで知られています。国内の4年制大学は100校ほどありますが、そのほとんどが公立(州立)大学のため教育の水準が均一的で、大学間のレベル差がそれほどないのがカナダの教育の大きな特徴と言えるでしょう。大きな規模の研究大学も多く、多様な分野を学ぶことができます。ただし、連邦制をとっているカナダでは教育も各州・準州による管轄となっており、それぞれの州政府(教育省)が教育の制度や質、カリキュラム等を設定しているため、入学資格や卒業に必要な単位数は、州、大学、学部ごとに異なります。州ごとに強みとしている分野があり、地元産業と結びついた共同研究も盛んに行われています。

学位を取得できるのは4年制の総合大学と学位授与権のあるカレッジだけですが、カナダにはそのほかに主に資格を取得するための学課教育や職業専門教育を行うコミュニティ・カレッジ(2年制)、特定の専門分野に力を入れた専門学校が、合わせて200校超あります。州立のコミュニティ・カレッジには大学編入プログラムを持つ学校もあり、同プログラムを履修後に4年制大学の2年または3年次に編入することも可能(州によっては認められていない場合あり)です。最近では、ユニバーシティーカレッジ(4年制)という、大学と短大の教育の長所を合わせた学部プログラムや実践面を重視したプログラムを提供する学校も増えてきています。

≪カナダの主な高等教育機関≫

◇大学(4年制/University・まれにCollegeもあり):
18 歳以上が対象。州や学科によって制度が異なるが、一般的に学士号(Bachelor’s Degree)を取得する3~4年間のプログラム。

◇コミュニティ・カレッジ(2年制):
18歳以上が対象。入学基準は4年制大学より低めとされている。資格取得のための教育や職業訓練等を提供する高等教育機関で、Diploma (ディプロマ)、Certificate (サティフィケート)などを取得することができる。大学編入プログラムを提供しているカレッジでは、修了時に準学士号取得+ほぼ全ての単位を大学に移行でき、大学編入後は2~3年で学士号取得が可能。(学位取得まで合計4~5年)

◇専門学校:
特定の専門分野に力を入れた学校。職業訓練カレッジなどもある。

◇ユニバーシティーカレッジ(4年制):
4年制大学とコミュニティ・カレッジの教育の長所を合わせた学部プログラムや、実践面を重視したプログラムを提供する学校。学士号を取得できる(総合大学の学位と同等の学位として認められる)だけでなく、1~2年次に取得した単位をもって総合大学へ編入することも可能。

”次世代リーダーを育てる”ことをミッションとするカナダの高等教育は、4年制大学、コミュニティ・カレッジのいずれも、プログラムの選択肢が幅広く柔軟なのが特徴。一般教養と専攻科目を履修しますが、どちらもカリキュラムはフレキシブルに組み替えることが可能となっています。選択するコースだけでなく、他の学部や他の大学に転科、転校が比較的容易にできるのも特筆すべきポイントです。
4年制大学は、大学やコースによって 1 クラス 200~300 名のコースから、30~50名程度の中規模クラス、5~20 名程度のセミナー形式の少人数制のクラスまで様々な授業パターンがあります。また、多くの大学でe-learningの学習プラットフォームが積極的に活用されています。実践的な学びが重視されているのも特徴の1つで、在学中に仕事の経験ができるCO-OP(コープ)プログラムも人気があります。
また留学生でも、フルタイムの学生として在籍している場合は、一定の条件のもと就労が可能であることや、学位やディプロマなどを取得後にカナダで最長3年間の就労が可能なプログラムがあることも大きな魅力といえます。

ユニークな学部・学科をもつカナダの大学 ~5校~

キャンパスのある国・地方の風土や環境、文化、その土地の産業などと結びついたり、影響を受けたりしている特徴的でユニークな学部・学科・専攻を持つカナダの大学を5校ピックアップしました。

ブリティッシュコロンビア大学(The University of British Columbia [UBC])

天然資源保護(Natural Resources Conservation)

1908年にブリティッシュコロンビア州で、マギル大学の分校として設立され、1915年に独立したブリティッシュコロンビア大学。バンクーバーとケローナにキャンパスを構え、学部生は約4万人、大学院生を合わせると5万人以上が学ぶ州内最大規模を誇る州立の研究総合大学です。カナダ屈指の名門大学であり、教育、学習、研究のグローバルセンターとして北米で最も国際的な大学とも言われています。とくに文化人類学、自然科学(特に海洋および森林資源)、医学、経済学、芸術(MFA)、教育学、社会学などの分野で、世界でも高い評価を受けています。
バンクーバーのメインキャンパスは市の西端の海沿いに位置。多くの植物園や庭園がある緑豊かな広大なキャンパスは、太平洋やノースショアの山々を一望することができる観光名所の1つとなっています。キャンパス内には有名なコンサートホールや人類学博物館、ビーチやゴルフコースまで備え、さながら1つの街のようになっています。
同大学の16におよぶ学部の中でも、バイオ、次世代エネルギーや環境、マルチメディアなどと並んで、森林教育に強いブリティッシュコロンビア州の特徴を生かした森林学部に注目。森林保全科学科、森林資源管理科、木材科学科からなり、樹木の生物学、革新的な木材製品、森林工学などのトピックについて学ぶだけでなく、森林に関連するグローバリゼーションと持続可能性、エンジニアリング、ビジネス管理、森林遺伝学、資源社会経済学と政策、生物経済学、保全生物学、生物多様性などの科目を通じて、森林保全と持続可能な森林管理において世界的なリーダーシップを発揮できる人材を育成しています。
森林学部で提供されている6つのプログラムのうち、最も人気があるのは「天然資源保護(Natural Resources Conservation)」の学士号(BSc)を取得できる学位プログラムです。英語、数学、科学のコースに加えて、保護、野生生物、漁業管理、コンピューターアプリケーション、リモートセンシング、土壌科学などの分野のコースを受講し、野生生物、森林、川、海、土地などの自然環境の保護と管理に積極的な役割を果たしていくことを目指します。

トロント大学(University of Toronto[U of T])

女性とジェンダー研究(Women and Gender Studies)

オンタリオ州トロントに3つのキャンパスを構えるトロント大学は、1827年に創設されたイギリス国教会系のキングズ・カレッジにルーツを持ち、1850年に現在の大学名に改称された国内最古の州立大学。イギリスのTimes Higher Educationが発表している「THE世界大学ランキング2020」では、カナダでトップとなる18位にランクされており、これまでに多数のノーベル賞受賞者を輩出するなど、世界的にも有名なカナダを代表する名門大学です。学部生はおよそ55,000人、大学院生を含めると7万人を超える学生が学ぶ、カナダ最大の大学でもあります。これまでに多数のノーベル賞受賞者を輩出するほど各分野で最先端の研究が行われており、政府機関や民間企業から支援される研究予算もカナダの大学の中では最大となっています。
理工学部、法学部、教育学部、経営・商学部、医学部や看護学部など17の学部、19の大学院を備え、プログラムの多様性もトップクラス。人文科学・社会科学、生命科学、物理学・数理科学、ビジネス・マネジメント、コンピューターサイエンス、工学、運動学・体育、音楽・建築など700以上の学部プログラム、300を超える大学院プログラムを提供しています。
芸術科学部は29の学科や7つのカレッジなどで構成される、カナダでも最も大きく、研究集約的な学部です。非常に学際的で興味深い専攻が数多く用意されていますが、その1つに「女性とジェンダー研究(Women and Gender Studies)」が挙げられます。カナダ最大の都市であるトロントは、国の金融や経済の中心であると同時に、人種やジェンダーの面でも多様性を持つ国際的で多文化な都市として知られており、そうした土地柄も背景に40年間に渡って教育・研究が行われています。歴史や文学、社会学、法律などのさまざまな分野の学問を活用して、国境とナショナリストの言説がジェンダーとセクシュアリティの構造をどのように構成しているか、国境を越えた批判的なアプローチで取り組んでいます。移住、ディアスポラ、戦争が家庭や世襲、家族、欲望、自己の体験に与える影響を研究し、帝国主義とグローバル化のプロセスを新興経済および労働と消費の形態に結びつける概念的なツールを提供しています。

サスカチュワン大学(University of Saskatchewan[U of S])

農業・バイオリソース学(Agriculture and Bioresources)

サスカチュワン州のほぼ中央にあるサスカトゥーンに自然あふれる美しいキャンパスを持つサスカチュワン大学は、1907年に設立された州立の研究主導型大学です。学生の総数は25,000人超ですが、大学の規模に比べると多様性に富んだプログラムが用意されています。農業・バイオリソース学、ビジネス、教育学、文学、工学、環境学、運動生理学、看護学、歯科医学、法律学、獣医学、薬学などの17の学部があり、200以上のコースが提供されています。医学研究の分野や、理学、生物学、地質学など理科系分野に強く、ワクチンと感染症研究やシンクロトロン(粒子加速器の一種)などのカナダでも屈指の先端技術の研究施設を保有していることでも有名です。
また、サカスチュワン州は天然資源が豊富な地域であると同時に、州面積の1/3は農地と言われるほど農業が盛んで、主要産業の1つとなっています。世界有数の農業生産国であるカナダ中央部に位置するという立地と、同大学がもともとは農業カレッジとしてスタートしたという歴史もあり、農業分野の研究も非常に有名で、とくにバイオテクノロジー系では最先端の研究が行われています。農業・バイオリソース学部には、農業ビジネス、農業生物学、農業経済学、農学、動物バイオサイエンス、動物科学、応用植物生態学、作物科学、環境科学、食品および生物製品科学、園芸科学、資源経済と政策、リソースサイエンス、土壌科学といった多様な学位プログラムが用意されており、高いレベルで学ぶことができます。

マウント・ロイヤル大学(Mount Royal University)

オイル&ガス産業(Oil and Gas)コース

雄大なロッキー山脈を望むアルバータ州カルガリーにあるマウント・ロイヤル大学は、1910年にコミュニティ・カレッジとして創立されました。1930年代はジュニアカレッジとし大学への編入コースを提供していましたが、次第に規模を拡大し、2009年に4年制大学となっています。現在は14,000人ほどの学生が学んでいる中規模の新しい総合大学ですが、コミュニティ・カレッジとして100年以上にわたり培ってきた教育背景をもつこともあり、地元の教育機関として地域の産業に根付いた様々なコースがあるのが特徴で、資格取得コースなども充実。平均で30人以下の少人数制のクラス、ユニークなプログラム、応用学習なども高い満足度を生み出しています。
芸術、ビジネス・コミュニケーション、継続的な教育と拡張、健康・地域社会・教育、科学技術の5つの学部とその他の機関から成る同大学には、人類学、歴史学、心理学、社会学といった文学系から、会計学、マネージメント、マーケティングなどのビジネス系、インフォメーションシステムといったコンピュータ系、犯罪学、生物学、地質学、スポーツセラピー、看護学などの40を超える専攻が用意されており、学士号が取得できる15の学位プログラムが提供されています。
大学のロケーションと密接な関係があるプログラムとして注目されるのが、「継続的な教育と拡張学部(Faculty of Continuing Education and Extension)」の「石油&ガス産業(Oil and Gas)」コース。アルバータ州は石油や鉱物などの天然資源が豊富なことで有名であり、そうした地元の産業と結びついた学問・研究となります。このコースでは、石油・ガス業界の専門機関と提携し石油&ガスのビジネスにおける会計、土地の開発等に関する権利や土地管理などを含む法律、慣例、業界文化などを学ぶ、実用的なプログラムを開発・提供。業界で認められている石油とガスの認証資格のうち1つを取得し、カルガリーとその周辺で高く評価されているスキルを獲得することができます。

ブロック大学(Brock University)

スポーツマネジメント(Sport Management)

オンタリオ州のセント・キャサリンズにキャンパスを構える、1964年創立の州立総合大学。ナイアガラ地区を代表する高等教育機関として、充実したプログラムを手厚いサポート体制で提供しています。カナダ特有の、在学中に仕事の経験ができるCo-opプログラムにも力を入れていて、40ある同大学のCo-opプログラムは国内最大規模を誇ります。Co-opプログラムに参加した学生の多くが在籍時に雇用先に正規雇用されるなど、卒業生の就職率は96%以上にのぼっています。
約19,000人の学生が学ぶキャンパスでは、7つの学部で120を超える学部課程および大学院のプログラムが提供されています。特に応用健康科学、ビジネス、教育、人文科学、理数、社会科学が有名です。
カナダでは人気のある“健康”に関する学問を幅広く扱う応用健康科学部(Faculty of Applied Health Sciences)は、健康を広く理解し、それを獲得、維持、回復することに主眼をおいています。進歩的な教育と研究を通して、特定の集団に利益をもたらす先進的な健康政策の開発から、個人を治療する革新的なヘルスケアの提供に至るまで多くのトピックを研究しています。
中でも学部課程での注目は、「スポーツマネジメント」コース。スポーツ産業に対してビジネスの理論や原則、実践を適用することに焦点を当てたプログラムで、 3年目と4年目に行うフィールドプレイスメントとインターンシップではキャリア形成において重要な経験を積むことができます。カナダで唯一のスポーツ管理学士(BSM:Bachelor of Sport Management)の学位を授与する大学としてカナダのスポーツ産業と密接に連携しており、同プログラムで学んだ学生・卒業生はスポーツ業界で非常に高い評価を得ています。

本シリーズの次回は、「オーストラリア編」として、ユニークな学部・学科をもつオーストラリアの大学を5校ご紹介します。お楽しみに!

※この記事でご紹介している内容は2020年1月17日現在の情報に基づいています。

※この記事は、旧GLCウェブサイトの「グローバル海外進学コラム」2020年1月17日に掲載されたものです。

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